前回のブログでは、楽に歩くためには「股関節の伸展」が大事であるということをエネルギー効率の視点からお話しました。
今回は、筋肉の使い方の視点からお話します。
「でこぴん」をイメージしてみてください。
親指で人差し指を抑えて力をためます。
そして、バチーン!と放つことで強い力が発揮されます。
では、試しに親指で人差し指を抑えないで、でこぴんしてみて下さい。
全く痛くないはずです。
これは、どのような原理になっているのでしょうか?
筋肉には、SSC(Stretch Shortening Cycle)という機能が備わっています(McCarthy JP, 2012)。
筋肉が固定または伸ばされた状態で収縮すると、腱が伸ばされます。
腱はバネのような性質(直列弾性要素)を持っています。
つまり、筋肉は伸ばされることで強い力を発揮できるのです。
これにより、でこぴんのような強い力が発揮できるのです。
このような筋肉の使い方は、いたるところで見られます。
例えば、サッカー。
股関節を大きく後ろへ振り上げることで股関節の前にある筋肉「腸骨筋と大腰筋(合わせて腸腰筋)」を伸ばしながら収縮することでバネのように筋肉が働き、強いシュートを蹴ることができるのです。
このように、効率よく筋肉を使うにはある程度、筋肉を伸ばす環境をつくることが大切なのです。
ここで、股関節に痛みがあり、後ろに振り上げる(股関節の伸展)ことが出来ない状況をイメージしてみて下さい。
その状況でボールを蹴ろうとすると股関節を前に強く曲げて蹴るしかありません。
これを繰り返すと股関節がとても疲れるでしょう。
では、歩くときはいかがでしょうか?
歩くときもサッカーと同じように、「股関節の伸展」を行うことで「腸腰筋」を伸ばし、バネのように効率よく筋肉をつかうことが楽な歩き方につながります。
股関節が固くなって伸展の動きができずらい状況では、腸腰筋が上手に使えず、疲れやすい歩き方になってしまいます。
このような歩き方は、脳卒中患者さんや股関節症の患者さんによく見受けられます。
楽に歩くには「股関節の伸展」が大切であり、腸腰筋を伸ばしてバネのように使ってあげることが楽な歩き方の鍵になるのです。
股関節リハビリシリーズ
股関節リハビリ①:歩行時の振り出しで上手に腸腰筋をつかうためのヒント
股関節リハビリ②:力学的負荷から見た股関節運動の注意点
股関節リハビリ③:歩行時の股関節伸展角度が出にくい理由
股関節リハビリ④:股関節症術後に見られる階段昇降の足の使い方
股関節リハビリ⑤:手術か保存療法か
股関節リハビリ⑥:手術か保存療法か(その2)
股関節リハビリ⑦:人工股関節術後に残りやすい歩き方のポイント
股関節リハビリ⑧:人工股関節術後に残りやすい立ち上がり動作のポイント
股関節リハビリ⑨:自分で簡単に変形性股関節症の程度を確認できる方法
股関節リハビリ⑩:歩容から見る変形性股関節症の重症度
股関節リハビリ⑪:変形性股関節症の簡単な脊椎疾患との鑑別法
股関節リハビリ⑫:変形性股関節症の遺伝子研究の進展
股関節リハビリ⑬:最新手術「筋肉温存型人工股関節置換術」まとめ
股関節リハビリ⑭:歩きに適した外転筋トレーニングの方法
股関節リハビリ⑮:見落としがちな歩き方のポイント
股関節リハビリ⑯:見落としがちな歩き方のポイント(その2)
股関節リハビリ⑰:変形性股関節症の保存療法と関節軟骨
股関節リハビリ⑱:変形性股関節症とランニング(まとめ)
股関節リハビリ⑲:人工股関節置換術とスポーツ
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