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リハビリmemo

大学病院勤務、大学院リハビリテーション学所属の理学療法士による、研究と臨床をつなげるための記録

効率的に転倒リスクをスクリーニングしよう!CDC編

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 転倒のリスク因子を如何に効率的にスクリーニングするか?

 リスク管理においてそのリスクを迅速に明確化させることは、その後のリスク防止効果を高めます。前回は、米国老年医学会(AGS)が推奨している転倒スクリーニングのアルゴリズムを紹介しました。

効率的に転倒リスクをスクリーニングしよう!

 今回は、米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)が推奨する転倒スクリーニングのアルゴリズムを紹介しましょう。CDCは、転倒のリスク因子をどのように効率的にスクリーニングしているのでしょうか?

 

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 CDCは、米国保健福祉省所管の総合研究所であり、特に感染症では世界的に主導的な役割を果たしています。エボラウイルスなど、危険なウィルスへの対策については世界中がCDCに依存しています。それだけに、その発信力は高く、勧告される文書は非常に多くの文献やデータから作成され、世界共通ルール(グローバル・スタンダード)としてみなされるほどの影響力をもっています。

 CDCでは、STEADI(Stopping Elderly Accidents, Deaths & Injuries)という取り組みの中で、転倒予防についての情報を発信しています。tool kitと呼ばれるパンフレットはデザイン性にも優れ、自分自身で転倒予防できるようセルフチェックやポケットガイドなど、とてもわかりやすい内容になっているのでオススメです。

STEADI Materials for Health Care Providers

 その中のひとつに転倒スクリーニングのアルゴリズムがあります。今回は、そのアルゴリズムを見ていきましょう。

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✻CDC STEADI "Triage Your Patients Based on Fall Risk"

 

これを翻訳してみました。

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✻CDC STEADI "Triage Your Patients Based on Fall Risk"より引用改変

 

 CDCのスクリーニングもAGSのアルゴリズムと同様に転倒歴から聴取しています。転倒歴や歩行に不安定性が認められる場合は、歩行・筋力・バランスの評価に移行します。AGSに比べて筋力の項目が入っているのがCDCの特徴ですね。歩行能力はTUG、筋力は30秒椅子立ち上がりテスト、バランスは4ステージバランステストを用いています。

 TUGはおなじみですが、30秒椅子立ち上がりテストはあまり馴染みがないと思います。30秒立ち上がりテストは30-Second Chair Stand Test(30-CST)として変形性関節症の国際学会であるOARSIも推奨する下肢筋力テストです(Dobson F, 2013)。また、4ステージバランステストも馴染みがないと思います。この評価はダンデム肢位や片脚立位などの静的バランスを4段階に分けて評価するものです。これらのテストについて、STEADIのリンクを貼っておきますので参考にしてみてください。

30-Second Chair Stand Test(30-CST)

4 stage balance test

 歩行・筋力・バランスで問題がある場合は過去の転倒回数によりリスクを判別します。2回以上の転倒は高リスク、1回でも転倒し、怪我があれば高リスクとし、怪我がなければ中リスクとします。また転倒がなくても中リスクとなります。

 リスク判別後はリスクに応じた介入が示されており、特に、高リスク者は30日間のモニタリングを義務付けるほど徹底しています。

 

 AGS、CDCの転倒スクリーニングにおけるアルゴリズムを紹介しました。これらの指標はグローバル・スタンダードになっていますが、翻訳されたものがなかったため、今回、ブログにて紹介してみました。しかしながら、あくまでこれらのアルゴリズムは世界の基準であり、日本の病院、施設、地域ではそのまま適応できません。このアルゴリズムをひとつの基準として、そこから現場に適した転倒スクリーニングの作成に活かしていただければと思います。

 個々のテストバッテリーについては、今後、詳細に考察していきましょう。

 

 

転倒の科学

転倒の科学①:健康寿命から考える転倒予防

転倒の科学②:転倒予防のリスクマネージメント① 転倒のリスク因子を知ろう! 

転倒の科学③:効率的に転倒リスクをスクリーニングしよう!AGS編 

転倒の科学④:効率的に転倒リスクをスクリーニングしよう!CDC編

転倒の科学⑤:有効なバランス能力の評価とは?

転倒の科学⑥:バランス能力の評価を再考しよう

転倒の科学⑦:歩行速度で転倒リスクを予測しよう

転倒の科学⑧:変形性膝関節症の術後の痛みが転倒のリスク因子になる

転倒の科学⑨:睡眠薬のメカニズムと転倒リスクについて知っておこう

 

Reference

Dobson F, et al. OARSI recommended performance-based tests to assess physical function in people diagnosed with hip or knee osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2013 Aug;21(8):1042-52.