COPDのリハビリ栄養について学ぶ機会があったのでMemoしておきます。
COPDの栄養評価の特徴は、一般的に用いられるアルブミン値ではなく、「身体計測」が大事であるということです。
栄養評価におけるアルブミン値は、通常3.6g/dl以上が正常とされ、3.6未満では栄養状態の改善が求めれると言われています。
しかし、COPDの場合はアルブミン値は正常もしくは軽度の低下を示すことが多いです。
これは何故でしょう?
その理由は、COPDが「マラスムス型」の栄養障害を呈しやすいからです。
栄養障害には2つの型があるのです。
それは、クワシオルコル型とマラスムス型です。
クワシオルコル型は、蛋白質が足りない状態のことであり、アルブミン値は低値を示します。
一方、マラスムス型は、蛋白質とともにエネルギーも足りない状態のことを言います。
エネルギー不足を補うために筋蛋白の崩壊が生じるため、蛋白質は担保されアルブミン値は変化しないか、軽度の低下を示すだけになります。また、脱水症状が加わるとなんとアルブミン値は高値を示すのです。
そのため、COPDではアルブミン値が3.6を超えていても安易に栄養状態を判断できません。
そこで推奨されている評価項目が身体計測なのです。
身体計測では、体重や四肢周計の計測を行います。
では、何故、このような計測が推奨されているのでしょうか?
先ほども述べたように、COPDでは蛋白質とともにエネルギーも不足になります。
このエネルギー不足は、安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure: REE)の増大が関与しています。
健常者と比べてCOPDではREEが120〜140%に増大すると言われています。
増大する理由は、幾つかの因子から示されています。
・呼吸筋酸素消費量の増大
・全身炎症に伴う炎症性サイトカインの増加
・摂食調整ホルモン(レプチン、グレリン)の分泌異常
そのため、栄養状態が不良な場合、筋蛋白をエネルギー源として利用するため、体重の減少、脂肪量の減少とともに除脂肪量(筋肉量)の減少を認めるのです。
このことから、身体計測では体重とともに四肢周計を行います。
COPD診断と治療のためのガイドラインでも身体計測は推奨されています。

次に、
COPDの栄養療法では、どのような点に気をつければ良いでしょうか。
前述したように、
COPDでは安静時エネルギー代謝(REE)が増大しています。十分なエネルギーを投与しないと、エネルギーを補うために筋蛋白を利用してしまい、呼吸筋の筋力低下を生じる原因になります。結果的に換気効率を低下させ、呼吸仕事量をさらに増大させてしまい必要エネルギー量を増やしてしまうといった悪循環を作り上げてしまいます。
栄養療法では、このような亢進したエネルギー消費量に見合う十分なエネルギー量の摂取が必要になります。ガイドラインを見ると、実測REEの1.5倍、予測REEの1.7倍の総摂取カロリー、高タンパク食が推奨されています。
例えば、Harris-Benedictの式から基礎エネルギー消費量(BEE)が800kcalの場合、これに1.7倍した1,360kcalを必要エネルギー量とします。
また、筋蛋白量の維持のためには、十分な蛋白源の摂取が重要です。分岐鎖
アミノ酸(BACC)は異化抑制・蛋白合成促進作用をもっており、換気ドライブの改善効果も示されており、積極的な摂取が推奨されています。
栄養療法では、
三大栄養素の組成割合についても検討する必要が言われています。
よく炭水化物の摂取は、二酸化炭素を多く発生させるので控えましょうと言われます。
それは何故でしょうか?
その答えは、呼吸商にあります。
呼吸商とは、単位時間あたりの酸素消費量に対する二酸化炭素の排泄量です。
通常、呼吸商は0.8とされ、酸素1.0の消費に対して二酸化炭素0.8排泄するという意味になります。
この呼吸商は栄養素において異なります。
・脂質:0.71
・炭水化物:1.0
つまり、単純に考えると、炭水化物の摂取による二酸化炭素排泄量は、脂質を摂取する場合の3割増しになるということです。
このため、脂質を主体とした栄養剤の投与効果の報告も示されていますが、十分なエビデンスは得られていません。しかし、栄養組成については検討する価値がありそうですね。
最近のコクランレビューでは、
COPDの栄養療法のみでは、体重増加、運動耐容能の改善効果は認められていません。
しかし、運動療法と併用することで、体重増加(除脂肪体重)、運動耐容能の改善が認められています。
COPDに対する
リハビリテーションは、栄養療法、運動療法のどちらかのみでは効果がありません。栄養療法と運動療法のcombineが必要であり、
理学療法士においてはリハビリ栄養の観点が最も求められる疾患であると思い、まとめてみました。