自分の下肢の痛みが股関節が原因なのか、脊椎が原因なのか、その両方なのか、悩むことが多いと思う。また、セラピストにおいても画像なしに判断するのはとても難しい。
今回、紹介する報告は、股関節疾患(主に変形性股関節症)の簡単な脊椎疾患との鑑別法について検証したものである。
reference)
Differential diagnosis of hip disease versus spine disease.
Clin Orthop Relat Res, 2004
対象は、下肢痛のある患者97名。
下記の症状10項目・徴候14項目について聴取、診察した。
症状:①跛行、②動作時痛、③睡眠障害、④膝折れ、⑤腰痛、⑥下肢痛、⑦鼡径部痛、⑧感覚異常、⑨疼痛による歩行制限、⑩歩行補助具の必要性
徴候:①股関節内旋制限、②股関節内旋時鼡径部痛、③疼痛性跛行、④体幹の傾き、⑤大腿神経伸張テスト、⑥膝蓋腱反射の消失、⑦L2〜L4レベルの知覚低下、⑧L2〜L4レベルの筋力低下、⑨SLRテスト、⑩股関節屈曲拘縮、⑪脊椎の可動性制限、⑫患側の動脈拍動低下、⑬脚短縮、⑭腹部の腫瘤または圧痛
また、股関節レントゲンにて関節裂隙の狭小化、骨棘形成、軟骨下骨の変形を認めるものを股関節疾患ありとし、MRIやレントゲンにて下肢痛の部位に一致した脊柱管狭窄や神経を圧迫する椎間板の存在、腰椎の変形を認めるものを脊椎疾患ありとした。
症状10項目と徴候14項目と画像診断の結果における相関関係について統計学的分析を行った。
その結果、
97名のうちいずれの疾患でもない2名を除く95名について、画像診断の結果では、
・43例が股関節疾患のみ
・18例が脊椎疾患のみ
・34例が両方の疾患
であった。
また、ロジスティック回帰分析の結果、股関節疾患は、脊椎疾患に比べて、
①跛行
②鼡径部痛
③股関節内旋制限
を認めやすかった。
とのこと。
まず、鏡の前で歩き、跛行(特に骨盤の傾き)を確認しよう。
さらに、よく足の付け根(鼡径部)をさすったり、痛みを感じているか確認する。
最後に、座って、股関節を内旋させて反対側と比べて制限があるか確認する(過去ブログ参照)。
この3つが当てはまる場合は、脊椎疾患(脊柱管狭窄症やヘルニア)ではなく、股関節疾患(主に変形性股関節症)の可能性が高い。
股関節リハビリシリーズ
股関節リハビリ①:歩行時の振り出しで上手に腸腰筋をつかうためのヒント
股関節リハビリ②:力学的負荷から見た股関節運動の注意点
股関節リハビリ③:歩行時の股関節伸展角度が出にくい理由
股関節リハビリ④:股関節症術後に見られる階段昇降の足の使い方
股関節リハビリ⑤:手術か保存療法か
股関節リハビリ⑥:手術か保存療法か(その2)
股関節リハビリ⑦:人工股関節術後に残りやすい歩き方のポイント
股関節リハビリ⑧:人工股関節術後に残りやすい立ち上がり動作のポイント
股関節リハビリ⑨:自分で簡単に変形性股関節症の程度を確認できる方法
股関節リハビリ⑩:歩容から見る変形性股関節症の重症度
股関節リハビリ⑪:変形性股関節症の簡単な脊椎疾患との鑑別法
股関節リハビリ⑫:変形性股関節症の遺伝子研究の進展
股関節リハビリ⑬:最新手術「筋肉温存型人工股関節置換術」まとめ
股関節リハビリ⑭:歩きに適した外転筋トレーニングの方法
股関節リハビリ⑮:見落としがちな歩き方のポイント
股関節リハビリ⑯:見落としがちな歩き方のポイント(その2)
股関節リハビリ⑰:変形性股関節症の保存療法と関節軟骨
股関節リハビリ⑱:変形性股関節症とランニング(まとめ)
股関節リハビリ⑲:人工股関節置換術とスポーツ
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