脳卒中後のStiff-knee gait(SKG)は「歩行の遊脚期にみられる麻痺側下肢の膝屈曲の減少または遅延」と定義されています(Perry J, 1992)。SKGでは歩行の遊脚期にみられる膝関節の屈曲が減少するため、足部のクリアランスの低下を招き、転倒リスクを増加させることが示唆されています。
これまでSKGの原因には、主に大腿直筋の痙縮が挙げられており、ボツリヌス毒素や筋肉リリースの手術が行われてきました。しかし、期待されるほどの効果は示されませんでした(Tenniglo MJ, 2014)。
このような状況の中、近年、大腿直筋とともに中間広筋の関与が注目されるようになったのです。
今回は、脳卒中後のStiff-knee gaitにおける中間広筋の筋活動を調査したMazzoliらの報告をご紹介しましょう。
2017年7月の雑誌Gait & Postureより
対象は脳卒中後にSKGを認める患者46名です。
中間広筋の筋活動は、細いワイヤ電極を超音波ガイドを用いて中間広筋へ挿入し、歩行中の筋活動を筋電図にて計測しました。被験者は12mの歩行路を快適歩行速度で歩き、その際の中間広筋の筋活動とともに歩行分析を動作解析システムにより測定されました。
得られた測定結果は、Perryらの正常歩行の知見を参考にして比較検証が行われました。その結果、被験者の96%に中間広筋の異常な筋活動を認めました。また、20%の被験者では歩行周期のすべてにおいて中間広筋の持続的な筋活動が認められました。
歩行周期における中間広筋の異常な筋活動は、ミッドスタンスで91%、ターミナルスタンスで61%、プレスイングで54%、イニシャルスイングで37%、ミッドスイングで70%の増加が見られました。
Fig.1:Mazzoli D, 2017より筆者作成
これらの結果から、SGKを示すほとんどの症例にの中間広筋に異常な筋活動が認められることがわかりました。そして、中間広筋の異常な筋活動は「遊脚期の早期の活性化」および「立脚期の延長した活性化」が特徴であることが明らかになったのです。
今回の結果より、中間広筋の異常な筋活動がSKGに寄与していることが示唆されました。Mazzoliらは、SKGの臨床場面においても、中間広筋の筋活動の評価、治療を検討するべきであると述べています。
Mazzoliらの報告は、SKGに対する中間広筋の関与を初めて明らかにしたインパクトのある知見と思われます。具体的な臨床介入は示されていませんが、大腿直筋だけでなく中間広筋の評価、介入の必要性を示したことは臨床的にも価値があるでしょう。
また、本文中には大腿直筋の痙縮以外のSKGの要因が挙げられていました。これらの要因はリハビリの介入ができそうなので、機会があればブログでご紹介します。
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References
ReferencesPerry, Normal and Pathological Function, SLACK Incorprated, Thorofare, N.J, 1992
Mazzoli D, et al. Electromyographic activity of the vastus intermedius muscle in patients with stiff-knee gait after stroke. A retrospective observational study. Gait Posture. 2017 Jul 5. pii: S0966-6362(17)30706-3.
Tenniglo MJ, et al. Effect of chemodenervation of the rectus femoris muscle in adults with a stiff knee gait due to spastic paresis: a systematic review with a meta-analysis in patients with stroke. Arch Phys Med Rehabil. 2014 Mar;95(3):576-87.