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ダイエットするなら「やせる野菜と果物」を食べよう!


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 現代の栄養学では、ダイエットするために炭水化物を制限するのではなく、「やせる炭水化物」を食べることを推奨する知見が報告されるようになりました。

 

 やせる炭水化物とは、食物繊維の多い玄米やオートミール、全粒粉で作られたパンや麺類のような精製されていない全粒穀物のことを言います。

 

 白米や小麦粉で作られたパンや麺類は、精製された穀物であり、食物繊維が取り除かれているため、これらは「太る炭水化物」になります。

 

 白米などの太る炭水化物を玄米などのやせる炭水化物に「置き換える」ことで、健康的に無理なくダイエットすることが推奨されているのです。

ダイエットするなら「白米よりも玄米」を食べよう!

 

 しかし、白米を玄米に置き換えただけではダイエットできません。なぜなら、ダイエット効果を高めるためには、1日あたり25g以上の食物繊維の摂取が必要になるからです。

ダイエットするなら「やせる炭水化物」を食べよう!その見極めポイントとは?

 

 そこで食事に取り入れるべきなのが「野菜と果物」です。

 

 それも「やせる野菜と果物」です。

 

 野菜には「やせる」イメージがありますが、じつは「やせる野菜」と「太る野菜」があるのです。

 

 今回は、ダイエットするなら摂るべき「やせる野菜と果物」についてハーバード大学が報告した科学的根拠(エビデンス)をご紹介しましょう。

 

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◆ やせる野菜と太る野菜を知っておこう!

 

 2015年、ハーバード大学公衆衛生大学院のBertoiaらは、野菜と果物の摂取量と体重の増減との関連について、133,468名の男女を対象に、24年間の調査結果を解析しました。

 

 この研究には、3つの大規模研究が含まれており、食事、喫煙の状態および身体活動などのライフスタイルの要因を調整して、4年間隔で解析されています。

 

 解析は野菜と果物の摂取量の増加と体重の増減との関連とともに、野菜や果物の各品目による体重への減少効果が調べられました。

 

 その結果、4年間の野菜と果物の摂取量の増加は、ともに体重の減少と関連していることが示されました。また、果物は野菜よりも減量の効果が高くなりました。

 

 そして、興味深いのが野菜と果物の各品目ごとによる体重の減少への効果です。もっともやせる野菜と、太る野菜とは何なのでしょうか?

 

 もっともやせる野菜は大豆であり、ついでカリフラワーやブロッコリーといったアブラナ科の野菜、ピーマン、芽キャベツやホウレンソウなどの緑色の葉野菜に高い減量効果が認められました。逆にじゃがいもやトウモロコシには増量効果が認められました。じゃがいもにはマッシュポテト、サツマイモ、ヤムイモが含まれています。

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Fig.1:Bertoia ML, 2015より筆者作成

 

 大豆や大豆食品には食物繊維やイソフラボン、タンパク質が豊富に含まれています。食物繊維には満腹感を高め、腸での糖質や脂質の吸収を遅らせ、腸内環境を整えて腸内細菌の活動を促すなどの肥満を防ぐ作用があります。

ダイエットするなら「やせる炭水化物」を食べよう!その見極めポイントとは?

 

 イソフラボンは脂質の生成を抑制するとともに、脂質の蓄積を減らすことが示唆されており、肥満の要因となるインスリン抵抗性の改善に寄与することも報告されています。

ソイ・プロテインなどの大豆食品によるダイエット効果の最新エビデンス

 

 タンパク質には食欲を低下させエネルギー摂取量を減少させる効果が示唆されています。

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 これらの作用によって、大豆食品は減量に効果的であるとされています。

 

 また、ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜や芽キャベツなどの緑色の葉物野菜にも食物繊維が豊富に含まれているとともに、これらの野菜はグリセミック負荷が低いものになります。

 

 食後の血糖値の上昇しやすさを示す指標をグリセミック指数(Glycemic Index)といいます。グリセミック指数は、食品の炭水化物50gを摂取した場合における血糖値の上昇しやすさを表しています。しかし、食品に含まれる炭水化物の量はさまざまなため、あまり実用的ではありませんでした。

 

 そこで、ハーバード大学公衆衛生学大学院の研究チームが考案したのがグリセミック負荷(Glycemic Load)です。グリセミック負荷は、グリセミック指数に食品に含まれる炭水化物の量をかけた値であり、適切に血糖値を上昇させる程度をあらわす指標になります。

 

 アブラナ科の野菜や緑色の葉物野菜は含まれる食物繊維が多く、グリセミック負荷が低いことにより、やせる野菜とされているのです。

 

 これに対して、じゃがいもなどのイモ類やトウモロコシには含まれるデンプン(糖質)が多いことからグリセミック負荷が高くなります。そのため、多く摂取すると太りやすくなるのです。



◆ もっともやせる果物とは?

 

 つぎに果物ですが、果物にはやせる効果が多く認められ、太る効果は認められていません。その中でも、もっともやせる効果が高い果物は「ブルーベリー」でした。ついでプルーン、リンゴ、イチゴ、レーズンとブドウ、グレープフルーツに高い減量の効果が認められました。

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Fig.2:Bertoia ML, 2015より筆者作成

 

 ブルーベリーやプルーン、イチゴなどのベリー系の果物やリンゴやグレープフルーツには食物繊維とともにフラボノイドが豊富に含まれています。

 

 フラボノイドとは、ポリフェノールの一種で植物の葉、茎、幹などに含まれており、植物が紫外線による活性酸素や害虫から身を守るために抗酸化作用や抗菌作用などの防衛機能のためにつくり出している物質です。

 

 近年では、フラボノイドの摂取がエネルギー摂取量を減少させるとともに、筋肉のグルコースの取り込みを増加させ、脂肪細胞へのグルコースの取り込みを減少させることが報告されています。

 

 これらの効果が、体重を減少させる効果のメカニズムとして推察されています。

 

 これらの結果から、Bertoiaらはダイエット効果を高めるために、現在の食事メニューに、やせる野菜を2.5カップ、減量効果の高い果物を2カップほど摂取することを推奨しています(Bertoia ML, 2016)。



◆ 近年、注目されている「豆類」

 

 Bertoiaらの大規模調査では、大豆の摂取は大きな減量効果を認め、豆類の摂取も減量効果が認められています。しかし、豆類の摂取による近年のランダム化比較試験(RCT)の結果を集めたメタアナリシスでは、明確な減量効果が示されているのです。

 

 2016年、トロント大学のKimらは、豆類(ひよこ豆やレンズ豆など)の摂取が体重の変化に与える影響について検証した21のRCT(940名の肥満傾向の被験者)をもとにメタアナリシスを行いました。

*メタアナリシスとは、これまでに報告された同じテーマの研究結果を集めて、全体としてどのような傾向をがあるのかを解析するエビデンスレベルのもっとも高い研究手法のこと。

 

 その結果、豆類の摂取(1日あたりの摂取量の中央値132g)により、有意な体重の減少(-0.34 kg)を示しました。この減量効果はエネルギー(カロリー)制限食だけでなく、体重を維持する食事でも認められました。

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Fig.3:Kim SJ, 2016より筆者作成

 

 この結果から、エネルギー摂取量の制限の有無にかかわらず、豆類を摂取することは減量に寄与することを示唆しています。Kimらは、1日の食事に100〜150gの豆類を含む食品を摂取することは、ダイエット効果を促進させる有効な食事戦略になると述べています。

 

 では、なぜ豆類にダイエット効果があるのでしょうか?

 

 そのメカニズムとして挙げられているのが食物繊維、タンパク質、豆類特有の細胞壁です。

 

 豆類には豊富な食物繊維が含まれています。食物繊維には前述したように満腹感の増加、腸での糖質や脂質の吸収の遅延の作用があります。タンパク質にも食欲を低減させる作用があります。これらの作用が食事によるエネルギー摂取量を減少させることで減量に寄与すると推察されています。

 

 そして豆類特有なのが細胞壁です。

 

 豆類にはデンプン(糖質)が含まれていますが、豆類にはこのデンプンを消化から守る細胞壁があることが観察されています。この細胞壁がデンプンの消化を妨げ、腸から吸収されるエネルギー量を減らす役割を担っているのです。

 

 豆類の摂取は、満腹感を高めるとともに、含まれているデンプンの吸収を細胞壁が妨げ、含まれている食物繊維が他の食品の糖質や脂質の吸収を遅延させ、タンパク質により食欲を減少させることでダイエット効果を高めるのです(Kim SJ, 2016)。




 ここまで、やせる野菜と果物について見てきました。

 

 大豆やブロッコリーなどのアブラナ科の野菜、ピーマン、キャベツやホウレンソウなどの緑色の葉物野菜には高い減量効果が認められています。また、豆類にもダイエット効果を高めエビデンスが示されています。反対に、じゃがいもなどのイモ類やトウモロコシはグリセミック負荷が高く、太る野菜になります。

 

 果物もダイエットには効果的ですが、そのなかでもとくにブルーベリーやプルーンといったベリー系の果物やリンゴなどの食物繊維とともにイソフラボンを多く含む果物はもっともやせる果物になります。

 

 野菜や果物はダイエット効果を高めるだけでなく、病気による死亡や発症リスクも抑えてくれます。

 

 やせる野菜や果物の摂取量を増やすことは心臓病による死亡のリスクを軽減し(Wang X, 2014)、脳卒中の発症リスクも減少させます(He FJ, 2006)。また、血圧の低下とも関連が報告されており(Yokoyama Y, 2014)、やせる野菜や果物には「病気の死亡や発症のリスクを減少させる」ことがエビデンスとして示されているのです。

 

 ダイエットをするのなら、野菜と果物を食事のメニューに取り入れるのはもちろんですが、「やせる野菜と果物」を積極的に食べることが効率的なダイエットにつながるとともに、僕たちの身体を健康にしてくれるのです。

 

 ダイエットをするのなら、まずは白米などの太る炭水化物を玄米などの「やせる炭水化物」に置き換えましょう。つぎに野菜や果物のなかでも「やせる野菜と果物」を選択してメニューに加えましょう。これで多くの食物繊維が摂れることでダイエット効果が高まり、さらに健康度も高まるでしょう。

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 次回は「やせるタンパク質や油、飲み物」などについて見ていきましょう。

 

 

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◆ ダイエットの科学シリーズ

シリーズ1:「朝食を食べないと太る」というのは都市伝説?〜最新エビデンスを知っておこう

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シリーズ40:ダイエットするなら「ゆっくり食べる」べき最新エビデンス

シリーズ41:筋トレによる筋肥大と除脂肪の効果を最大にする「プロテインの摂取パターン」を知っておこう!

 

 

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◆ 参考文献

Bertoia ML, et al. Changes in Intake of Fruits and Vegetables and Weight Change in United States Men and Women Followed for Up to 24 Years: Analysis from Three Prospective Cohort Studies. PLoS Med. 2015 Sep 22;12(9):e1001878. 

Bertoia ML, et al. Dietary flavonoid intake and weight maintenance: three prospective cohorts of 124,086 US men and women followed for up to 24 years. BMJ. 2016 Jan 28;352:i17.

Kim SJ, et al. Effects of dietary pulse consumption on body weight: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.  Am J Clin Nutr. 2016 May;103(5):1213-23. 

Li S, et al. Dietary pulses, satiety and food intake: a systematic review and meta-analysis of acute feeding trials.  Obesity (Silver Spring). 2014 Aug;22(8):1773-80.

Wang X, et al. Fruit and vegetable consumption and mortality from all causes, cardiovascular disease, and cancer: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies.  BMJ. 2014 Jul 29;349:g4490.

He FJ, et al. Fruit and vegetable consumption and stroke: meta-analysis of cohort studies.  Lancet. 2006 Jan 28;367(9507):320-6.

Yokoyama Y, et al. Vegetarian diets and blood pressure: a meta-analysis. JAMA Intern Med. 2014 Apr;174(4):577-87.