リハビリmemo

大学病院勤務・大学院リハビリテーション学所属の理学療法士・トレーナーによる「研究と臨床をつなげるための記録」

筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう(2017年7月版)

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 2017年7月にスポーツ医学雑誌として有名なSports medicineから「レジスタンストレーニングのセット数」についての最新のレビューが報告されましたので、本ブログでもキャッチアップしておきます。

 

Table of contents



◆ これまでのセット数の研究に対する疑問と問題点

 

 現代のスポーツ運動生理学は、レジスタンストレーニング(筋トレ)のセット数について、このように述べています。

 

 1セットよりは複数のセットが効果的であり、3セット以上では効果がプラトーになる。

 

 2010年のKriegerらは、1960年から2009年までに報告された研究をもとにメタ解析を行い、1セットより複数セットを行うことによって、有意に筋肥大が生じることを報告しました(Krieger JW, 2010)。

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Fig.1:Krieger JW, 2010より筆者作成

 

 また2012年には、ノッティンガム大学のKumarらが筋肉のもとである筋タンパク質の合成作用の観点からトレーニングの最適なセット数について報告しました。その結果は興味深く、3セットと6セットの間には有意な筋タンパク質の合成作用の増加が認められず、セット数には「筋タンパク質の合成作用の限界点(anabolic limit)」があることを示しました。この報告によって、3セットを超えるセット数ではトレーニング効果がプラトーになる可能性が示唆されています(Kumar V, 2012)。

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Fig.2:Kumar V, 2012より筆者作成

 

 これらの報告から、現在のスポーツ運動生理学では、トレーニング効果を最大化するセット数の目安は「3セット」であるとされているのです。

筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう

 

 しかし、これらの報告には、ふたつの疑問と統計的な問題点が挙がっていました。

 

 疑問のひとつは、トレーニング経験のレベルが曖昧であったことです。トレーニングの初心者や上級者などのレベルに応じたセット数が示されていませんでした。もうひとつは、単独トレーニングまたは複数の全身性トレーニングによる最適なセット数が示されていなかったことです。

 

 さらに重要な問題が、これまでのセット数についての研究データがバラバラであり統制されていなかった点です。

 

 例えば4週間の期間において、1日3セットと4セットのトレーニング効果を比較しようとしても、それが1週に2回なのか4回なのかによってトレーニング効果に差が生じてしまいます。これでは、単純に1日のセット数のみで統計的な検証をしてしまうと誤りが生じてしまいます。実際に誤りが指摘されたメタ解析の報告もありました。

 

 そして、これらの疑問と問題の解決を図ったのがUSWのRalstonらであり、その検証結果が2017年7月の雑誌Sports medicineで報告されたのです。



◆ トレーニングの経験レベルによる最適なセット数

 

 Ralstonらは、1987年から2016年までに報告された6,962の研究報告から、4週間以上の縦断的な研究であり、トレーニング経験のレベル、トレーニング内容(単独 or 全身)が判別可能な9つの報告を選定しました。

 

 ここで、Ralstonらはデータのバラツキを統制するために、1日のセット数を単純に比較するのではなく、週単位の総セット数で比較することにしました(週単位の総セット数で標準化することによってデータの偏りの問題を解決したのです)。

 

 総セット数は1週間に5回未満、5〜9回、10回以上の3つに分類して、メタ解析が行われました。

 

 その結果、セット数による筋肥大の効果は、トレーニング経験のレベル、トレーニングの内容に関係なく、Does-response効果(やればやるだけ効果的)が認められました。

 

 そして最適な総セット数は、トレーニング経験の初心者や中級者では1週間に5〜9回、上級者は10回以上でした。ここから初心者や中級者は1日に2〜3セットを週2〜3回、上級者は1日に3〜4セットを週3回以上が効果的であることが示唆されました。

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 Ralstonらは、これらの結果から、トレーニングの内容(単独 or 全身性)によるセット数への影響は少なく、あまり考えなくて良いとしています。しかし、トレーニング経験のレベルにおいては、レベルに応じてセット数による効果が異なることを意識して取り組むべきであると述べています(Ralston GW, 2017)。

 

 

 Ralstonらの功績は、これまでセット数の研究データがバラバラであった問題を週単位で標準化し、そこからトレーニングの経験レベルによって最適なセット数を導き出したことでしょう。前述したこれまでの報告と比較して、やはりセット数の目安は「3セット」で良さそうです。トレーニングの上級者はDoes-response効果にもとづいて、3セット以上でも良いかもしれませんが、筋タンパク質の合成限界や疲労の度合い、週間のトレーニング頻度との相談になると思います。

 

 これからもトレーニングに関する最新の情報を紹介していきます。どんどん知識をブラッシュアップしてトレーニング内容をリ・デザインしていきましょう。

 

 

◆ 読んでおきたい記事

シリーズ①:筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを理解しよう

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シリーズ㉑:筋トレの最適な負荷量を知っておこう(2017年8月版)

シリーズ㉒:筋トレが不安を解消するエビデンス

シリーズ㉓:筋肉量を維持しながらダイエットする方法論

シリーズ㉔:プロテインの摂取はトレーニング前と後のどちらが効果的?

シリーズ㉕:筋トレの前にストレッチングをしてはいけない理由

 

References

Krieger JW. Single vs. multiple sets of resistance exercise for muscle hypertrophy: a meta-analysis. J Strength Cond Res. 2010 Apr;24(4):1150-9.

Kumar V, et al. Age-related differences in the dose-response relationship of muscle protein synthesis to resistance exercise in young and old men. J Physiol. 2009 Jan 15;587(1):211-7.

Ralston GW, et al. The Effect of Weekly Set Volume on Strength Gain: A Meta-Analysis. Sports Med. 2017 Jul 28.