reference)
Pedaling alters the excitability and modulation of vastus medialis H-reflexes after stroke.
Clinical neurophysiology, 2011
脳卒中後の麻痺側大腿四頭筋(内側広筋)に対する、自転車トレーニングの神経生理学的な効果を調査した報告。
慢性脳卒中患者13名、健常者13名を対象に、ペダリングの11のポジションにおける内側広筋(VM)のH波、筋電図を計測した。
その結果、VMのH波の振幅は、脳卒中患者で異常な上昇を示し、筋電図所見との関係性が弱かった。自転車トレーニング後、VMのH波の振幅は減少し、筋電図所見との関係性が改善された。このことから、自転車トレーニングによって、Ⅰa線維の興奮性変化が生じた可能性が示唆された。
という話。
H波は、脊髄運動ニューロンの興奮レベルを評価できる検査である。既に自転車トレーニングは、麻痺側ヒラメ筋のH波を抑制する、つまり、脊髄運動ニューロンの興奮性を抑制し、筋緊張を軽減することが報告されている(参照)。これは、相反性抑制によるシナプス前抑制が生じた結果であると推測されている。
今回の報告から、自転車トレーニングは、ヒラメ筋(足部の剛性)のみでなく、大腿四頭筋(膝の剛性)の筋緊張を軽減させる可能性があり、麻痺側下肢の筋緊張を全体的にコーディネートする目的として、用いることが出来るかもしれない。また、自転車トレーニングには、このような神経生理学的な機序があって、歩行能力の向上に寄与することをセラピストは知っておく必要があると思う。
足関節のストレッチや歩行練習(stiff-knee gaitやback kneeに対する)は、自転車トレーニングで下肢を「ほぐして」から行ってもいいかも。
脳卒中リハビリシリーズ
脳卒中リハビリ①:バランス感覚には、足底感覚へのアプローチ!
脳卒中リハビリ②:自転車トレーニングでは、速度一定でお願いします。
脳卒中リハビリ③:脳卒中早期からFES自転車運動で体幹機能を高めよう!
脳卒中リハビリ④:FES自転車運動は姿勢制御に効果的
脳卒中リハビリ⑤:自転車トレーニングは、ただ漕いでるだけじゃダメ。
脳卒中リハビリ⑥:自転車で突っ張る筋肉をほぐせるかも。
脳卒中リハビリ⑦:歩行スピードを高めたいなら、足関節背屈筋力を高めよう。
脳卒中リハビリ⑧:歩行距離をのばすには、やっぱり足関節背屈筋力?
脳卒中リハビリ⑨:上手に歩くためには、エンジンとブレーキ、どっちが大事?
脳卒中リハビリ⑩:歩行立脚期の機能改善には、この装具で。
脳卒中リハビリ⑪:遊脚期の足関節背屈を増強させる新しいトレーニング
脳卒中リハビリ⑫:視覚的フィードバックで知らないうちに歩行が変わる?
脳卒中リハビリ⑬:フィードバック療法で麻痺側の足を使えるようにしよう。
脳卒中リハビリ⑭:非麻痺側下肢も見逃すな。
脳卒中リハビリ⑮:ただ自転車を漕ぐだけではダメな根拠
脳卒中リハビリ⑯:片麻痺にもインソールは有効。
脳卒中リハビリ⑰:中殿筋への機能的電気刺激療法は、歩行の対称性を改善させます
脳卒中リハビリ⑱:効果的な立ち上がり練習の方法
脳卒中リハビリ⑲:立ち上がり動作と荷重感覚
脳卒中リハビリ⑳:筋力トレーニングだけでは効果なし
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