今年も1ヶ月が過ぎ、もう2月ですね。
正月に帰省された方も多くいらっしゃると思いますが、その際にご両親、特に母親がひと回り小さくなったな、と思われたことはなかったですか?
一般的に年齢をかさねると身長が低下することが知られています。
今日は、ねこ背も大きく関係する加齢による身長の低下についてお話します。
年を重ねると身長が低下する。
このことは何となくわかっていますが、加齢によりどの程度、身長は低下するのでしょうか?
日本人を対象にした大規模調査(通称;広島コホート研究、Masunari N, 2007)では、加齢とともに男女とも身長は低下し、その程度は男性よりも女性に大きいことがわかっています。
さらに、4cm以上の身長低下は下記のように報告されています。
70歳代:男性の11%、女性の33%
80歳以上:男性の37%、女性の73%
想像以上に加齢によって多くの人の身長が低下するんですよね。
特に80歳以上の女性の7割に4cm以上の身長低下が認められることには驚きました。
それでは、なぜ加齢により身長は低下するのでしょうか?
よく知られているのは骨粗鬆症による脊椎骨折です。また、骨折をしていなくても椎間板が縮こまったり、ねこ背のような姿勢の変化が身長低下の原因になることがわかってきました(Pfirrmann CW, 2006)。
このような身長の低下が近年、骨密度に代わる新たな骨粗鬆症のリスク因子になることが報告されているとともに、骨折のしやすさや死亡率との関連まで研究が進められているのです(Moayyeri A, 2008)。
では、どのくらい身長が低下すると骨折のリスクや死亡率が増えてしまうのでしょうか?その答えをHillier氏の報告から確認しましょう。
reference)
Height Loss in Older Women: Risk of Hip Fracture and Mortality Independent of Vertebral Fractures.
American Society for Bone and Mineral Research, 2012
この研究の目的は、身長の低下が股関節の骨折、脊椎以外の骨折、死亡率のリスクを予測できるかどうか調査することである。
対象は65歳以上の高齢女性3124名とし、身長変化、股関節などの骨折、死亡状況を4ヶ月ごと15年間調査した。
その結果、5cm以上の身長低下がある場合、股関節などの骨折、死亡率が50%増加することが示された。
とのこと。
結構、衝撃的な結果ですね。
しかし、本研究は身長の変化を意識することで骨粗鬆症の進行とともに骨折のリスクも把握できることを意味しており、日頃から身長をチェックする重要性を示唆しています。
体重の変化だけでなく、これからは身長の変化もチェックするのが良いのかもしれません。
綺麗な姿勢を維持して、骨粗鬆症や転倒に縁のない生活を送りたいものですね。
ねこ背シリーズ
ねこ背シリーズ①:ねこ背になると歩き方も変わる?
ねこ背シリーズ②:ねこ背になると生活がつまらなくなる?
ねこ背シリーズ③:「背が低くなったんじゃない?」と言われた要注意!
ねこ背シリーズ④:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜大規模研究による検証〜
ねこ背シリーズ⑤:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜本当の犯人は?〜
ねこ背シリーズ⑥:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜腰がまっすぐになると…〜
ねこ背シリーズ⑦:自分でねこ背を計る方法(前編:科学的根拠の確認)
ねこ背シリーズ⑧:自分でねこ背を計る方法(後編:C7PL2.0をやってみよう!)
ねこ背シリーズ⑨:ねこ背と骨盤の代償運動を理解しよう
ねこ背シリーズ⑩:なぜ、ねこ背になるのか?
ねこ背シリーズ⑪:ねこ背の原因は背筋の霜降り化?
ねこ背シリーズ⑫:ハイヒールを履くとねこ背になる?
ねこ背シリーズ⑬:ねこ背と柔軟性 〜腰椎の柔らかさが大事〜
ねこ背シリーズ⑭:ねこ背になると肩が上がらなくなる?
ねこ背シリーズ⑮:座る姿勢がねこ背の原因になる?
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