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Archives of physical medicine and rehabilitation, 2012
脳卒中後の歩行の耐久性と足関節の筋力について検討した報告。
足関節底屈筋に痙性麻痺を有する慢性脳卒中患者62名を対象とし、麻痺側の足関節背屈筋力・底屈筋力と歩行耐久性(6分間歩行テスト)を計測した。
その結果、歩行耐久性との相関関係は、足関節背屈筋力(r=.793, p=.000)、底屈筋力(r=.349, p=.005)であり、背屈筋力と強い相関を認めた。これより、痙性麻痺を有する脳卒中患者の歩行耐久性を向上させるには、麻痺側の足関節背屈筋力の筋力トレーニングが有効であるということが示唆された。
という話。
前回のブログと同じような結果であり、最近、脳卒中後の歩行能力の改善に足関節背屈筋力が寄与する報告が目に留まる。
今回の報告は、足関節底屈筋に痙性麻痺を有する脳卒中患者が対象であり、麻痺側下肢の遊脚期、立脚初期の問題が容易に想定できる。片麻痺歩行の歩行エネルギーコストは、正常歩行比の125%と報告されており(参照1)、このエネルギーコストは、麻痺側pre-swingに生じる運動エネルギーの低下による非麻痺側load responseの位置エネルギー変換効率の低下が要因であると推測される(参照2)。そこで、少し持論を述べてみたい。麻痺側pre-swingの運動エネルギーを高めるためには、forefoot rockerを有効に働かせることが重要と思われる。そのためには、麻痺側initial contactでのheel rocker function、load responseでの足関節背屈筋による遠心性収縮に伴う脛骨の前方移動、これらの機能がその後のrocker functionを誘導し、pre-swingでの運動エネルギー発生につながると考える。そうなると、足関節背屈筋力の増強が歩行耐久性の改善に寄与する可能性も許容できるだろう。
こにように考えると、背屈筋力のトレーニングは、求心性収縮のみでなく、遠心性収縮の運動様式も取り入れてみる価値があるかもしれない。
また、歩行能力改善と筋力についての過去の報告では、股関節の屈曲筋力、足関節の底屈筋力などの関与が散見される。これらの報告との違いについて、著者は筋力の測定方法、対象者の重症度の相違が要因となったと述べている。
やはり、足関節のみならず、患者さんの重症度、歩容に合わせた治療戦略が必要なのだろう。
脳卒中リハビリシリーズ
脳卒中リハビリ①:バランス感覚には、足底感覚へのアプローチ!
脳卒中リハビリ②:自転車トレーニングでは、速度一定でお願いします。
脳卒中リハビリ③:脳卒中早期からFES自転車運動で体幹機能を高めよう!
脳卒中リハビリ④:FES自転車運動は姿勢制御に効果的
脳卒中リハビリ⑤:自転車トレーニングは、ただ漕いでるだけじゃダメ。
脳卒中リハビリ⑥:自転車で突っ張る筋肉をほぐせるかも。
脳卒中リハビリ⑦:歩行スピードを高めたいなら、足関節背屈筋力を高めよう。
脳卒中リハビリ⑧:歩行距離をのばすには、やっぱり足関節背屈筋力?
脳卒中リハビリ⑨:上手に歩くためには、エンジンとブレーキ、どっちが大事?
脳卒中リハビリ⑩:歩行立脚期の機能改善には、この装具で。
脳卒中リハビリ⑪:遊脚期の足関節背屈を増強させる新しいトレーニング
脳卒中リハビリ⑫:視覚的フィードバックで知らないうちに歩行が変わる?
脳卒中リハビリ⑬:フィードバック療法で麻痺側の足を使えるようにしよう。
脳卒中リハビリ⑭:非麻痺側下肢も見逃すな。
脳卒中リハビリ⑮:ただ自転車を漕ぐだけではダメな根拠
脳卒中リハビリ⑯:片麻痺にもインソールは有効。
脳卒中リハビリ⑰:中殿筋への機能的電気刺激療法は、歩行の対称性を改善させます
脳卒中リハビリ⑱:効果的な立ち上がり練習の方法
脳卒中リハビリ⑲:立ち上がり動作と荷重感覚
脳卒中リハビリ⑳:筋力トレーニングだけでは効果なし
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