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リハビリmemo

大学病院勤務、大学院リハビリテーション学所属の理学療法士による、研究と臨床をつなげるための記録

ストレッチの効果はどのくらい持続するのか?~即時効果編~

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 ストレッチングの効果はどのくらい持続するのでしょうか?また、筋肉によって持続時間は異なるのでしょうか?

 ストレッチングの効果は、即時的な効果と習慣的な効果に分けられます。即時的な効果とは、ストレッチング後すぐの効果のことを言い、習慣的な効果とは、数ヶ月間、ストレッチングを続けた効果のことを言います。

 今回は、ストレッチングの即時的な効果の持続時間について考察してみましょう。

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◆ 下腿三頭筋

 

 下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)については、Radfordらのシステマティックレビューを参照しました。このレビューでは、5つのRCT研究(n=161)をもとに、下腿三頭筋のストレッチング効果の持続時間について検証しています。5つのRCT研究については以下参照。

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  ストレッチングの実施時間は5分から60分と様々ですが、結果では、効果の持続時間は概ね5分~30分であることが示されています(Radford JA, 2006)。 

 しかしながら、ストレッチを15分も30分も行うことは現実的ではないですよね。実際は数分単位ではないでしょうか。以前のエントリでも考察しましたが、下腿三頭筋の効果的なストレッチング時間は60秒3回以上なので、頑張って5回行っても60秒5回で計5分程度です。

 『効率的で効果的なストレッチの時間と回数

 そうなると、5分程度のストレッチングでは、効果の持続時間は大きく減少してしまうのでしょうか?

 これについては、Mizunoらの報告が参考になります。Mizunoらは、日本人を対象に、下腿三頭筋のストレッチングを60秒5回で、合計5分間行い、その効果の持続時間を調査しました。その結果、ストレッチング後30分でも効果が認めらることを報告しています(Mizuno T, 2013)。 

 よって、下腿三頭筋のストレッチングは5分おこなうと30分ほどの効果の持続が期待できます。

  それでは、他の筋の持続時間はどうでしょうか?

 

 

ハムストリングス

 

 ハムストリングスに対するストレッチング効果の持続時間は、ストレッチングの時間により大きく異なります。 まず、下腿三頭筋と同様のストレッチング時間5分での報告を見てみましょう。

 Powerらは、ハムストリングスに対してストレッチングを45秒6回の計4分30秒行い、その後の効果の持続時間を調査しました。その結果、ストレッチングの効果は120分まで持続したと報告しています(Power K, 2004)。

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 *縦軸にSLRの角度、横軸に時間経過を示している。

 次に、もっと短時間で調査した報告があります。

 Whatmanらは、ハムストリングスに対して、ストレッチングを20秒4回の計1分20秒行い、効果の持続時間を調査しました。その結果、ストレッチング後20分でも効果が認められたと報告しています(Whatman C, 2006)。

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 このように、ハムストリングスでは、1~2分程度のストレッチング時間でも20分程度の効果の持続が期待でき、5分程度のストレッチング時間では2時間まで効果の持続が期待できることが示されています。

 

 以上から、下腿三頭筋ではストレッチング時間が5分で30分程度の効果の持続が期待できます。また、ハムストリングスでは、ストレッチング時間が1分20秒で20分の効果の持続が期待でき、5分では120分程度という長い効果の持続時間が期待できるのです。

 

 注目すべき点は、下腿三頭筋とハムストリングスでは、同じストレッチング時間(5分間)でも効果の持続時間が異なることでしょう。怪我予防の観点から、ジョギングなど長時間の運動を行う場合は、特に下腿三頭筋のストレッチングを長めに行うのが良いかもしれません。

 

 まとめますと

・ストレッチングの即時的効果の持続時間について考察した。

・ストレッチングを5分行うと、下腿三頭筋は30分程度、ハムストリングスは120分程度まで効果が持続することが示さている。

・ジョギングなどの長時間の運動では、特に下腿三頭筋のストレッチングに時間をかけることが怪我予防の観点から推奨される。

ということです。

 

 次回は、習慣的なストレッチング効果の持続時間について考察していきましょう。

 

 

ストレッチの科学シリーズ

ストレッチの科学①:ストレッチはパフォーマンスを低下させる(前編)

ストレッチの科学②:ストレッチでパフォーマンスを低下させない方法 

ストレッチの科学③:効率的で効果的なストレッチの時間と回数 

ストレッチの科学④:ストレッチは毎日やらなくてもいいんです

ストレッチの科学⑤:ストレッチはいつするのが効果的か? 

ストレッチの科学⑥:ストレッチは高齢者の歩行能力を高める

ストレッチの科学⑦:ストレッチの効果はどのくらい持続するのか?~即時効果編~

ストレッチの科学⑧:ストレッチの効果はどのくらい持続するのか?〜習慣的な効果〜

ストレッチの科学⑨:ストレッチのメカニズム その1

ストレッチの科学⑩:ストレッチのメカニズム その2

ストレッチの科学⑪:ストレッチにダイエットの効果はありません  

ストレッチの科学⑫:ストレッチのウソ?ホント? 〜まとめ〜

 

 

Reference

Radford JA, et al. (2006) Does stretching increase ankle dorsiflexion range of motion? A systematic review. Br J Sports Med. 10 :870-5.

Mizuno T, et al. (2013) Decrements in stiffness are restored within 10 min. Int J Sports Med. 6 :484-90

Power K, et al. (2004) An acute bout of static stretching: effects on force and jumping performance. Med Sci Sports Exerc. 36 :1389-96.

Whatman C, et al. (2006) Acute changes in passive stiffness and range of motion post-stretching. Phys Ther Sport. 4 :195-200

 

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