さて、前回はねこ背による歩き方への影響についてHirose氏の論文を紹介させていただきました。
ねこ背は歩幅を減少させ、歩くスピードを遅くすることに関与していることが示唆されました。また、ねこ背にならなければ、年を重ねても綺麗な姿勢で歩けるという可能性も同時に示されましたね。
今回は、ねこ背が日常生活動作(Activities of daily living: ADL)や生活の質(Quolity of life: QOL)に与える影響についてTakahashi氏の論文を参考に考えていきましょう。
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Osteoporos Int, 2005
対象は、日本の地域在住高齢者236名(男性96名・女性145名)であり、全員が65歳以上であり、平均年齢は80歳であった。
前回の論文と同様、今回も立位を側面から評価し、参加者を5つの姿勢に分類し、ねこ背ではない正常グループとねこ背であるねこ背グループに分けた。
日常生活動作を計る指標は以下の2つとした。
①歩行や階段、食事や入浴といった基本的な日常生活動作(Basic ADL: BADL)
②スポーツやショッピング、買い物といったより手段的な日常生活動作(Instrumental ADL: IADL)
生活の質および生活の満足感の指標は以下の2つとした。
③老人うつ評価(The Geriatric depressino scale: GDS)
④対人関係や仕事、家庭での満足感を視覚的評価スケール(Visual analog scale: VAS)を用いて評価
①〜④の指標について正常グループとねこ背グループで比較してみた。
その結果…
基本的な日常生活動作では差は認められなかったが、ねこ背グループではIADLの中でも外出が必要となる項目で点数が低い傾向が認められた。
また、うつ評価で明らかな差はなかったが、ねこ背グループでは生活の満足感が低い傾向にあった。
とのことです。
著者は、この結果の理由として、ねこ背になると歩くスピードが遅くなったり、転びやすくなることから、外出する機会が減少し、生活の満足度が低くなると述べています。
確かに、ねこ背になってしまうことで、歩く速度が遅くなったり、階段が億劫になったりすると外出する気にならないのかもしれませんね。ましてや、女性であれば見た目も気なることでしょう。しかし、このような生活範囲の狭小化が骨粗訴訟を促進させることが明らかになっています(Martin AR, 2002)。
ねこ背になる→外出する気にならなくなる→身体機能の低下・骨粗鬆症の悪化→ねこ背の悪化、という悪循環を防ぐことが求められます。
いくつになっても幸福感のある生活を営みたいものですね。
ねこ背シリーズ
ねこ背シリーズ①:ねこ背になると歩き方も変わる?
ねこ背シリーズ②:ねこ背になると生活がつまらなくなる?
ねこ背シリーズ③:「背が低くなったんじゃない?」と言われた要注意!
ねこ背シリーズ④:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜大規模研究による検証〜
ねこ背シリーズ⑤:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜本当の犯人は?〜
ねこ背シリーズ⑥:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜腰がまっすぐになると…〜
ねこ背シリーズ⑦:自分でねこ背を計る方法(前編:科学的根拠の確認)
ねこ背シリーズ⑧:自分でねこ背を計る方法(後編:C7PL2.0をやってみよう!)
ねこ背シリーズ⑨:ねこ背と骨盤の代償運動を理解しよう
ねこ背シリーズ⑩:なぜ、ねこ背になるのか?
ねこ背シリーズ⑪:ねこ背の原因は背筋の霜降り化?
ねこ背シリーズ⑫:ハイヒールを履くとねこ背になる?
ねこ背シリーズ⑬:ねこ背と柔軟性 〜腰椎の柔らかさが大事〜
ねこ背シリーズ⑭:ねこ背になると肩が上がらなくなる?
ねこ背シリーズ⑮:座る姿勢がねこ背の原因になる?
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