リハビリmemo

大学病院勤務・大学院リハビリテーション学所属の理学療法士・トレーナーによる「最新の研究をトレーニングにつなげるための記録」

力学的負荷から見た股関節運動の注意点

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股関節に加わる力学的負荷は、股関節症や関節唇損傷、関節不安定症の増悪因子となる(Mavcic B, 2004)。

この力学的負荷は、股関節の肢位や筋力低下により特異的に高まる(Bergmann G, 2004)。

そのため、セラピストは患者さんの病態に合わせて、力学的負荷が少ないエクスサイズを選択し、指導することが求められる。

紹介する報告は、基本的な股関節運動が、股関節の力学的負荷に与える影響について検証したものである。

reference)

Effect of position and alteration in synergist muscle force contribution on hip forces when performing hip strengthening exercises.

Clinical Biomechanics, 2009

筋骨格系モデルを使用し、二つのトレーニング方法について検証した。

①うつ伏せでの股関節伸展運動

②仰向けでの股関節屈曲運動(SLR)

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①の伸展運動は、屈曲10度〜伸展30度の範囲で動かし、

②の屈曲運動は、伸展10度〜屈曲30度まで動かした。

この運動中に生じる力学的負荷を以下に分けて測定した。

・合力負荷

・上方負荷

・前方負荷

・後方負荷

 

その結果、

・股関節伸展運動は屈曲運動に比べ、合力負荷が大きくなる。また、伸展運動は、うつ伏せよりも仰向けで行うと最も合力負荷が大きい。

・上方負荷も上記と同じ傾向であった。

・前方負荷は、うつ伏せでの伸展運動では、伸展角度の増大に相関して大きくなり、最大伸展(30度)で最も強くなる。また、仰向けでの屈曲運動では、伸展(10度)で最も大きくなり、うつ伏せでの最大伸展運動時よりも大きい。

・後方負荷は、肢位との関係性はなかった。

とのこと。

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結果から注意点をまとめる。

うつ伏せでの伸展運動は、無理して大きく足を上方にあげることは股関節に負担が強い。この運動で筋力トレーニングをする場合は、出来ればお腹の下にクッションを入れて、やや屈曲位からはじめて、無理のない程度で上がる高さに制限したほうが、股関節に優しい。特に、関節唇損傷の患者さんは注意が必要だろう。

仰向けでの屈曲運動は、あまり行う患者さんはいないと思うが、股関節伸展位から行うことは避けるべき。仰向けでの股関節伸展は、どの肢位よりも最も股関節への力学的負荷が大きくなる。運動様式から考えると、側臥位で伸展位から屈曲運動を行っているようなセラピストは注意すべきだろう。

力学的負荷の視点で股関節を考えるのは、肩関節と同様に保存療法に有効と思われる。簡単なエクスサイズほど、多く行われているので、本報告を生かして頂ければ。

 

 

股関節リハビリシリーズ

股関節リハビリ①:歩行時の振り出しで上手に腸腰筋をつかうためのヒント

股関節リハビリ②:力学的負荷から見た股関節運動の注意点

股関節リハビリ③:歩行時の股関節伸展角度が出にくい理由

股関節リハビリ④:股関節症術後に見られる階段昇降の足の使い方

股関節リハビリ⑤:手術か保存療法か

股関節リハビリ⑥:手術か保存療法か(その2) 

股関節リハビリ⑦:人工股関節術後に残りやすい歩き方のポイント

股関節リハビリ⑧:人工股関節術後に残りやすい立ち上がり動作のポイント

股関節リハビリ⑨:自分で簡単に変形性股関節症の程度を確認できる方法

股関節リハビリ⑩:歩容から見る変形性股関節症の重症度

股関節リハビリ⑪:変形性股関節症の簡単な脊椎疾患との鑑別法

股関節リハビリ⑫:変形性股関節症の遺伝子研究の進展

股関節リハビリ⑬:最新手術「筋肉温存型人工股関節置換術」まとめ

股関節リハビリ⑭:歩きに適した外転筋トレーニングの方法

股関節リハビリ⑮:見落としがちな歩き方のポイント

股関節リハビリ⑯:見落としがちな歩き方のポイント(その2)

股関節リハビリ⑰:変形性股関節症の保存療法と関節軟骨

股関節リハビリ⑱:変形性股関節症とランニング(まとめ)

股関節リハビリ⑲:人工股関節置換術とスポーツ

 

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