変形性股関節症のリハビリテーション
「手術をすべきか、しないべきか」 多くの患者さんが迷うところだと思います。 この判断をするためには、手術による利点とリスク、手術をしないことによる利点とリスクを正しく理解することが大切です。 変形性股関節症や変形性膝関節症の主な手術は、人工股…
手術をするか、しないかの決断は、手術による利益とリスクのバランスによって判断されます。利益が大きくリスクが少なければ手術を選択しやすいですが、あまりにリスクが大きい場合には、手術を躊躇するでしょう。そのため、患者さんは手術の利益とリスクを…
現代の生体力学研究は「股関節に生じる接触応力」が変形性股関節症を悪化させる要因であることを明らかにしています。股関節の局所に接触応力が高まることによって、股関節の滑膜に炎症が生じ、軟骨変性や骨棘が形成され、変形が増悪していきます。この接触…
変形性股関節症の保存療法の効果的な介入とは、股関節症を悪化させる影響度の高いリスクファクターを明らかにし、優先的に対応策を講じることです。 股関節に生じるメカニカルストレスの局所的な増加は、滑膜炎による軟骨変性や骨のリモデリングを発生させ…
変形性関節症の予防を生体力学の側面から研究しているボストン大学のFelsonは、変形性股関節症の悪化は、股関節に生じるメカニカルストレスのコントロールに失敗した結果であると言います(Felson DT, 2013)。 変形性股関節症を悪化させるリスク因子は、年…
変形性股関節症の保存療法をリスクマネージメントの観点から考えてみると、変形性股関節症を悪化させるリスク因子を明確化し、影響度の高い因子から防止策を講じることが効率的で効果的な保存療法につながります。 では、変形性股関節症を悪化させる影響度の…
先日、担当している変形性股関節症の患者さんから、人工股関節術(THA)後のマラソン復帰について相談を受けました。 最近では、このようなスポーツ復帰の相談を受ける機会が少しずつ増えているように思います。 厚生労働省の平成20年度国民健康・栄養調査結…
「やりたいことができない。」 これほど生活の質(Quality of life)を損ねるものはありません。 変形性股関節症、膝関節症の診断がなされたとき、多くの場合、医師よりスポーツを制限されます。 これは、学生さんにとっては、楽しい体育の時間がとても辛い…
変形性股関節症の保存療法というと、股関節周りの筋肉のコリを改善し、歩行や動作時の痛みを和らげることが目的の1つになります。 では、関節軟骨に対してはどのような影響があるのでしょうか? 股関節症の増悪の明らかな原因の1つは「関節軟骨の破壊」とい…
前回のブログでは、楽に歩くためには「股関節の伸展」が大事であるということをエネルギー効率の視点からお話しました。 今回は、筋肉の使い方の視点からお話します。 「でこぴん」をイメージしてみてください。 親指で人差し指を抑えて力をためます。 そし…
「自分の後ろ姿は、自分じゃ見えないんだなぁ」相田みつを 私の好きな言葉である。 歩くときに「踵から地面に着く」、「膝を高く上げる」ことは自分の目で見て確認することができる。 しかし、体の後ろで足がどのように蹴り出しているかは自分じゃ見えない。…
股関節の外転筋は、骨盤を安定させるための大切な筋肉である。 股関節症の場合、この外転筋の機能不全が生じ、結果として歩く際に骨盤が安定しなくなり、代償的に体が横にブレるようになる。 その際、一般的に多く行われるのがこの外転筋トレーニング。 横向…
日本で従来より多く行われている人工股関節置換術(THA)の手術は ・15〜20cmほどの皮膚の切開 ・歩行に重要な股関節の筋肉(外転筋)の切離 が必要なものである。 皮膚を大きく切開することは股関節症の多い女性にとって好ましくないことであり、早期の歩行…
変形性股関節症の発症には、遺伝的要因が関与していることが明らかにされている。 末期股関節症の遺伝度は27%(オッズ比1.86)と報告されている(Chitnavis J, 1997)。 これらの股関節症に特異的な原因遺伝子の同定には至っておらず、また、アジア人と欧米…
自分の下肢の痛みが股関節が原因なのか、脊椎が原因なのか、その両方なのか、悩むことが多いと思う。また、セラピストにおいても画像なしに判断するのはとても難しい。 今回、紹介する報告は、股関節疾患(主に変形性股関節症)の簡単な脊椎疾患との鑑別法に…
変形性股関節症(変股症)患者の歩容から変股症の重症度がわかるのだろうか? 変形性股関節症の患者によく見られる歩行パターンとして、矢状面上での立脚中期以降の股関節伸展不全が認められ、これは「motion discontinuity; MD」と言われている。(下図:Hu…
変形性股関節症の重症度を知る手段は、レントゲン写真以外にないのだろうか? 紹介する報告は、レントゲン写真による股関節症の重症度と股関節の可動域の関係について検証したものである。 reference) Predicting radiographic hip osteoarthritis from rang…
人工股関節術後(THA術後)における術前の体の使い方が歩行(過去ブログ)、階段昇降(過去ブログ)、立ち上がり動作などの荷重動作で残存することが数多く報告されている。 近年、日本で行われた調査では、THA術後、数年経過した後に非術側の膝関節症を併発…
野球のピッチャーが投球フォームを変えることが難しいように、一度、最適化された歩き方というのは変えるのが難しい。 人工股関節術後1年が経過しても術前の歩き方(筋活動パターン)が残存しやすいという報告がある(Foucher KC, 2007)。 今回の報告は、運…
前回のブログに続き、保存療法の効果についてのご紹介(この論文は産業医科大学 内田先生からご提供頂いたものです)。 今回の報告は、前期股関節症(大腿骨寛骨臼インピンジメント)患者に対する2年間の保存療法の効果について検証した報告である。 referen…
「手術か保存療法か」 この選択に悩む患者さんは多いと思われる。 しかしながら、手術を勧める報告は多いが、保存療法の報告は本当に少ない。 これでは、保存療法の適応が不透明であり、保存療法による効果(即時的、継続的)は、患者さんもセラピストも予測…
"inter-limb coordination"という言葉がある。 ヒトの歩行は2本の足を協調することによって、様々な環境にも対応できる能力をもつ。 しかし、これは裏を返せば、右足を怪我すれば、左足も何かしら影響を受けるということである。 末期股関節症では、歩行時に…
歩行時に股関節に加わる力は、床反力と筋力の合力になるが、筋力がその8割を占めている(Bergmann G, 2004)。 その筋力に寄与する筋は、腸腰筋、中殿筋、大殿筋でり、特に、近年では腸腰筋の寄与が注目されている(Lewis CL, 2007)。 それでは、歩行時の股…
股関節に加わる力学的負荷は、股関節症や関節唇損傷、関節不安定症の増悪因子となる(Mavcic B, 2004)。 この力学的負荷は、股関節の肢位や筋力低下により特異的に高まる(Bergmann G, 2004)。 そのため、セラピストは患者さんの病態に合わせて、力学的負…
人工股関節全置換術(THA)術後、数年経っても回復しにくい筋は、腸腰筋と内転筋である(Rasch A, 2009)。 腸腰筋は歩行時の下肢の振り出しに足関節底屈筋と共同して働いており、腸腰筋と足関節底屈筋はトレードオフの関係にある(Neptune, 2004)。 健常者…
ヒトは、筋肉や関節を損傷した場合や運動麻痺が生じた場合、無意識に体の使い方を変えることで補うシステム(代償運動)が働きます。 この代償的な体の使い方には、下記の2通りに分かれます。 ①動作を変えずに他の筋を過剰に働かせることで代償するパターン …