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stroke, 2010
脳卒中患者さんにおける立ち上がり動作の非対称性は、荷重の感覚と筋力、どちらが影響しているか検証した報告。
対処は、慢性脳卒中患者19名と年齢・体型をマッチングさせた健常者15名。
実験の目的は、
①脳卒中患者と健常者の実際の荷重配分と荷重感覚との誤差を検証すること
②実際の荷重配分と荷重感覚・膝伸展筋力の関係性の検証すること
の2点である。
被験者は、立ち上がり課題を行い、下記のアウトカムを測定した。
・実際の荷重配分:フォースプレートによる床反力成分
・荷重感覚:視覚的アナログスケール(Visual Analog Scale: VAS)
・膝伸展筋力
その結果、
脳卒中患者全員が実際の荷重配分に有意な差が認めれた(非対称性を有していた)。さらに、脳卒中患者は、健常者と比べ、実際の荷重配分と荷重感覚の誤差においても有意な差が認められた。また、実際の荷重配分(非対称性)は、膝伸展筋力と有意な相関関係が見られ、荷重感覚には見られなかった。
とのこと。
まとめると、立ち上がり動作時に非対称性を示す脳卒中患者さんは、多くの場合、その非対称性を認識できていない可能性があります。また、動作の非対称性は、感覚的な問題よりも下肢の筋力が影響していることが示唆されています。
感覚よりも筋力というのは、対立的な意見もあるように思います。脳卒中患者さんに対する筋力トレーニングの効果(参照)は認められていますが、その限界も認められています(参照)。つまり、筋力トレーニングで一定の回復は期待できるが、その後は感覚の要素を取り入れたトレーニングが有効であるということです。
やはり、脳卒中リハビリにおいて、筋力と感覚の要素を患者さんの状態に合わせて組み入れたものが良いプログラムと思われます。
脳卒中リハビリシリーズ
脳卒中リハビリ①:バランス感覚には、足底感覚へのアプローチ!
脳卒中リハビリ②:自転車トレーニングでは、速度一定でお願いします。
脳卒中リハビリ③:脳卒中早期からFES自転車運動で体幹機能を高めよう!
脳卒中リハビリ④:FES自転車運動は姿勢制御に効果的
脳卒中リハビリ⑤:自転車トレーニングは、ただ漕いでるだけじゃダメ。
脳卒中リハビリ⑥:自転車で突っ張る筋肉をほぐせるかも。
脳卒中リハビリ⑦:歩行スピードを高めたいなら、足関節背屈筋力を高めよう。
脳卒中リハビリ⑧:歩行距離をのばすには、やっぱり足関節背屈筋力?
脳卒中リハビリ⑨:上手に歩くためには、エンジンとブレーキ、どっちが大事?
脳卒中リハビリ⑩:歩行立脚期の機能改善には、この装具で。
脳卒中リハビリ⑪:遊脚期の足関節背屈を増強させる新しいトレーニング
脳卒中リハビリ⑫:視覚的フィードバックで知らないうちに歩行が変わる?
脳卒中リハビリ⑬:フィードバック療法で麻痺側の足を使えるようにしよう。
脳卒中リハビリ⑭:非麻痺側下肢も見逃すな。
脳卒中リハビリ⑮:ただ自転車を漕ぐだけではダメな根拠
脳卒中リハビリ⑯:片麻痺にもインソールは有効。
脳卒中リハビリ⑰:中殿筋への機能的電気刺激療法は、歩行の対称性を改善させます
脳卒中リハビリ⑱:効果的な立ち上がり練習の方法
脳卒中リハビリ⑲:立ち上がり動作と荷重感覚
脳卒中リハビリ⑳:筋力トレーニングだけでは効果なし
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