リハビリmemo

大学病院勤務・大学院リハビリテーション学所属の理学療法士・トレーナーによる「研究と臨床をつなげるための記録」

効率的で効果的なストレッチの時間と回数

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 ストレッチはどのくらいの時間、回数を行えば効果的なのでしょうか?

 

 ストレッチは美容や健康にとても効果的です。しかし、忙しい生活の中、ストレッチにかける時間もそんなに多くはとれないですよね。とは言うものの、ストレッチ時間が少なすぎて効果がないというのももったいないことです。


 そこで、今回は、もっとも効率的で効果的なストレッチの時間、回数について考察します。

 

Table of contents

 

 

 このテーマに関するシステマティックレビューやメタアナリシスが見当たらなかったので、主に2000年以降の比較的新しい論文を集めてみました。論文の対象者は、主に健常若者としています。体の柔軟性に寄与する主要な3つの筋肉(大腿四頭筋ハムストリングス、下腿三頭筋)に分けて、ストレッチングの時間×回数による効果についてまとめてみました。



大腿四頭筋

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 4つの論文を見てみました。ストレッチング1回の時間は20〜45秒のレンジで、セット数は3〜6セットで効果が示されています。もっとも時間が少ない30秒×3セットでも効果はあるようですね。

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ハムストリングス

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 ハムストリングスは筋損傷の起こりやすい部位であるため、多くの報告がなされています。今回は6つの報告を見てみました。ストレッチング1回の時間は15〜45秒のレンジで、セット数は3〜6セットで効果が示されています。もっとも時間が少ないのは15秒×3セットでした。

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 この中でも興味深いのがBoyceらの報告です。彼らは、ハムストリングスに対して、15秒10セットのストレッチを行い、5セット目以降のストレッチングでは有意な効果が示されないことを明らかにしました。その結果、ストレッチング回数は5セット以内で良いと述べています。

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✻縦軸に可動域の角度、横軸にストレッチングの回数を示しています。5回目以降では可動域の増加が認められません。 

 

 

◆ 下腿三頭筋

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 3つの論文を示しています。ストレッチング1回の時間は全て60秒で、セット数は3〜5セットで効果が示されています。

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 下腿三頭筋では、他の筋よりもストレッチング時間が長い傾向にありました。これは、人体最大の腱であるアキレス腱が下腿三頭筋の筋腱構成体の27%に関わるためと推察されています(Herbert RD, 2002)。

 

  大腿四頭筋ハムストリングス、下腿三頭筋について主に2000年以降に発表された論文をまとめてみました。ストレッチング時間では、下腿三頭筋に構造的特異性による時間の延長が必要なことがわかりました。また、回数は5回以上行ってもストレッチの効果に差が見られないというBoyceらの報告が参考になります。よって、結論として以下の時間×回数が1つの目安になります。

 

 

◆ 効率的で効果的なストレッチの時間×回数

大腿四頭筋ハムストリングス

▶ 30秒以上×3セット以上

下腿三頭筋

▶ 60秒×3セット以上

 

 この結論は、メタアナリシスなどの解析ではないので、エビデンスを示すことはできませんが、ストレッチングの時間、回数の根拠になりうるものと思います。個人的にはどの筋でも最低「30秒3セット」はストレッチしましょうとお願いすることが多いです。サンとサンで語呂もいいですからね。


 少ない時間で効果的にストレッチングを行うためにも、是非、参考にしていただけると幸いです。

 

 

◆ 読んでおきたい参考記事

ストレッチの科学①:ストレッチはパフォーマンスを低下させる(前編)

ストレッチの科学②:ストレッチでパフォーマンスを低下させない方法 

ストレッチの科学③:効率的で効果的なストレッチの時間と回数 

ストレッチの科学④:ストレッチは毎日やらなくてもいいんです

ストレッチの科学⑤:ストレッチはいつするのが効果的か?  

ストレッチの科学⑥:ストレッチは高齢者の歩行能力を高める

ストレッチの科学⑦:ストレッチの効果はどのくらい持続するのか?~即時効果編~ 

ストレッチの科学⑧:ストレッチの効果はどのくらい持続するのか?〜習慣的な効果〜

ストレッチの科学⑨:ストレッチのメカニズム その1

ストレッチの科学⑩:ストレッチのメカニズム その2

ストレッチの科学⑪:ストレッチにダイエットの効果はありません  

ストレッチの科学⑫:ストレッチのウソ?ホント? 〜まとめ〜

 

Reference

Power K, et al. (2004)  An acute bout of static stretching: effects on force and jumping performance. Med Sci Sports Exerc 8:1389-96.

Marek SM, et al. (2005) Acute Effects of Static and Proprioceptive Neuromuscular Facilitation Stretching on Muscle Strength and Power Output. J Athl Train. 2:94-103.

Beedle BB, et al. (2007) A comparison of two warm-ups on joint range of motion. J Strength Cond Res. 3:776-9.

Mandroukas A, et al. (2014) Acute partial passive stretching increases range of motion and muscle strength. J Sports Med Phys Fitness 3:289-97.

Depino GM, et al. (2000) Duration of maintained hamstring flexibility after cessation of an acute static stretching protocol. J Athl Train. 1:56-9.

Brandenburg JP, et al. (2006) Duration of stretch does not influence the degree of force loss following static stretching. J Sports Med Phys Fitness. 4:526-34.

Boyce D, et al. (2008) Determining the minimal number of cyclic passive stretch repetitions recommended for an acute increase in an indirect measure of hamstring length. Physiother Theory Pract. 2:113-20.

Mizuno T, et al. (2013) Viscoelasticity of the muscle-tendon unit is returned more rapidly than range of motion after stretching. Scand J Med Sci Sports. 1:23-30.

Morse CI, et al. (2008) The acute effect of stretching on the passive stiffness of the human gastrocnemius muscle tendon unit. J Physiol. 1:97-106.

Kay AD, et al. (2009) Isometric contractions reduce plantar flexor moment, Achilles tendon stiffness, and neuromuscular activity but remove the subsequent effects of stretch. J Appl Physiol 4:1181-9.

Herbert RD, et al. (2002) Change in length of relaxed muscle fascicles and tendons with knee and ankle movement in humans.  J Physiol 2:637-45.