40代〜50代に差し掛かると、「そろそろ運動を…」と考える方は多いですよね。でも、実際にどんな運動が効果的なのか、はっきり分かっている人は少ないのではないでしょう。
今回は、45歳以上の中年男性に向けた科学的なトレーニングの最新エビデンスを紹介します。ポイントは「筋トレ・有酸素・複合トレの比較」と、「運動の順番による効果の違い」。特に時間に限りのある世代にとって、効率的なトレーニング選びはとても重要です。
Table of contents
- ◆ 運動のタイプ別に見る健康効果:筋トレ vs 有酸素 vs 複合トレ
- ◆ 運動の「効果の違い」は?──複合トレが全体的に◎
- ◆ 同じ日にやるなら順番はどっちが先?
- ◆ 中年男性におすすめのトレーニング戦略
- ◆ 参考文献
◆ 運動のタイプ別に見る健康効果:筋トレ vs 有酸素 vs 複合トレ
2025年に発表されたデブレ・マルコス大学のMengistuらの研究では、運動習慣のない中年男性を3グループに分け、8週間にわたって週3回のトレーニングを実施しました。
筋トレのみ:主に大筋群(脚・胸・腕など)を鍛える
筋トレ+有酸素(複合トレ):1セッション内で両方実施
調査されたのは、血糖値・血圧・インスリン抵抗性・ウエストとヒップの比率といった健康指標です。
◆ 運動の「効果の違い」は?──複合トレが全体的に◎
結果は非常に興味深いものでした。
● 血糖値・インスリン抵抗性の改善:筋トレ単独と複合トレで大きな改善が見られ、有酸素運動のみでは効果が限定的
● ウエスト・ヒップ比の改善:有酸素運動と複合トレで顕著に低下。筋トレ単独では変化が見られず
● 血圧の改善:収縮期血圧は複合トレがもっとも効果的。拡張期は全グループで若干の改善
つまり、筋トレは代謝系の改善に、有酸素は体脂肪や体型の改善に、それぞれ強みがあるということ。全体的に最もバランスの取れた効果があったのは、やはり「複合トレ」でした。
◆ 同じ日にやるなら順番はどっちが先?
「筋トレと有酸素、両方やるとしたら順番は?」という疑問については、カタール大学のメタアナリシスが参考になります。
複数の研究を比較した結果、次のような傾向が明らかになりました。
● 筋トレ→有酸素の順番の方が筋力アップに効果的
● 有酸素運動を先にやっても、心肺機能(最大酸素摂取量)には大きな影響なし
つまり、「筋力を伸ばしたいなら先に筋トレ、持久力だけが目的なら順番はあまり気にしなくてOK」ということです。
◆ 中年男性におすすめのトレーニング戦略
ここまでの内容をまとめると、次のようになります。
血糖・インスリンを改善したい:筋トレは必須
体脂肪を減らしたい・見た目を変えたい:有酸素運動を取り入れる
全体的な健康改善を目指すなら:筋トレ+有酸素の複合トレが最適解
筋力アップも狙うなら:筋トレ→有酸素の順番がベター
40代以降の世代は、時間も体力も有限だからこそ、「運動の種類と順番」にこだわることで、より効率的に成果を得られます。自己流ではなく、科学に裏打ちされた方法を知って、賢く健康を手に入れましょう。
◆ 参考文献
Mengistu FA, et al. Impact of aerobic, resistance, and combined training on cardiometabolic health-related indicators in inactive middle-aged men with excess body weight and obesity. Front Physiol. 2025 Feb 25:16:1519180.
Murlasits Z, et al. The physiological effects of concurrent strength and endurance training sequence: A systematic review and meta-analysis. J Sports Sci. 2018 Jun;36(11):1212-1219.