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リハビリmemo

大学病院勤務・大学院リハビリテーション学所属の理学療法士による「研究と臨床をつなげるための記録」

ストレッチはいつするのが効果的?

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 ストレッチはいつ行うのが効果的ですか?

 朝起きたとき?それとも湯上りですか?

 

 このような質問を受けることが多いです。結論を言ってしまえば、湯上りのストレッチが一番、効果的です。このことについては、多くのネットメディアや個人ブログで言われていますよね。しかし、驚くことに、最近まで入浴のような筋肉を温めた後のストレッチ効果についてのエビデンス(科学的根拠)は系統的に示されていなかったのです。

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 このエビデンスが示されたのは、2012年に発表されたNakanoらのシステマティックレビュー "The effect of heat applied with stretch to increase range of motion"になります。今回はこのレビューを紹介しながら、湯上りのストレッチの有効性について考察していきましょう。

 

 

◆ ストレッチは筋肉を温めた後が効果的

 

 Nakanoらは、352名の健常者を対象にした12のランダム化比較試験(RCT)を分析しました。筋肉を温める温熱療法の後にストレッチを行った場合とストレッチのみを行った場合の即時的な効果、効果の持続性について比較検討を行いました(Nakano J, 2012)。

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  その結果、筋肉を温めた後にストレッチを行うほうが、ストレッチのみを行うよりも効果が増大するとともに、効果の持続性も高いことが明らかになりました。

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 このレビューは、エビデンスレベルの高いRCT研究を12本集めて行われており、系統的にエビデンスを示した報告になります。よって、筋肉を温めた後のストレッチは科学的根拠のある効果的な方法と言えるのです。

 

◆ 何故、筋肉を温めたほうが良いのか?

 

 動物実験では、筋肉の温度を40度まで温めると、コラーゲンは伸びやすくなり、結合組織の粘性や筋線維の粘弾性は低下することが示されています。このような実験は、もちろんヒトでは行えないのですが、同じような構造的な変化が生じていると推測されています(Reid DA, 2004)。しかしながら、近年の報告では、筋肉を温めることによって、ストレッチ時の感覚が変化することが示されています(Ylinen J, 2009)。ストレッチによって生じる痛み感覚や我慢できる最大の伸張感が筋肉を温めることによって変化し、柔軟性の向上に寄与していると考えられているのです。ちなみに、このような感覚の変化をストレッチ研究の領域では「stretch toleranceの変化」と呼ばれています。このstretch toleranceについては興味深い研究報告があるので、別の機会に詳しく説明しましょう。

 このように、筋肉を温めることによって生じるストレッチ効果のメカニズムは未だに明らかになっていませんが、筋や腱の構造的変化または、ストレッチ時の感覚の変化が寄与していると推測されています。

  

 以上から、ストレッチは筋肉を温めた後が最も効果的であり、なおかつ、その効果が持続することがわかりました。このような結果から、日常生活で最もストレッチの効果を高めるタイミングは、筋肉が温まっている「湯上り」ということになるのです。

 

最後に、今まで紹介した知見をもとに、根拠のある効率的で効果的なストレッチプロトコルを示しておきましょう。

✳︎効率的で効果的なストレッチプロトコル

・1日に30秒3回以上

・1週間に3日以上

・湯上がりに行う

 

 

ストレッチの科学シリーズ

ストレッチの科学①:ストレッチはパフォーマンスを低下させる(前編)

ストレッチの科学②:ストレッチでパフォーマンスを低下させない方法 

ストレッチの科学③:効率的で効果的なストレッチの時間と回数 

ストレッチの科学④:ストレッチは毎日やらなくてもいいんです

ストレッチの科学⑤:ストレッチはいつするのが効果的か? 

ストレッチの科学⑥:ストレッチは高齢者の歩行能力を高める

ストレッチの科学⑦:ストレッチの効果はどのくらい持続するのか?~即時効果編~ 

ストレッチの科学⑧:ストレッチの効果はどのくらい持続するのか?〜習慣的な効果〜

ストレッチの科学⑨:ストレッチのメカニズム その1

ストレッチの科学⑩:ストレッチのメカニズム その2

ストレッチの科学⑪:ストレッチにダイエットの効果はありません  

ストレッチの科学⑫:ストレッチのウソ?ホント? 〜まとめ〜

 

Reference

Nakano J, et al. (2012) The effect of heat applied with stretch to increase range of motion: a systematic review.  Phys Ther Sport. 3: 180-8.

Reid DA, et al. (2004) Passive force, angle, and stiffness changes after stretching of hamstring muscles. Med Sci Sports Exerc. 11: 1944-8.

Ylinen J, et al. (2009) Effect of stretching on hamstring muscle compliance. J Rehabil Med. 1: 80-4.

 

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