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筋トレをして筋肉を増やせばダイエットできる説を検証しよう!


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 「筋トレをして筋肉を増やせば痩せられるのでしょうか?」

 

 筋肉は人体最大の臓器です。そのため、筋肉を増やして基礎代謝量を増やせばダイエットできる!とよく言われています。

 

 しかし、これは本当なのでしょうか?

 

 じつは、この問の答えはずいぶんと前に出ているのです。今回は科学的な視点から、この問を検証してみましょう。

 

 

Table of contents



◆ 筋肉を増やせば痩せられると言われる理由

 

 基本的に、摂取するエネルギー量よりも消費するエネルギー量のほうが大きくなるとダイエット効果が高まります。

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 エネルギー消費量は、基礎代謝量(安静時エネルギー代謝)、食事誘発性熱産生、活動時代謝量の3つにわけることができ、それぞれの割合は基礎代謝量が60%、食事誘発性熱生産が10%、活動時代謝量が30%になります。

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 基礎代謝量はエネルギー消費量の6割を占め、もっとも多い代謝量になります。基礎代謝はヒトが生きるための最低限のエネルギー消費量のことであり、主に体温調節や心臓の拍動、神経や筋細胞内でのイオンの濃度勾配維持で使われています。

 

 エネルギー消費量の6割を基礎代謝量が占めることから、基礎代謝を増やせばエネルギー消費量を増やすことでき、ダイエット効果につながると考えられます。

 

 そこで注目されるのが「筋肉」です。

 

 体重70kgで体脂肪率が約20%の男性をモデルにした研究結果から、各臓器の推定される重量を見てみましょう。

 

 体重70kgに対して筋肉量は28.0kgとなり、体重の約40%を占めます。つづいて脂肪組織が15kg(21%)、肝臓が1.8kg(2.6%)、脳が1.4kg(2.0%)となります(Gallagher D, 1998)。

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Fig.1:Gallagher D, 1998より筆者作成

 

 この研究結果から、人体の中でもっとも重量が大きい臓器が筋肉であり、基礎代謝量に対する筋肉による代謝量の割合も大きくなると考えられます。また、筋肉はトレーニングによって増やすことができる唯一の臓器でもあります。

 

 そして、ここから定説が生まれます。

 

 「身体の中でもっとも重量が大きいのは筋肉である」

 

 「筋トレをして筋肉を増やせば基礎代謝量が増える」

 

 「基礎代謝量が増えればエネルギー消費量が増えるので痩せる」

 

 これが筋トレをして筋肉を増やせばダイエットできると言われる理由です。

 

 では、この定説を検証してみましょう。



◆ 筋肉を1kg増やすと基礎代謝量はどのくらい増えるのか?

 

 1990年代よりMRI(磁気共鳴画像)と心エコーの発展によって臓器の体積が正確に測定できるようになりました。これらの技術を用いて、1998年、コロンビア医科大学院のGallagherらは、各臓器の体積をもとにした基礎代謝量の推定モデルを開発しました。

 

 開発された推定モデルにより、各臓器の基礎代謝量だけでなく、そこから各臓器の単位量あたりの基礎代謝量まで計算できるようになりました。これは「筋肉量が1kg増えると、基礎代謝量はどのくらい増えるのか?」がわかるようになったということです。

 

 では、先ほど提示した体重70kg、体脂肪率20%の男性をモデルとして、まずは各臓器の基礎代謝量を見てみましょう。

 

 1日あたりの基礎代謝量を約1700kcalとすると、筋肉は369kcalであり、脂肪組織68kca、肝臓361kcal、脳337kcalになります。

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Fig.2:Gallagher D, 1998より筆者作成

 

 筋肉の重量は体重の約40%を占めていましたが、基礎代謝量は全体の21.6%にとどまります。これは筋肉の基礎代謝量が肝臓や脳と同等であり、「臓器の重量が大きければ基礎代謝量も大きくなるわけではない」ということを示しています。

 

 つぎに単位量として、各臓器の重量1kgあたりの基礎代謝量を見てみましょう。

 

 重量1kgあたりの基礎代謝量は筋肉が13kcalであり、脂肪組織4.5kcal、肝臓200kcal、脳240kcalになります。

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Fig.3:Gallagher D, 1998より筆者作成

 

 重量1kgあたりの単位量にすると、筋肉の基礎代謝量はわずか13kcalとなり、肝臓や脳と比べてもかなり低い値になることがわかります。これは筋トレをして筋肉を1kg増やしても、1日あたりの基礎代謝量は13kcal程度しか増えないということを意味します。

 

 では、「1日あたり13kcal増える」をどのように解釈すれば良いでしょうか?

 

 基礎代謝量が1日あたり13kcal増えるということは、1年間で4,745kcal(13×365)増えるということです。体脂肪1gあたりのエネルギー量は約9kcalであり、その2割を水分とすると実質的には約7kcalとなります。ここから、筋トレによって筋肉量が1kg増えると、1年間で体脂肪が「約680g(0.68kg)」減ることがわかります。

 

 この数字をもって、筋トレをして筋肉量を増やせばダイエットできると思うかどうかは最終的には個人の解釈によります。

 

 しかしながら、筋トレをして増えるのは基礎代謝量だけではありません。筋肥大を目的に筋トレをするときには疲労困憊まで追い込みトレーニングの総負荷量を高める必要があり、それにともない活動時代謝量が増加します。

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 また、筋肉量を増やすためにはタンパク質の摂取量を増やすことも必要です。タンパク質の摂取量が増えると食事誘発性熱産生が増加します。さらにタンパク質の摂取は食欲を低下させる作用も報告されています。

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 結果的には、これらを合算したエネルギー消費量が増加するため、筋トレをすること自体がダイエットにつながると言えるでしょう。



 「筋トレをして筋肉量を増やせば痩せられるのでしょうか?」

 

 この問に対する答えは、筋肉量を増やせば基礎代謝量が増加してダイエットできるというよりは、筋トレをすること自体が基礎代謝量だけでなく、活動時代謝量や食事誘発性熱産生も増やし、エネルギー消費量全体を増加させることによってダイエット効果を高める可能性があるということになります。

 

 

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◆ 参考文献

Gallagher D, et al. Organ-tissue Mass Measurement Allows Modeling of REE and Metabolically Active Tissue Mass. Am J Physiol . 1998 Aug;275(2):E249-58.