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リハビリmemo

大学病院勤務・大学院リハビリテーション学所属の理学療法士による「研究と臨床をつなげるための記録」

ロンベルグ試験から立位姿勢制御のしくみを理解しよう

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 立位姿勢は、視覚、前庭感覚、固有感覚の3つの感覚により制御されている。

・視覚は、直立姿勢をジャッジするための動きと手がかりを与えてくれる。

・前庭感覚は、頭部の動きと重力に関する頭位についての情報を与えてくれる。

・固有感覚は、荷重情報、身体部位の相対的な位置情報を与えてくれる。 

 

 これらの3つの感覚機能が相互に補完し合うことによって、私たちは暗闇の中でも(視覚がなくても)、滑りやすい床面でも(固有感覚がなくても)安定して立位姿勢を保つことができるのである。

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 そして、これらの3つの感覚を統合するのが小脳である。特に脊髄小脳系の小脳虫部・傍部には視覚、前庭、固有感覚の入力があり、出力として体幹や近位筋の協調性のコントロールを行っている。そのため、小脳虫部・傍部の損傷では小脳性失調により立位姿勢が不安定になる。

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 これらのメカニズムをもとにロンベルグ試験を考えてみよう。ロンベルグ試験は2つの段階にて評価をする。

 

第1段階

 被験者は手を体の側面に添え、開眼して足をそろえて立つ。

第2段階

 被験者が目を閉じ、そのまま実施者は一分間観察する。

 

 ロンベルグ試験はこの2段階の条件で倒れないか、倒れるかで評価を行う。ロンベルグ徴候が陽性というのは以下の2つの要件を満たす場合に判断する。

①被験者は開眼していれば倒れない。

②被験者は閉眼すると倒れる。

 閉眼するというのは視覚による固有感覚の代償をなくすことを意味する。そのため、陽性というのは下肢の固有感覚障害を示す。ロンベルグ試験とは、小脳機能を見るのではなく、固有感覚障害を判断するための試験なのである。

 

 しかし、実は、ロンベルグ試験はその評価様式から立位姿勢制御を担う感覚機能と小脳機能を評価することができる。そこでロンベルグ試験を立位姿勢制御のメカニズムから考察するために簡単なマトリクスを作成してみた。

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  問題なしを青問題ありを赤にて分類している。

  まずは、ロンベルグ試験の第1段階である開眼立位を見てみよう。開眼して倒れなければ問題ないというのは理解しやすい。しかし、開眼立位で倒れないというのは、固有感覚の問題を視覚で代償している可能性がある。そのため、開眼立位で倒れなくても問題がないとは断言できない。

  次に、開眼していても倒れてしまう場合は、感覚入力の統合する部位である小脳機能に問題があることがわかる。特に脊髄小脳系で感覚入力が行われる小脳虫部、傍部の損傷による体幹および下肢の小脳性失調が疑われる。また、前庭小脳系の損傷でも開眼立位で倒れてしまう。この場合は迷路性失調が疑われる。小脳性失調と迷路性失調の鑑別は、小脳性失調が多方向にふらつくのに対して、迷路性失調は一方向にふらつくことから判別が可能である。

  つまり、第1段階において、開眼立位で倒れてしまえば小脳・前庭機能の問題が疑われ、倒れなければ小脳・前庭機能は問題ないが固有感覚障害の有無についてはわからないという判断ができる。

 

 第2段階の評価では、閉眼させることで視覚による代償を防ぐ。閉眼立位で倒れなければもちろん正常であり、固有感覚障害を否定できる。また、視覚、固有感覚、前庭の3つの感覚機能、これらの感覚を統合する小脳機能の問題もないことが確定する。

  しかし、ここで倒れる場合は、固有感覚障害が疑われ、本来のロンベルグ徴候が陽性と判断される。

 

 このように、ロンベルグ試験は立位姿勢制御のメカニズムを知っていることで、簡易的に立位姿勢制御における感覚系およひ小脳機能の評価を行うことが可能なのである。

 

 

姿勢制御のしくみとリハビリテーション

シリーズ①:小脳の障害像と損傷部位の関係を理解しよう

シリーズ②:ロンベルグ試験から立位姿勢制御のしくみを理解しよう

シリーズ③:ヒトの皮質網様体路と姿勢制御 ①

シリーズ④:ヒトの皮質網様体路と姿勢制御 ② 

シリーズ⑤:ヒトの大脳皮質と姿勢制御 ①

シリーズ⑥:ヒトの大脳皮質と姿勢制御 ②

 

脳のしくみとリハビリテーション

シリーズ①:小脳の障害像と損傷部位の関係を理解しよう

シリーズ②:ロンベルグ試験から立位姿勢制御のしくみを理解しよう

シリーズ③:脳卒中後の回復メカニズムの新たな発見をキャッチアップしよう

シリーズ④:ヒトの皮質網様体路と姿勢制御 ①

シリーズ⑤:ヒトの皮質網様体路と姿勢制御 ② 

シリーズ⑥:ヒトの皮質網様体路と歩行制御 

シリーズ⑦:ヒトの大脳皮質と姿勢制御 ①

シリーズ⑧:ヒトの大脳皮質と姿勢制御 ②

 

 

 本エントリは、Neuroscience: Fundamentals for Rehabilitation, 4eを参照して作成しています。Nueroscienceは洋書ですが、豊富なイラストと平易な英語で記載されており、日本語の教科書にはないリハビリテーションの視点で書かれた神経学の教科書になります。この本を通読すれば、中枢神経系の英語論文も読めるようになるでしょう。基礎を固めるのには最適な教科書です。

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Neuroscience: Fundamentals for Rehabilitation

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Neuroscience: Fundamentals for Rehabilitation, 4e

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