リハビリmemo

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転倒予防のリスクマネージメント① 転倒のリスク因子を知ろう!


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 リスクマネージメントの基本は、危険なことが起こらないように、その潜在的なリスクが顕在化する要因を洗い出し、影響度の大きさにしたがって優先順位をつけ、リスク防止策を実行することです。

 雨の降る確率が70%であれば、家をでるときに傘を持っていきますよね。この雨の降る確率がリスクの影響度であり、傘を持って家をでるというのがリスク防止策になります。

 では、転倒予防のリスクマネージメントはどのように行えば良いのでしょうか?

 効果的な転倒リスクの防止策を講じるためには、リスク因子とその影響度を知り、優先順位をつける必要があります。今回は、この転倒リスクの因子について、グローバルスタンダードとなっている報告をもとに考察していきましょう。

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 2010年のJAMAに掲載されたTinettiらのレビューでは、地域高齢者を対象にした33の研究をもとに、少なくとも2つ以上の試験において、独立したリスク因子を影響度よって順位付けをし、リストにしています。JAMA(Journal of the American medical association)は世界的に有名な雑誌ということもあり、このリストは他の多くの雑誌で引用されているようです(もちろん日本の著名な先生方も引用されていますね)。

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✻Tinetti ME, 2010より引用改変

 

 やはり、最も注意すべきリスク因子は転倒歴になりますね。次いでバランス障害、筋力低下、視力障害、薬剤などとなりますが、実にさまざまなリスク因子があり、ヒトの二足歩行が多くのシステムの上で精巧に行われていることがわかります。これらのリスク因子の数が増えれば増えるだけ転倒リスクが高まることが報告されており(Tinetti ME, 1988)、Tinettiらはこのリストによって転倒リスクの見積もりと対策に有用だろうと述べています。

 確かに、このリストによって、転倒リスクの因子を明確にはできます。しかし、全てをスクリーニングするのも時間がかかりますよね。米国老年医学会や米国疾病予防管理センターでは、効率的に転倒リスクをスクリーニングするためのアルゴリズムを発表しています。これは、次回にでもご紹介する予定です。また、個々のリスク因子については別の機会で詳しく考察していきます。今回は、転倒のリスク因子がこのような順位付けされていることを知っておきましょう。

 また、2001年に米国老年医学会、英国老年医学会、米国整形外科学会が発表した報告も参考にしてみてください。

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American Geriatrics Society, 2001より引用改変 

 

 リスクマネージメントを行うためには、リスク因子の洗い出し、リスクの影響度、それらの優先順位づけが求められます。このような意味で、今回のエントリで紹介したグローバルスタンダードなリスク因子とその順位づけは有用でしょう。もちろん、日本では日本人独自の身体的特性、生活環境があり、また病院や施設にも独自の環境があります。ですので、今回のエントリは、それぞれの病院・施設独自の転倒予防対策を講じるためのロールモデルとして活用していただければと思います。

 

 

転倒の科学

転倒の科学①:健康寿命から考える転倒予防

転倒の科学②:転倒予防のリスクマネージメント① 転倒のリスク因子を知ろう! 

転倒の科学③:効率的に転倒リスクをスクリーニングしよう!AGS編 

転倒の科学④:効率的に転倒リスクをスクリーニングしよう!CDC編

転倒の科学⑤:有効なバランス能力の評価とは?

転倒の科学⑥:バランス能力の評価を再考しよう

転倒の科学⑦:歩行速度で転倒リスクを予測しよう

転倒の科学⑧:変形性膝関節症の術後の痛みが転倒のリスク因子になる

転倒の科学⑨:睡眠薬のメカニズムと転倒リスクについて知っておこう

 

Reference

Tinetti ME, et al. The patient who falls: "It's always a trade-off". JAMA. 2010 Jan 20; 303(3): 258-66.

Tinetti ME, Speechley M, Ginter S. Risk factors for falls among elderly persons living in the community. N Engl J Med. 1988;319(26):1701-1707.

Guideline for the prevention of falls in older persons. American Geriatrics Society, British Geriatrics Society, and American Academy of Orthopaedic Surgeons Panel on Falls Prevention. J Am Geriatr Soc. 2001 May;49(5):664-72.