リハビリmemo

大学病院勤務・大学院リハビリテーション学所属の理学療法士による「研究と臨床をつなげるための記録」

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう

 

 前回はタンパク質の摂取量についてスポーツ栄養学の知見から考察してきました。

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

 

 今回はタンパク質を摂取する「タイミング」に目を向けてみましょう。タンパク質はいつでも摂取すれば良いというわけではありません。じつは筋肉を構成する筋タンパク質がもっとも合成されやすいゴールデンタイムがあるのです。

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筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

 

 筋肉を構成する筋タンパク質は、食事により摂取されたタンパク質(アミノ酸)の量に依存して作られます(合成されます)。この筋タンパク質を合成する量が分解する量を上回ることによって筋肉が増えます。

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筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを理解しよう

 

 しかし、ただタンパク質を摂取すれば良いというわけではありません。筋タンパク質の合成を促進させるためには、最適なタンパク質量を摂取しなければならないのです。では、1度の食事でどのくらいのタンパク質を摂取すれば、筋トレの効果を最大化することができるのでしょうか?

 

 この問いに現代のスポーツ栄養学はこう答えています。

 

 「最適なタンパク質摂取量は年齢、体重、トレーニング内容によって異なる」

 

 今回も近年のスポーツ栄養学の知見を参考にして、筋トレ効果を最大化するタンパク質摂取量について考察していきましょう。

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筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを理解しよう

 

 「科学により裏付けされたタンパク質の摂取方法(量や質、タイミング)を実践することで、日頃のトレーニングの効果を最大限に引き出すことが可能になる」

 

 現代のスポーツ栄養学では、効率的に筋肉を増やす方法についてこのように述べています。近年、アミノ酸安定同位体を用いる研究手法が確立され、スポーツ栄養学の分野からアスリートのパフォーマンス向上に関する知見が次々と報告されているのです。

 

 このような知見をもとに、今回は栄養摂取による筋肉を増やすメカニズムについて考察していきましょう。

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脳卒中後の効果的な立ち上がり動作トレーニングとは?

 

 脳卒中後の転倒事例の37%が立ち上がり動作時に生じていることが報告されています(Nyberg L, 1995)。脳卒中により麻痺した下肢の支持性が低下し、体重をかけることが難しくなり、立ち上がり動作時に非麻痺側へ体幹が逸脱してしまうため、転倒が起きやすくなると推察されています(Duclos C, 2008)。

 

 このような非対称性の立ち上がり動作に対する従来のリハビリテーションでは、セラピストの声掛けによる聴覚的フィードバックや、鏡を用いた視覚的フィードバックが行われてきました(Engardt M, 1994)。

 

 そして近年では、より簡易的でセルフトレーニングでも行える ”Modified sit-to-stand training”が注目されています。

 

 今回は、脳卒中後のModified sit-to-stand trainingの有用性とともに、その欠点を補う介入について考察していきましょう。

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人工股関節置換術・人工膝関節置換術の再置換率を知っておこう

 

 手術をするか、しないかの決断は、手術による利益とリスクのバランスによって判断されます。利益が大きくリスクが少なければ手術を選択しやすいですが、あまりにリスクが大きい場合には、手術を躊躇するでしょう。そのため、患者さんは手術の利益とリスクを知る権利があるのです。

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 日本で行われている人工関節置換術の件数は、人工股関節置換術(THA)、人工膝関節置換術(TKA)ともに年間6万件を超え、手術件数は年々増え続けています。また今後は、世界的に手術を受ける患者さんの低年齢化が進むことが予測されています(Kurtz SM, 2009)。

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Fig.1:日本人工関節学会の人工関節登録調査集計より筆者作成

 

 THA、TKAともに、手術による利益には関節機能の改善、疼痛の緩解QOLの向上などのエビデンスが示されています(Price AJ, 2010)。では、THA、TKAのリスクとは何でしょうか?

 

 それは「再置換術」です。

 

 人工関節は磨耗やゆるみが生じるため、手術から10年〜20年で人工関節を入れ替える手術(再置換術)を行わなければなりません。イギリスの大規模患者グループ “James Lind Alliance Priority Setting Partnership”は、THA、TKAの再置換術のタイミングが患者にとってもっとも重大な懸念の1つであるとしています(Bayliss LE, 2017)。

 

 THAやTKAの手術を決断するとき、誰でも再置換術のリスクを減らしたいと考えるでしょう。50歳代よりも60歳代で手術を行ったほうが再置換術の可能性が低いのであれば、なるべく手術のタイミングを遅らせて、再置換術を回避したいと判断するかもしれません。

 

 患者さんが手術による利益とリスクを判断するためにも、医療者は再置換術のリスクについて説明する義務があるのです。

 

 しかし、これまでの研究では、再置換術を受ける割合(再置換率)について、術後10年までの調査しかされてなく、それ以降の再置換率は不明のままでした(Kandala NB, 2015)。

 

 ここで参考になるのが、2017年2月の雑誌Lancetに掲載された「THA・TKA術後の再置換率に対する大規模なコホート研究」の報告です。

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