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ダイエットするなら「おやつにナッツ」を食べよう!【最新エビデンス】


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 ダイエット中に「3時のおやつ」はもちろん禁止ですよね。

 

 でも、食べても太らない、空腹感を減らしてくれる健康的な「おやつ」であれば、食べても良いと思いませんか?

 

 そこで注目されているのが「ナッツ」です。

 

 ナッツとは種実類に分類されている中の「木の実」のことをいいます。その種類にはアーモンドやカシューナッツ、くるみ、ピスタチオなどがあります。

 

 これらのナッツは脂質を多く含むエネルギー(カロリー)の多い食品なので、「ナッツなんて食べたら太る!」というイメージからダイエットでは敬遠されてきました。

 

 しかし近年では、ナッツを食べると「体重を増やさずに、空腹感を減らすことができる」ということが多くの研究結果から示されるようになり、最近ではこれらをまとめて解析したメタアナリシスの結果が報告されているのです。

 

 メタアナリシスとは、これまでに報告された同じテーマの研究結果を集めて、全体としてどのような傾向をがあるのかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究手法のことをいいます。

 

 今回は、ナッツがダイエットのおやつとして最適であることを示した最新のメタアナリシスの報告をご紹介しましょう。



Table of contents

 

 

◆ ナッツを食べても太らないエビデンス

 

 では、さっそくナッツが体重に与える影響についてのメタアナリシスの報告を見ていきましょう。

 

 2018年、武漢大学のLiらは、ナッツを食べることが体重に与える影響についてメタアナリシスを報告しています。

 

 Liらは、これまでに報告されたナッツと体重について6つの観察研究(被験者420,890名)と62のランダム化比較試験(被検者7,184名)をもとにしてメタアナリシスを行っています。

 

 その結果、ナッツの摂取が1週間に1皿増えることにより体重増加のリスクが3%、肥満になるリスクが5%減少することが示されました。

 

 また、ナッツを食べていないグループと比べて、ナッツを食べたグループは、体重だけでなく体格指数(BMI)やウエストサイズを低下させることが示されました。

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Fig.1:Li H, 2018より筆者作成

 

 これらの結果から、ナッツを食べることは、肥満のリスクを減少させるとともに、体重やBMI、ウエストサイズまでもを減少させることが示唆されたのです。

 

 しかしながら、これまでの報告は、ナッツをおやつとして「追加して」摂取した調査結果と、ナッツを他の食事と代替して摂取した調査結果を混同して解析していることが問題点として挙げられていました。

 

 つまり、おやつとしてナッツを追加して食べると、通常よりも1日の総エネルギー摂取量が増えます。これに対して、他の食事の代替としてナッツを食べれば総エネルギー摂取量はそこまで増えることはありません。このような異なる前提条件が混同されていたのです。

 

 そして、この問題点に対して、それぞれの条件による体重への影響についてのメタアナリシスを行ったのがジョージア大学のGuarneiriらです。

 

 2020年、Guarneiriらは、ナッツを追加して食べた場合と、他の食事と代替して食べた場合による体重への影響について、55の研究報告をもとにメタアナリシスを行いました。

 

 対象には、健康で正常な体重の個人だけでなく、肥満や高コレステロール血症、メタボリックシンドローム、糖尿病、心臓病のリスクが高い個人も被験者に含まれていました。

 

 ナッツはアーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、ピーナッツ、ピスタチオ、クルミなどが摂取されました。

 

 解析の結果、ナッツを追加して食べた条件では、体重やBMI、ウエストサイズ、体脂肪率に有意な変化は認められませんでした。

 

 ナッツを他の食事と代替して食べた場合では、体重やBMI、ウエストサイズに変化は認められませんでしたが、体脂肪率のみ減少を認めました。

 

 これらの結果から、ナッツを「おやつ」として追加して食べても体重やBMI、ウエストサイズ、体脂肪率を増やさない、つまりは「太らない」ことが示唆されたのです(他の食事と代替して食べると体脂肪が減る可能性があります)。

 

 では、なぜナッツを食べても太らないのでしょうか?

 

 そのひとつの要因が「空腹感の減少」です。



◆ ナッツを食べるとお腹が空かなくなるエビデンス

 

 ナッツを食べることによる空腹感の減少効果についてメタアナリシスを行ったのがシーラーズ医科大学のAkhlaghiらです。

 

 2020年、Akhlaghiらは、ナッツの摂取と空腹感、体重の変化について調査した31のランダム化比較試験(RCT)の結果をまとめて解析しました。

 

 被験者の体型は、正常な体重から太り過ぎ(BMI25–29.9)、肥満(BMI≧30)とさまざまでした。ナッツの種類はアーモンド、クルミ、ピーナッツ、ヘーゼルナッツなどが含まれ、1日あたり平均50.9gが摂取されました。

 

 その結果、ナッツを食べたグループは、他の食品(シリアルや果物)と比べて、1日あたりのエネルギー摂取量は増えましたが、体重に差はありませんでした。摂取後の空腹感は、他の食品よりも減少することが示されました。

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Fig.2:Akhlaghi M, 2020より筆者作成

 

 また、体型別に解析したサブグループ解析では、太り過ぎまたは肥満に比べて正常体重の被験者で空腹感の減少効果が高いこともわかりました。

 

 これらの結果から、ナッツを食べても体重が増えないことは、空腹感の減少が要因であると示唆されているのです。

 

 では、なぜナッツを食べると空腹感が減るのでしょうか?



◆ ナッツにはダイエットにも健康にも良い栄養素がたくさんある

 

 ナッツは、その75%が脂質であるため、高エネルギー密度な(エネルギーを含む割合が高い)食品に分類されます。しかしながら、食べても太らないのはナッツ独自の構造的な理由があります。

 

 食べたものは胃や腸で消化、吸収されます。脂質は脂肪細胞の中にあるのですが、小腸で消化されると脂肪細胞から放出されて吸収されます。しかし、ナッツにある特有の細胞壁は、この脂質の放出を拒むために、部分的には吸収されずに小腸を通過してしまうのです。これにより、吸収されるエネルギー量が減少します(Grundy M, 2015)。

 

 もうひとつの理由は、ナッツの摂取がエネルギーの消費量を増やすことです。ナッツを食べると安静時のエネルギー消費量が増え、脂肪の酸化を増加させることが示唆されています(Alper CM, 2002、Tapsell L, 2009)

 

 これはナッツに多く含まれる不飽和脂肪酸が影響しています。不飽和脂肪酸は動物性食品によく含まれている飽和脂肪酸よりも脂肪の酸化を高めることが報告されています(Jones P, 2008)。

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 これらの理由から、高エネルギー密度であるナッツを食べても見かけのエネルギー摂取量よりも実際の摂取量は低くなり、また吸収した脂肪も酸化しやすいために体重が増えない、太りにくいと推察されています。

 

 つぎに、なぜナッツを食べると空腹感が減るのでしょうか?

 

 ナッツには脂質とともに食物繊維が多く含まれています。食物繊維を多く含む食品は、食物繊維が少ない食品よりも咀嚼回数(噛む回数)が多くなります。また、消化されると食物繊維は水分を吸収して容量を増します。このような食物繊維の作用がナッツを食べた後の満腹感を高めるとともに空腹感を減らすと考えられています。

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 これが、ナッツを食べても太らずに空腹感を減らすことができるメカニズムとされています。

 

 ナッツを食べるべき理由は他にもあります。

 

 前述したとおり、ナッツには不飽和脂肪酸や食物繊維が多く含まれています。またポリフェノールも豊富に含まれており、これらの栄養素により健康を高められることが大規模調査で報告されているのです。

 

・ヨーロッパや米国、アジアの各国12万人を対象に行われた大規模調査では、ナッツの摂取がすべての病気または心臓病による死亡率の低下と関連していることが報告されています(Souza R, 2020)。

 

・約50万人を対象にした大規模調査では、1日28g、週5回のナッツの摂取が心臓病全体のリスクの13〜19%低下、心筋梗塞などのリスクの15〜23%低下との関連が認められています(Guasch-Ferré M, 20117)

 

・ナッツの摂取はインスリンの感受性を改善することで2型糖尿病の発症と進行の防止に寄与することが報告されています(Tindall AM, 2019)。




 ナッツはエネルギー密度が高いことから、とくにダイエットでは敬遠されがちですが、ナッツを食べることは太ることなく空腹感を減らして食欲を抑えてくれる効果があります。また、それだけではなく健康面においても多くの福音を与えてくれることがエビデンスとして示されているのです。

 

 ダイエットのおやつとしてナッツを食べるときには、健康的に良い影響があるとされる25-30g程度(150-200kcal)から食べてみると良いでしょう。カロリーが気になる方は他の食事と代替させても良いと思います。

 

 現代の栄養学は、食事を減らすのではなく「食欲を減らす」というダイエットのパラダイム・シフトを提唱しています。そのなかで、おやつについても「食べてはいけない」から「太らない健康的なおやつを食べて食欲を抑えよう」にシフトしつつあるのです。

 

 さいごに、「やせる食事プレート」のおやつにナッツを追加しておきましょう。

 

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◆ 参考文献

Li H, et al. Nut consumption and risk of metabolic syndrome and overweight/obesity: a meta-analysis of prospective cohort studies and randomized trials. Nutr Metab (Lond). 2018 Jun 22;15:46.

Guarneiri L, et al. Intake of Nuts or Nut Products Does Not Lead to Weight Gain, Independent of Dietary Substitution Instructions: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Trials. Adv Nutr. 2020 Sep 18;nmaa113. 

Akhlaghi M, et al. Effect of nuts on energy intake, hunger, and fullness, a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. Crit Rev Food Sci Nutr. 2020;60(1):84-93.

Grundy M, et al. Impact of cell wall encapsulation of almonds on in vitro duodenal lipolysis. Food Chem. 2015 Oct 15;185:405-12. 

Alper CM, et al. Effects of chronic peanut consumption on energy balance and hedonics. Int J Obes Relat Metab Disord. 2002 Aug;26(8):1129-37.

Tapsell L, et al. The effect of a calorie controlled diet containing walnuts on substrate oxidation during 8-hours in a room calorimeter. J Am Coll Nutr. 2009 Oct;28(5):611-7.

Jones P, et al. The effect of dietary oleic, linoleic, and linolenic acids on fat oxidation and energy expenditure in healthy men. Metabolism. 2008 Sep;57(9):1198-203.

Souza R, et al. Association of nut intake with risk factors, cardiovascular disease, and mortality in 16 countries from 5 continents: analysis from the Prospective Urban and Rural Epidemiology (PURE) study. Am J Clin Nutr. 2020 Jul 1;112(1):208-219. 

Guasch-Ferré M, et al. Nut Consumption and Risk of Cardiovascular Disease.  J Am Coll Cardiol. 2017 Nov 14;70(20):2519-2532. 

Tindall AM, et al. The effect of nuts on markers of glycemic control: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.  Am J Clin Nutr. 2019 Feb 1;109(2):297-314.