リハビリmemo

大学病院勤務・大学院リハビリテーション学所属の理学療法士・トレーナーによる「最新の研究をトレーニングにつなげるための記録」

ねこ背と柔軟性 〜腰椎の柔らかさが大事〜

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 スポーツテストで行った上体反らしや体前屈を覚えていますか?

 

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 これらのテストには、脊椎の柔軟性が大きく関与しています。脊椎と言っても、体を曲げたり、伸ばしたりする機能をもっているのは腰椎です。下の写真をみても、体を曲げるときは腰椎がまっすぐになって、体を伸ばすときには腰椎の前弯が増強しているのがわかりますよね。この体を曲げる際の腰椎の動きの範囲を「屈曲可動域」と言い、体を伸ばす際は腰椎の「伸展可動域」と言います。

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 しかし、加齢にともない、この腰椎の柔軟性(屈曲可動域・伸展可動域)が失われていくことが明らかになってきました。また、この柔軟性のみならず、腰椎の前弯の角度も減少していくのです(Intolo P, 2009)。

 腰椎の前弯角度の減少といえば、ねこ背を悪化させる犯人でしたよね。

ねこ背になると転倒しやすくなる 〜本当の犯人は?〜

 では、これら腰椎の前弯角度と柔軟性の減少は、何歳から生じるのでしょうか?また、男女によって異なるのでしょうか?そして、ねこ背との関係はあるのでしょうか?

 今回は、2014年に発表されたMarcel Dreischarf氏らの ”Age-related loss of lumbar spinal lordosis and mobility - a study of 323 asymptomatic volunteers.”という論文をもとに考察してみましょう。

 

 本報告では、腰椎の前弯角度、腰椎の可動域の加齢変化について、全体的な変化と、部分的な変化について分析しています。

 

ー腰椎の前弯角度の加齢変化

 全体的な前弯角度は、男女ともに加齢とともに減少することが示されています。男女ともに20、30歳代ではわずかな減少ですが、男性では40代から前弯の減少が著明に見られます。また女性も40代から徐々に減少する傾向が認められます。

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 さらに、細かく変化を見てみると、男女ともに前弯の減少は腰椎の上位、下位レベルでは変化がありませんが、中位レベルで前弯角度の減少が示されています。

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ー腰椎の屈曲可動域の加齢変化

 屈曲可動域は、男女ともに加齢とともに減少しますが、20、30歳代ではわずかな減少であり、40代以降から減少を認めます。また、屈曲可動域の減少の有意差は、男性では認められましたが、女性では認められませんでした。

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 細かく変化を見ると、やはり、中位レベルでの屈曲可動域が減少していることがわかります。

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ー腰椎の伸展可動域の加齢変化

 伸展可動域は、男女ともに加齢とともに減少しますが、20代から徐々に減少する傾向を示しています。特に女性では20代から段階的に減少を示しており、もともと男性より可動性が大きかったのですが、50代になると男性とほぼ変わりないレベルまで減少します。よって、伸展可動域の減少は、女性では有意差を認め、男性では有意差が認められませんでした。

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 細かく変化を見ると、やはり、伸展可動域も中位レベルで減少していることがわかります。

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この結果をまとめますと、

・腰椎の前弯角度、柔軟性は男女とも加齢とともに減少する。

腰椎前弯の減少は、40歳代から始まる。男性は40歳代での減少が著明であり、女性は徐々に減少していく。

・屈曲可動域の減少は、40歳代以降から始まり、特に男性の可動域減少は著明である。

伸展可動域の減少は、20歳代から始まり、特に女性の可動域減少は著明である。

・これらの加齢変化は、すべて腰椎の中位レベルで生じている。

ということです。

 

 ねこ背は、胸椎の後弯から始まるのですが、しばらくの間は腰椎の前弯を強めることで補おうとします。しかし、加齢にともない、腰椎の柔軟性がなくり、前弯が減少することによって胸椎の後弯を代償することが難しくなります。すると、体がどんどん前に曲がり始め、ねこ背が悪化してくるのです。

 

 腰椎の前弯角度は、腰椎の伸展可動域と大きく関係しています。腰椎を大きく伸展させるためには、腰椎の前弯を増強させる必要があります。逆に言えば、腰椎の前弯が減少していると腰椎を大きく伸展させることができません。体を大きく反らす、つまり、腰椎を大きく伸展できるということは、腰椎の前弯がしっかり保たれていることが前提になります。

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 ねこ背の進行を防ぐためには、前弯角度が減少しないようにする必要があります。そこで大事なのが、腰椎の伸展可動域を維持することです。Marcel Dreischarf氏らの研究報告にもとづくと、腰椎の伸展可動域の減少は、前弯角度の減少に対して、より早期に20歳代から始まります。特に女性では、この減少が大きいのが特徴的です。40歳代から腰椎の前弯が減少することを考慮すると、20~30歳代から腰椎の伸展可動域の減少を防ぐことが、腰椎の前弯角度を維持することにつながるかもしれません。いつまでも腰椎の柔軟性を維持することがねこ背を予防するカギになるかもしれませんね。

 

 では、どのように腰椎の柔軟性を保てば良いのでしょうか?その方法については、別の機会でご紹介しましょう。

 

 

ねこ背シリーズ 

ねこ背シリーズ①:ねこ背になると歩き方も変わる?

ねこ背シリーズ②:ねこ背になると生活がつまらなくなる?

ねこ背シリーズ③:「背が低くなったんじゃない?」と言われた要注意!

ねこ背シリーズ④:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜大規模研究による検証〜

ねこ背シリーズ⑤:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜本当の犯人は?〜

ねこ背シリーズ⑥:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜腰がまっすぐになると…〜

ねこ背シリーズ⑦:自分でねこ背を計る方法(前編:科学的根拠の確認)

ねこ背シリーズ⑧:自分でねこ背を計る方法(後編:C7PL2.0をやってみよう!)

ねこ背シリーズ⑨:ねこ背と骨盤の代償運動を理解しよう

ねこ背シリーズ⑩:なぜ、ねこ背になるのか?

ねこ背シリーズ⑪:ねこ背の原因は背筋の霜降り化?

ねこ背シリーズ⑫:ハイヒールを履くとねこ背になる?

ねこ背シリーズ⑬:ねこ背と柔軟性 〜腰椎の柔らかさが大事〜

ねこ背シリーズ⑭:ねこ背になると肩が上がらなくなる?

ねこ背シリーズ⑮:座る姿勢がねこ背の原因になる?

 

Reference

Intolo P, et al. (2009) The effect of age on lumbar range of motion: a systematic review. Manual therapy 14: 596–604. doi:10.1016/j.math.2009.08.006.

Marcel Dreischarf, et al. (2014) Age-related loss of lumbar spinal lordosis and mobility - a study of 323 asymptomatic volunteers. PLoS ONE 9(12) e116186.doi:10.1371/ 

 

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