変形性股関節症の重症度を知る手段は、レントゲン写真以外にないのだろうか?
紹介する報告は、レントゲン写真による股関節症の重症度と股関節の可動域の関係について検証したものである。
reference)
Predicting radiographic hip osteoarthritis from range of movement.
Rheumatology(Oxford), 2001
対象は、変形性股関節症患者36名。
レントゲンでの股関節症の重症度は、Kellgrem and Lawrence分類とMinimal joint spaceを用い、重度は関節スペース1.5mm以内、軽度〜中等度は関節スペース2mm以上とした。
股関節可動域は、検者内信頼係数が高い(再現性が高い)屈曲、外旋、内旋を測定した。
その結果、
股関節症の重症度と股関節内旋の可動域が高い関係性を認めた。
また、股関節の内旋28度を下回ると重度の股関節症であることを示した。
とのこと。
この報告は、股関節の動きからレントゲンの関節変形の重症度を推察する上で重要な知見である。
ぜひ一度、椅子に座り、股関節の内旋角度を計り、ご自身の角度を把握してほしい。
28度を下回ると高い確率で重度の股関節変形を有することになる。
しかし、自分で角度を図るのは難しいので、まずは鏡の前で家族に上図のように股関節を内旋してもらい、現在の角度を携帯の写真にでも撮っておくと良いと思う。
そして、定期的に写真をとり、明らかに角度が減少したときは、股関節変形が進んでいる可能性が疑われる(可動域制限の要因は筋など他にもあるので、あくまで目安と考えるほうが良い)。
特に、保存療法のみを受けている方は、股関節変形の進行を見逃すリスクがあるため、この簡易的な検査を行うことはとても有用と思われる。
股関節リハビリシリーズ
股関節リハビリ①:歩行時の振り出しで上手に腸腰筋をつかうためのヒント
股関節リハビリ②:力学的負荷から見た股関節運動の注意点
股関節リハビリ③:歩行時の股関節伸展角度が出にくい理由
股関節リハビリ④:股関節症術後に見られる階段昇降の足の使い方
股関節リハビリ⑤:手術か保存療法か
股関節リハビリ⑥:手術か保存療法か(その2)
股関節リハビリ⑦:人工股関節術後に残りやすい歩き方のポイント
股関節リハビリ⑧:人工股関節術後に残りやすい立ち上がり動作のポイント
股関節リハビリ⑨:自分で簡単に変形性股関節症の程度を確認できる方法
股関節リハビリ⑩:歩容から見る変形性股関節症の重症度
股関節リハビリ⑪:変形性股関節症の簡単な脊椎疾患との鑑別法
股関節リハビリ⑫:変形性股関節症の遺伝子研究の進展
股関節リハビリ⑬:最新手術「筋肉温存型人工股関節置換術」まとめ
股関節リハビリ⑭:歩きに適した外転筋トレーニングの方法
股関節リハビリ⑮:見落としがちな歩き方のポイント
股関節リハビリ⑯:見落としがちな歩き方のポイント(その2)
股関節リハビリ⑰:変形性股関節症の保存療法と関節軟骨
股関節リハビリ⑱:変形性股関節症とランニング(まとめ)
股関節リハビリ⑲:人工股関節置換術とスポーツ
「説明がわからない」「これが知りたい」などのご意見はTwitterまでご気軽にご連絡ください。