リハビリmemo

理学療法士・トレーナーによる筋トレやダイエットについての最新の研究報告を紹介するブログ

筋トレは「計画」で差がつく!科学が証明したピリオダイゼーションの効果とは?


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「週に3回筋トレしてるけど、思ったほど筋力が伸びない」
「筋肉をもっと大きくしたいけど、どんなやり方がいいのか分からない」

 

 そんなふうに感じたこと、ありませんか?

 

 頑張っているのに結果が出ないと、どうしてもモチベーションが下がってしまいますよね。

 

 実は、筋トレで成果を出すには、「どんな内容を、どんな順序で、どれくらいの期間やるか」という“計画”がとても重要です。

 

 この筋トレの計画を科学的に設計する方法として注目されているのが、「ピリオダイゼーション(期分けトレーニング)」です。

 

 今回は、このピリオダイゼーションが筋トレの成果にどう影響するのか、最新のメタアナリシスの結果をご紹介しましょう。

 

 

table of contents

 

 

◆ ピリオダイゼーションって何?

 

 ピリオダイゼーションとは、筋トレの強度や回数、セット数を段階的に変化させていくトレーニング法です。

 

 体は同じ負荷に慣れてしまうと成長が止まりやすくなります。ピリオダイゼーションを取り入れることで、常に新しい刺激を与え、筋肉や神経系の発達を促すことができるとされています。

 

 たとえば、ベンチプレスを週3回やるとして、以下のように負荷を調整します。

 

◯線形ピリオダイゼーションの例
 週ごとに強度を上げて、回数を減らす方法です。

 

1週目:60kg × 12回 × 3セット

2週目:70kg × 10回 × 3セット

3週目:80kg × 8回 × 3セット

4週目:90kg × 6回 × 3セット

 

◯変動型ピリオダイゼーションの例
 1週間の中で強度や回数を変化させ、異なる刺激を与える方法です。

 

月曜:60kg × 12回 × 3セット(中強度)

水曜:80kg × 6回 × 3セット(高強度)

金曜:70kg × 10回 × 3セット(中間)

 

 このように、意図的に負荷の波を作ることで、筋肉に新鮮な刺激を与え、より高い効果が期待できます。

 

 

◆ 35件の研究をもとに検証してみた!


 2022年にコペンハーゲン大学のMoesgaardらが行ったメタアナリシスでは、35件の研究をもとに次の4つのポイントを検証しました。

 

・筋トレの内容を計画的に変化させることで筋力や筋肥大に違いが出るのか?

・計画のあるトレーニングと、計画なしのトレーニングで効果に差はあるのか?

・線形と変動型のどちらがより効果的か?

・トレーニング経験の有無が結果にどう影響するか?

 

 どの研究も「トレーニングの総負荷(重量×回数×セット数)」を等しく調整しており、計画の有無そのものによる効果の違いを正確に比較できる設計になっています。

 

 

◆ 結果①:筋力アップにはピリオダイゼーションが効果的!

 

 15件の研究を分析した結果、筋力(1RM=1回だけ持ち上げられる最大重量)の伸びは以下の通りでした。

 

◯ノン・ピリオダイゼーション群:平均22.7%アップ(週1.77%)

◯ピリオダイゼーション群:平均27.6%アップ(週2.13%)

 

 この差は統計的にも有意で、効果量は0.31(P=0.02)でした。つまり、計画を立てた筋トレの方が、何となく続ける筋トレよりも筋力アップの効果が高いということです。

 

 

◆ 結果②:筋肥大にはどちらでも変わらない?

 

 では、筋肉のサイズ(筋肥大)はどうでしょうか?10件の研究を分析した結果は以下の通りです。

 

◯ノン・ピリオダイゼーション群:平均3.2%アップ

◯ピリオダイゼーション群:平均4.2%アップ

 

 効果量は0.13(P=0.27)で、統計的に有意な差は見られませんでした。つまり、筋肥大を狙う場合には、計画の有無よりも「総負荷量の多さ」がカギになることが分かります。

 

 

◆ 結果③:「変動型ピリオダイゼーション」が最も効果的!

 

 ピリオダイゼーションにも種類があります。研究では、線形型と変動型の違いについても検討されました。

 

線形型:週ごとに強度を上げていくスタイル

変動型:日単位・週単位で強度や回数を変えるスタイル

 

 分析の結果は以下の通りです。

 

◯筋力向上においては変動型の方が効果的(効果量0.31、P=0.04)

◯トレーニング経験者ではさらに効果が大きく(効果量0.61、P=0.05)

◯筋トレ初心者には大きな差は見られなかった

 

 つまり、ある程度トレーニングに慣れてきた人ほど、毎回同じようなメニューでは効果が頭打ちになりやすく、変化のあるメニューが必要ということです。

 

 

◆ 筋トレの成果は“計画力”にあり!

 

 この研究結果をもとに、筋トレで成果を出すためのポイントを整理しておきましょう。

 

1)筋力を伸ばしたいならピリオダイゼーションを!
 ピリオダイゼーションを取り入れるだけで、筋力アップが期待できます。特に、ある程度トレーニング経験がある人は、「週ごと」や「日ごと」に負荷や回数を変える“変動型ピリオダイゼーション”を活用しましょう。

 

2)筋肥大を目指すなら総負荷が命!
 筋肥大を狙う場合には、ピリオダイゼーションの種類よりも「どれだけトータルで追い込んだか」が重要です。無理に複雑な計画を立てるよりも、回数やセット数を調整して総負荷量を上げる工夫をしてみて下さい。

 

3)初心者はシンプルで十分!
 初心者の方は、計画を複雑にしすぎる必要はありません。まずは習慣化し、決まったペースで筋トレを続けることが何より大切です。

 

 

 ただジムに通って筋トレをするだけでは、成果が出にくいのは当然のこと。

 

 「何を」「どれくらい」「どんな順番で」やるかをしっかりと設計することが、筋力アップへの近道です。

 

 特に、トレーニング歴が長くなるほど体は刺激に慣れてしまうため、「変化のある刺激=変動型ピリオダイゼーション」を取り入れることがポイントです。

 

 科学はこう教えてくれています──

 

「筋トレの成果は、やり方ではなく“計画”で決まる」。

 

 あなたの筋トレにも、ぜひ今日から“計画”という名の武器を取り入れてみて下さい!

 

 

◆ 参考文献

 

Moesgaard L, et al. Effects of Periodization on Strength and Muscle Hypertrophy in Volume-Equated Resistance Training Programs: A Systematic Review and Meta-analysis. Sports Med. 2022 Jul;52(7):1647-1666.