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ダイエットするなら「太るメカニズム」を理解しよう!〜糖類編〜


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 ゲームを攻略するためには、ルールや仕組みを理解しなければなりません。スポーツであっても、仕事であっても、そのルールを知らなければ参加することすらできません。逆に、ルールをしっかりと理解していれば戦略的にゲームを進めることができます。

 

 では、食品や飲料に含まれる栄養素は、僕たちの身体にどのような影響を与え、太らせるのでしょうか?

 

 ダイエットをゲームとして捉えれば、そのルールである「太るメカニズム」を知ることから始めなければ、戦略的にゲームを進めることができません。

 

 逆に、太るメカニズムを知ることができれば、効率的に効果的にダイエットをすることができるのです。

 

 今回は、ショートケーキを題材にして、そこに含まれている「糖類による太るメカニズム」について考察していきましょう。

 

Table of contents



 

グルコースによる太るメカニズムを知っておこう

 

 ショートケーキは小麦粉、バター、卵(鶏卵)、ホイップクリーム、そして大量の砂糖からつくられます(イチゴは省きます)。

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図:ショートケーキの材料

 

 小麦粉は小麦から果皮、種皮、胚芽などの食物繊維を取り除いた(精製した)もので、その成分の多くが「デンプン」になります。デンプンは多くのグルコースブドウ糖)が結合して連なった多糖類です。

 

 ホイップクリームは生クリームと砂糖からつくられますが、生クリームは乳脂肪であり、砂糖はグルコースとフルクトース(果糖)という単糖類からできてます。

 

 その他にもケーキをつくる過程で砂糖が大量に使われています。

 

 バターや卵には糖類がほとんど含まれておらず、その成分は脂質になります。

 

 ここからわかることは、ショートケーキの成分は主に「糖類と脂質」に分けられるということです。

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図:ショートケーキの成分

 

 では、糖類の消化・吸収の過程から、太るメカニズムを見ていきましょう。

 

 まずは「グルコース」です。

 

 小麦粉やホイップクリーム、砂糖は、胃や腸で消化されるとグルコースブドウ糖)やフルクトース(果糖)といった単糖類にまで分解され、腸で吸収されます。

 

 吸収されたグルコースは血流にのって肝臓に運ばれます。グルコースが肝臓に運ばれると、その一部はグリコーゲンに合成されて肝臓に貯蔵されますが、残りのグルコースは血液中に放出されます。

 

 グルコースが血液中にどんどん放出されると血液中のグルコース濃度が高くなります。この血液中のグルコース濃度がよく耳にする「血糖値」のことです。ショートケーキを食べると多量のグルコースが血液中に放出されて、血糖値が上昇します。

 

 身体の細胞は血液中のグルコースからエネルギーを得ているため、エネルギー不足にならないように血糖値はいつも一定の範囲(70〜110mg/dL)に保たれています。とくに脳にとっては血糖値が一定に保たれていることが重要になります。なぜなら、自分でグルコースをつくることができないからです。血糖値が下がった状態(低血糖)になると、頭痛や意識混濁といった脳の症状が出現するのはこのためです。

 

 では、血糖値が高ければ良いのかというと、そういうわけでもありません。

 

 高すぎる血糖値は活性酸素を生み出し、血管を痛めてしまいます(これにより動脈硬化が進みます)。そのため血糖値が高くなると、血糖値を下げるようにホルモンが働きます。その役割を担うのが「インスリン」です。

 

 多くのグルコースを摂取して血糖値が上昇すると、膵臓にあるβ細胞からインスリンが分泌され、全身の組織にグルコースを取り込むように作用します。その中でも多くのグルコースが肝臓や筋肉、そして脂肪組織に取り込まれます。

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図:インスリンが作用する主な臓器

 

 インスリンによって肝臓に取り込まれたグルコースは、グリコーゲンに合成されますが、その他は脂肪に合成されて肝臓内に蓄積されるか、または血液中に放出されます。

 

 筋肉にグルコースが取り込まれると、筋グリコーゲンに合成されて貯蔵されます。なぜ肝臓や筋肉でグリコーゲンに合成されるのかというと、ひとつの大きな分子にすることで、より多くのグルコースを貯蔵してエネルギーとして蓄えるためです。

 

 筋肉は他の臓器に比べて、もっともグルコースを多く取り込むことができ、その割合は8割にもおよびます(DeFronzo RA, 1988)。

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Fig.1:DeFronzo RA, 1988より筆者作成

 

 マラソンなどの長時間運動の前にグリコーゲン・ローディングが行われるのは、このような筋肉の特性を利用して、多くの筋グリコーゲンを貯蔵するためです。

 

 しかし、急速に多量のグルコースを摂取すると、肝臓や筋肉でも処理できなくなります。するとインスリンは脂肪組織にグルコースを取り込ませます。脂肪組織に取り込まれたグルコースはトリアシルグリセロール(トリグリセリド・中性脂肪)に合成されて脂肪滴として貯蔵されます。これにより脂肪組織が肥大します。

 

 インスリンには、このようにグルコースを脂肪細胞に取り込ませるとともに、脂肪を合成させる酵素脂肪酸合成酵素など)の量を増やす作用があります。インスリンは「脂肪の合成を促すホルモン」でもあるのです。

 

 そして「ある状態」になると、インスリンによる脂肪組織への取り込みが促進されます。

 

 それが「インスリン抵抗性」です。

 

 習慣的に多量のグルコースを摂取していると、インスリンによるグルコースの取り組み能力が低下してしまいます。これを「インスリン抵抗性」といいます。インスリン抵抗性が生じると高血糖になってしまうため、膵臓のβ細胞はさらに多くのインスリンを分泌するようになります。この状態を「高インスリン血症」といいます。

 

 インスリン抵抗性がグルコースの取り込み能力が高い筋肉に生じると、多くのグルコースは脂肪組織に取り込まれるようになります(Ezaki O, 2011)。すると、どんどんトリアシルグリセロールが合成され、脂肪組織が肥大化してしまうのです。

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Fig.2:Ezaki O, 2011より筆者作成

 

 このようにショートケーキに含まれる多量のグルコースを摂取すると脂肪組織の肥大が生じやすくなります。また、習慣的にケーキなどの甘いお菓子を摂取していると、インスリン抵抗性を生じさせ、それにともなう高インスリン血症によって、ますます脂肪組織を肥大させる、つまりは太ってしまうということです。

 

 そして、もうひとつ、やっかいな糖類があります。

 

 それが「フルクトース」です。



◆ フルクトースはもっとも太りやすい糖類

 

 ショートケーキには多くの砂糖(スクロース)が使われています。砂糖にはグルコースとフルクトースが50%ずつ含まれています。

 

 フルクトースの特徴は、糖の中で「もっとも甘い」ということです。

 

 砂糖(スクロース)の甘みを1.0としたとき、グルコースの甘みは0.75であるのに対して、フルクトースの甘みは1.7とグルコースの倍以上であり、自然界でもっとも甘い糖ともいわれています(Grembecka M, 2015)。

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Fig.3:Grembecka M, 2015より筆者作成

 

 砂糖が甘いのは「スクロースの甘み」によるものなのです。

 

 このフルクトースの甘みを利用して、近年では高果糖コーンシロップ(日本では果糖ブドウ糖液糖)などの人工甘味料が加工食品やジュースなどに添加されています。

 

 このような食品や飲料を習慣的に摂取すると非アルコール性の脂肪肝疾患(NAFLD)や動脈硬化脂質異常症などのメタボリックシンドロームを引き起こすことが示唆され、近年、フルクトースの摂取に警鐘が鳴らされているのです(Hannou SA, 2018)。

 

 では、ショートケーキを食べると、フルクトースがどのように消化・吸収されるのかというと、現在でもまだ明確になっていません。そこで、最新の研究報告をもとに、現時点での代謝経路とその作用についてまとめておきます。

 

 ケーキに含まれる砂糖は消化・吸収の過程でフルクトースとグルコースに分解されます。フルクトースはグルコースと同じように小腸で吸収されます。吸収されたフルクトースはそのまま肝臓に送られるというのがこれまでの通説でしたが、2018年に行われた研究報告により小腸でグルコースに変換されて肝臓に運ばれることが示唆されています(Cholsoon Jang, 2018)。

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 グルコースの変換には小腸にあるケトヘキソキナーゼ(Khk)が関与していますが、この処理には限界があることがわかっています。多量のフルクトースを摂取すると、グルコースに変換する処理が間に合わず、そのままの形で肝臓に送られてしまいす。そして、この処理されなかったフルクトースが肝臓で悪さをするのです。

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 肝臓に送られたフルクトースは一部がグリコーゲンに合成されますが、そのほどんどがトリアシルグリセロールに合成されて脂肪として肝臓内に貯蔵されます(これが非アルコール性脂肪肝疾患を発症させる原因になります)。

 

 しかしながら、その全てを肝臓で貯蔵できないため、合成された脂肪を血液中に放出しようとしますが、脂肪は油なのでそのままの形では放出できません。そこで、トリアシルグリセロールをコレステロールといっしょに超低密度リポタンパク質(VLDL)という形にして血液中に放出します(これが脂質異常症動脈硬化の原因になります)。

 

 放出されたVLDLの一部は筋肉に取り込まれますが、そのほどんどが脂肪組織に取り込まれます。脂肪組織に取り込まれると、含まれているトリアシルグリセロールによって脂肪細胞が肥大します(Vos MB, 2017)。

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Fig.4:Vos MB, 2017より筆者作成

 

 とくに非アルコール性脂肪肝疾患がベースにあると、肝臓でのトリアシルグリセロールの合成が促進され、多くのVLDLが放出されて、脂肪組織に取り込まれる、つまり、さらに太りやすくなることが示唆されています(Fabbrini E, 2016)。

 

 フルクトースの悪さはこれだけではありません。

 

 フルクトースには「食欲を高めてしまう」作用があるのです。

 

 グルコースを摂取するとレプチン、インスリン、GLP-1、GIP、PYYなどの食欲低下ペプチドの分泌を高めて、食欲促進ホルモンであるグレリンの分泌を減少させます。分泌された食欲低下ペプチドは、受容体である脳の視床下部にある弓状核に作用して満腹感を高めます。これにより食欲にブレーキがかかります。

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 これに対して、フルクトースは食欲低下ペプチドの分泌を抑えて、食欲促進ホルモンであるグレリンの分泌を高めます。グレリン視床下部の弓状核に作用すると満腹感が低下するだけでなく、快楽報酬が増加して、食欲を高めてしまうのです(Johnson RJ, 2017)。

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 このようにしてフルクトースは、「もっとケーキ食べたい!」という食欲をかき立てます。いくつもケーキやお菓子を食べると、多量のフルクトースが肝臓へ送られ、脂肪合成を高めてVLDLを放出することにより、全身の脂肪組織を肥大させます。また、食物促進ホルモンに作用して、満腹感を低下させ、僕たちに「もうひとつぐらい良いよね・・」と誘惑するのです。

 

 この悪循環を形成することが、フルクトースが「太りやすい糖」といわれる理由です。



◆ 糖類による太るメカニズムまとめ

 

 ショートケーキの材料から、グルコースやフルクトースといった糖類が多く含まれていることがわかります。

 

 グルコースは臓器のエネルギー源ですが、多く摂取すると脂肪合成を促進させてしまいます。また、フルクトースも少量であればグルコースに変換されますが、多くを摂取すると肝臓に送られ、脂肪合成を促進させます。

 

 もちろん、空腹時にケーキを1つ食べたからといって、脂肪が合成されるわけではありません。脂肪合成は、総摂取カロリーが総消費カロリーを上回っている「オーバーカロリー」のときに生じ、総摂取カロリーが総消費カロリーを下回っている「アンダーカロリー」のときには生じないことも示唆されています(Hellerstein MK, 1999)。

 

 しかし、食後すぐにケーキやお菓子を食べたり、食事中にジュースを飲むことはグルコースやフルクトースの過剰摂取につながるため控えることが推奨されています(Cholsoon Jang, 2018)。

 

 このような食習慣をつづけていると、筋肉のインスリン抵抗性が生じ、グルコースの脂肪組織への取り込みが高まるだけでなく、フルクトースによる非アルコール性脂肪肝疾患が生じ、肝臓から多くの脂肪が放出されることによって、ますます太る可能性が高くなってしまうのです。

 

 ショートケーキやお菓子を食べるときには、このような「糖類による太るメカニズム」を思い出してみましょう。

 

 それでも食べるかどうかは、あなた次第です。



 ショートケーキには糖類のほかに脂質も含まれています。次回は「脂質による太るメカニズム」について考察していきましょう。




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◆ 読んでおきたい記事

シリーズ①:「朝食を食べないと太る」というのは都市伝説?〜最新エビデンスを知っておこう

シリーズ②:ダイエットが続かないのは「寝不足」が原因?【最新エビデンス】

シリーズ③:テレビをつけたまま寝ると太る最新エビデンス

シリーズ④:コーヒーにはダイエット効果がある?【最新エビデンス】

シリーズ⑤:ダイエットするなら「太るメカニズム」を理解しよう!〜糖類編〜

 

 

◆ 参考文献

DeFronzo RA, et al. Lilly lecture 1987. The triumvirate: beta-cell, muscle, liver. A collusion responsible for NIDDM. Diabetes. 1988 Jun;37(6):667-87.

Ezaki O, et al. The optimal dietary fat to carbohydrate ratio to prevent obesity in the Japanese population: a review of the epidemiological, physiological and molecular evidence. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2011;57(6):383-93.

Grembecka M, et al. Natural sweeteners in a human diet. Rocz Panstw Zakl Hig. 2015;66(3):195-202. 

Hannou SA, et al. Fructose metabolism and metabolic disease. J Clin Invest. 2018 Feb 1;128(2):545-555.

Cholsoon Jang, et al. The Small Intestine Converts Dietary Fructose Into Glucose and Organic Acids. Cell Metab, 27 (2), 351-361.e3 2018 Feb 6

Vos MB, et al. Sugar, Sugar . . . Not So Sweet for the Liver. Gastroenterology. 2017 Sep;153(3):642-645. 

Fabbrini E, et al. Physiological Mechanisms of Weight Gain-Induced Steatosis in People With Obesity. Gastroenterology. 2016 Jan;150(1):79-81.

Johnson RJ, et al. Perspective: A Historical and Scientific Perspective of Sugar and Its Relation with Obesity and Diabetes. Adv Nutr. 2017 May 15;8(3):412-422. 

Mortera RR, et al. Fructose at the crossroads of the metabolic syndrome and obesity epidemics. Front Biosci (Landmark Ed). 2019 Jan 1;24:186-211.

Hellerstein MK, et al. De novo lipogenesis in humans: metabolic and regulatory aspects. Eur J Clin Nutr. 1999 Apr;53 Suppl 1:S53-65.