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リハビリmemo

大学病院勤務、大学院リハビリテーション学所属の理学療法士による、研究と臨床をつなげるための記録

脳卒中の急性期でも365日リハビリしよう

脳卒中のリハビリテーション
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脳卒中後のリハビリは、できるだけ早くから行ったほうが良いのでしょうか?」

 

 この問いに、現代のリハビリテーション医学はこう答えています。

 

「24時間以内の超早期リハビリに明確な効果はありません」

脳卒中の超早期リハビリ論争 AVERTⅢの全容と批判

 

「でも、1回のリハビリの量を少なくして、頻回に行うと効果的であることがわかっています」

脳卒中の超早期リハビリ論争 そして新たな展開へ

 

 そして最近では、このような質問も聞かれるようになりました。

 

脳卒中の急性期リハビリでも回復期リハビリのように365日、毎日リハビリを行ったほうが良いのでは?」

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◆ 急性期では土日のリハビリがお休みになる

 

 日本では、脳卒中に対する急性期リハビリテーションが週にどのくらい行われているのでしょうか?

 

 2010年に発表された日本における脳卒中の急性期リハビリテーションの現状を示した報告では、金曜日に入院するとリハビリの介入が遅れることが明らかになっています。これは一般的に土日がお休みになるためで、365日リハビリテーションを行えない急性期病院が多いことを示唆しています(Matsui H, 2010)。

 

 日本の25の急性期病院を対象に、急性期リハビリテーションの実施体制を調査した報告では、週7日間、毎日リハビリを行う体制が整備されている病院は1病院(4.2%)のみで、土日が完全に休みになる病院は5病院(20.8%)であることが示されています(村山幸照, 2011)。

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Fig.1:村山幸照, 2011より引用改変

 

 これらの知見から、多くの急性期病院では、週5日もしくは週6日の診療体制であることが推測されます。金曜に入院するとリハビリの開始が遅れるという結果も残念なことですね。このような現状の理由として、村山らはセラピストのマンパワー不足、人件費に対する費用対効果の未整備(診療報酬の加算)、週7日体制による改善効果や有害事象の有無が不明確であることを挙げています。

 

 

◆ 急性期からの毎日のリハビリはやっぱり効果的

 

 では、脳卒中に対する365日、週7日の急性期リハビリテーションは本当に効果的なのでしょうか?

 

 この問いに答えたのが慈恵医科大学のAbo氏のグループです。2016年、グループのKinoshitaらは、日本リハビリテーション・データベースのデータをもとに、脳卒中患者3,072名を対象に急性期から毎日、リハビリテーションを行う効果について検証しました。

 

 被検者は、週7日、毎日リハビリを行うグループ(7DWR:1,075名)と週5日または6日リハビリ行うグループ(Non-7DWR:1,997名)に分けられました。

 

 両グループともに入院翌日よりリハビリを開始し、理学療法作業療法、言語聴覚療法を合わせて1日2〜4単位を実施しています。

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Fig.2:患者特性(Kinoshita S, 2016より引用改変)

 

 リハビリの効果の主要アウトカムは、退院時のmRS(modified Rankin Scale score)として、日常生活の自立を示すmRS 0〜2を良好な転帰としています。

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Fig.3:日本版mRS(脳卒中ガイドライン2009より引用改変)

 

 その結果、退院時の良好な転帰の割合は、7DWRがNon-7DWRに比べて高く、オッズ比は1.6を示しました。また自宅退院の割合も有意に高い結果となりました。さらに死亡数には有意な差は認められませんでした。

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Fig.4:Kinoshita S, 2016より引用改変

 

 この結果から、脳卒中の急性期リハビリを週7日間、毎日行うことで良好な機能回復に寄与することがわりました。また、毎日リハビリを行っても有害事象(死亡数)が増加しないことも明らかになったのです。

 

 Kinoshitaらは、脳卒中に対する急性期リハビリにおいて、土日といった週末の休みによる臥床(離床しないこと)は無視できないといいます。脳卒中発症後の臥床期間が3ヶ月後の機能改善のアウトカムを低下させるという報告(Askim T, 2014)もあり、今回の結果をからも急性期からの継続したリハビリの重要性を唱えています。

 

 海外においても、亜急性期の脳卒中に対する週7日のリハビリテーションの効果を検証した報告では、身体機能の回復とともに入院期間の短縮が示されています(English C, 2015)。さらに、セラピストでなくとも看護師により週末の離床を行うことが急性脳卒中患者の死亡率の低下に寄与することも報告されています(Bray BD, 2014)。

 

 このような背景からも、急性期からの週7日のリハビリテーションは、有害事象もなく、むしろ脳卒中患者の身体機能の回復につながることが期待できるとKinoshitaらは結論づけています。



 脳卒中の超早期リハビリテーションの介入効果を検証している大規模研究(AVERT)では、急性期リハビリの効果的な介入は「低量頻回」で行うことを推奨しています(Bernhardt J, 2016)。

 

 Kinoshitaらの報告は、脳卒中の急性期リハビリテーションの頻度において「週7日の実施が推奨される」ことを初めて示した知見となります。この知見をAVERTの報告と合わせると「脳卒中の急性期リハビリは、低量頻回な介入を毎日、行うべきである」ということになるでしょう。

 

 今回の報告は、急性期リハビリテーションにおける356日診療の有効性を示したものであり、診療報酬の改定の判断材料になるかもしれません。今後の診療報酬の改定では、回復期リハビリの休日リハビリテーション提供体制加算のようなインセンティブが急性期でも付加されるかもしれませんね。

 

 

脳卒中の急性期リハビリテーション

脳卒中の超早期リハビリテーション論争 まとめ①

脳卒中の超早期リハビリテーション論争 まとめ②

脳卒中の超早期リハビリテーション論争 AVERTⅢの全容と批判

脳卒中の超早期リハビリテーション論争 そして新たな展開へ

脳卒中の急性期でも365日リハビリしよう

 

References

Matsui H, et al. An exploration of the association between very early rehabilitation and outcome for the patients with acute ischaemic stroke in Japan: a nationwide retrospective cohort survey. BMC Health Serv Res. 2010 Jul 20;10:213.

村山幸照. 平成20年度診療報酬改定による急性期病院でのリハビリテーションへの影響と現状. 作業療法 30, 717~726, 2011

Kinoshita S, et al. Association Between 7 Days Per Week Rehabilitation and Functional Recovery of Patients With Acute Stroke: A Retrospective Cohort Study Based on Japan Rehabilitation Database. Arch Phys Med Rehabil. 2016 Dec 10. pii: S0003-9993(16)31294-1. 

Askim T, et al. Physical activity early after stroke and its association to functional outcome 3 months later. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2014 May-Jun;23(5):e305-12.

English C, et al. Circuit class therapy or seven-day week therapy for increasing rehabilitation intensity of therapy after stroke (CIRCIT): a randomized controlled trial. Int J Stroke. 2015 Jun;10(4):594-602.

Bray BD, et al. Associations between stroke mortality and weekend working by stroke specialist physicians and registered nurses: prospective multicentre cohort study. PLoS Med. 2014 Aug 19;11(8):e1001705. 

Bernhardt J, et al. Prespecified dose-response analysis for A Very Early Rehabilitation Trial (AVERT). Neurology. 2016 Jun 7;86(23):2138-45.