リハビリmemo

理学療法士・トレーナーによる筋トレやダイエットについての最新の研究報告を紹介するブログ

2016-01-01から1年間の記事一覧

ステップ動作の予測的姿勢制御を理解しよう!

生体力学が言う安定した立位とは、身体重心(Center of mass:COM)が足圧中心(Center of pressure:COP)の真上に保たれている状態のことです。手のひらで棒を立ててバランスをとる場面を想像するとわかりやすですね。 立位で上肢を挙上させるとCOMを前方…

ヒトの大脳皮質と予測的姿勢制御 ①

1985年、アメリカの生理学者であるLibetらは、脳科学の視点から「自由意志」の存在を疑う研究論文”Unconscious cerebral initiative and the role of conscious will in voluntary action”を発表しました(Libet B. 1985)。この論文の内容は「リベットの実…

ヒトの大脳皮質と姿勢制御 ②

ヒトの立位姿勢は、脊髄、脳幹、小脳、基底核そして大脳皮質を含む階層的な神経システムによって制御されています。近年では、ニューロイメージング研究の発展にともない、大脳皮質でも特に補足運動野が立位バランスに関与していることが明らかになりつつあ…

ヒトの大脳皮質と姿勢制御 ①

効果的に姿勢や歩行障害を改善させるためには、そのしくみを理解しリハビリテーションをデザインすることが大切です。運動学や脳科学といった学問により明らかにされた「しくみ」は科学的に検証された知見であり、しくみにもとづくリハビリテーションは、科…

変形性股関節症の保存療法の基本戦略③

変形性股関節症の保存療法の効果的な介入とは、股関節症を悪化させる影響度の高いリスクファクターを明らかにし、優先的に対応策を講じることです。 股関節に生じるメカニカルストレスの局所的な増加は、滑膜炎による軟骨変性や骨のリモデリングを発生させ…

変形性股関節症の保存療法の基本戦略②

変形性関節症の予防を生体力学の側面から研究しているボストン大学のFelsonは、変形性股関節症の悪化は、股関節に生じるメカニカルストレスのコントロールに失敗した結果であると言います(Felson DT, 2013)。 変形性股関節症を悪化させるリスク因子は、年…

変形性股関節症の保存療法の基本戦略①

変形性股関節症の保存療法をリスクマネージメントの観点から考えてみると、変形性股関節症を悪化させるリスク因子を明確化し、影響度の高い因子から防止策を講じることが効率的で効果的な保存療法につながります。 では、変形性股関節症を悪化させる影響度の…

体幹筋の廃用性筋萎縮を予防しよう

前回のエントリでは、廃用特異的に筋委縮する筋について池添氏らの研究報告を紹介しました。廃用により筋委縮しやすい筋は、脊柱起立筋や体幹深層筋(腹横筋・多裂筋)、大腿四頭筋や腓腹筋・ヒラメ筋といった抗重力筋に多いことが明らかになっています。逆…

廃用によって筋萎縮しやすい筋とは?

来年度の診療報酬改定の全貌がようやく見えてきましたね。リハビリテーション関係で大きく評価されているのは、ADL維持向上等体制加算のみです。ADL維持向上加算の増点は、病棟にリハビリスタッフを専従配置し、廃用予防を行うことがADLの早期回復に寄与する…

ヒトの皮質網様体路と歩行制御

旭川医科大学の高草木教授は、皮質網様体路と脳卒中後の片麻痺歩行との関係ついても興味深い仮説を述べています。 一般的に脳卒中後の運動機能は上肢に比べ、歩行のほうが改善しやすいとされています。高草木氏は、大脳皮質や内包を通る皮質脊髄路が損傷して…

ヒトの皮質網様体路と姿勢制御 ②

旭川医科大学の高草木教授は、動物実験や病態モデルの研究報告をもとに「皮質網様体路は姿勢制御に関与する」という仮説を提唱しています。 前回のエントリでは、拡散テンソルトラクトグラフィー(Diffusion tensor tractography:DTT)を用いて、初めてヒト…

ヒトの皮質網様体路と姿勢制御 ①

「運動前野、補足運動野から脳幹網様体に至る皮質網様体路は、姿勢制御に関与する」 大脳基底核と運動制御の研究で著名な旭川医科大学の高草木教授は、動物研究、病態モデルからこのような仮説を提唱しています。そしてこの仮説は以下の根拠にもとづいていま…

脳卒中の発症部位と歩行速度

脳卒中後の歩行速度は、その患者さんの生活の質(QOL)に大きく影響します。歩行速度は外出頻度と密接な関係があり、地域参加できることがQOLの向上に寄与するのです。 『脳卒中後の歩行速度とQOL』 このような背景から、歩行速度を改善するための研究が多く…

健康心理学が教える悩みを乗り越える方法

今回は、ヴァージニア大学社会心理学者のジョナサン・ハイト著「しあわせ仮説」から健康心理学で注目されている悩みや困難を乗り越える方法についてご紹介したいと思います。 Table of contents ◆ 脳は意味づけするクセがある ◆ 脳の意味づけを最大限に発揮…

生体力学が教える速く歩くためのポイント②

スタンフォード大学のNeptuneとLiuらによる生体力学研究によって、速く歩くためには推進力を高めることが必要であり、推進力の増加には足関節底屈筋の筋活動が大きく関与していることが示されました。 速く歩くためのポイントは、地面を蹴る力を高めることな…

生体力学が教える速く歩くためのポイント

最近、歩くのが遅くなった夫を見た妻は、余命や転倒リスクを心配して、夫を病院へ連れて行きました。 『歩行速度で余命を予測しよう』 『歩行速度で転倒リスクを予測しよう』 理学療法士に速く歩けるようになるためにはどうしたら良いか?と尋ねると、理学療…

脳卒中後の歩行速度とQOL

私たちの幸せは、他者との関わり合いの中からもたらされます。 『社会心理学が教える幸せの方程式』 ここでいう他者とは、友人や恋人、家族などの存在でしょう。友人との買い物、恋人とのデート、家族との旅行。どれもが楽しいひとときですよね。しかし、病…

社会心理学が教える幸せの方程式

今回は、ヴァージニア大学社会心理学者のジョナサン・ハイト著「しあわせ仮説」から「幸せの方程式」をご紹介したいと思います。 Table of contents ◆ 幸せは遺伝と環境で決まる ◆ 幸せの方程式 ◆ 読んでおきたい本 ◆ 幸せは遺伝と環境で決まる 1990年代に…

歩行速度で転倒リスクを予測しよう

信号が点滅するまでに横断歩道を渡り終えない夫を見て妻は思いました。 「夫の余命もあと10年程度か…」 『歩行速度で余命を予測しよう』 また、こうも思いました。 「家の中を片付けないとね」 「あと、行ったことのない場所に出かけるときは転倒に注意して…

脳卒中後の回復メカニズムの新たな発見をキャッチアップしよう

1月13日、生理学研究所と名古屋市立大学の研究チームによりリハビリによる脳卒中後の回復メカニズムの新たな発見がThe Journal of Neuroscienceに掲載されました。このニュースはネットメディアでも取り上げていましたね。 『脳出血まひ、回復の「道」判明 …

歩行速度で余命を予測しよう

高齢の夫婦が横断歩道で信号が変わるのをまっています。 信号が青に変わり、夫婦は横断歩道を渡り始めました。 ところが、夫は最近、歩くのが遅くなり、信号が点滅し始めてようやく渡り終えたのです。 このとき、妻は思いました。 「ああ、夫の余命もあと10…

変形性膝関節症に良い靴選び④

変形性膝関節に良い靴とは、どのような靴なのでしょうか? この問に近年の生体力学は、たったの2行で答えることができます。 裸足(はだし)が最も膝に優しい。 『変形性膝関節症に良い靴選び②』 裸足を模倣した、靴底が薄く、フラットで、柔らかく、軽い靴…

変形性膝関節症に良い靴選び③

変形性膝関節症に良い靴選びについて、近年の生体力学は「裸足(はだし)」が最もよいと言います。そのメカニズムは、裸足になることで足底のセンサーの感度が高まり、身体に合わせた歩き方に調整してくれること、足部の動きが開放されることによって足を着…

変形性膝関節症に良い靴選び②

どのような靴が変形性膝関節症に良いのだろうか? この問いの答えを生体力学は明確に示すことができます。 前回のエントリでは、ハイヒールを履いて歩くことが変形性膝関節症の発症や増悪させる要因になることについて考察しました。 『変形性膝関節症に良い…