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タンパク質がダイエット効果を高める最新エビデンスを知っておこう!


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 ダイエットの効果を高めるためには、エネルギーの摂取量がエネルギーの消費量を下回る「マイナスのエネルギーバランス」を達成することが前提になります。

 

 近年では、食事の栄養組成がエネルギーバランスに影響を与えることが示唆されており、炭水化物や脂質でもエネルギー摂取量を減らし、エネルギー消費量を増やす食品を摂取することがダイエット効果を高めることに寄与するとされています(Roberts S, 2015)。

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ダイエットするなら「太る炭水化物」と「やせる炭水化物」を見極めよう!

ダイエットするなら「健康に良い、やせる脂質」を食べよう!

 

 そして現代の栄養学では、ダイエットの効果を高めるもうひとつの栄養素が注目されています。

 

 それが「タンパク質」です。

 

 タンパク質には満腹感を高めて食欲を減らす作用があり、これがエネルギー摂取量を減らす手助けをしてくれます。

ダイエットで食欲を抑えたいならタンパク質を摂取しよう!

タンパク質が食欲を減らすメカニズムを知っておこう!

 

 また、ダイエットによる筋肉量の減少を防いでくれます。さらに食事による熱生産量を増やしてくれます。これらはエネルギー消費量を増やす手助けをしてくれます。

筋肉を減らさずにダイエットするならタンパク質の摂取量を増やそう!

タンパク質は食べるだけでエネルギーを消費できる!〜食事誘発性熱産生を知っておこう

 

 タンパク質はエネルギー摂取量を減らし、エネルギー消費量を高めることで、マイナスのエネルギーバランスの達成を促進してくれるのです。

 

 では、実際にタンパク質の摂取を増やすとダイエット効果は高まるのでしょうか?

 

 そのために必要となるタンパク質の摂取量はどの程度なのでしょうか?

 

 今回は、タンパク質の摂取がダイエット効果を高める科学的根拠(エビデンス)と、そのためのタンパク質の摂取量について最新の研究報告をご紹介しましょう。



Table of contents

 


◆ タンパク質は「ダイエット初期の体重減少」を助けてくれる

 

 ダイエットの成功の秘訣のひとつが「ダイエット初期の体重減少」です。

 

 ミリアム病院およびブラウン医科大学で行われた研究報告では、ダイエットを始めてから2ヶ月で3%未満の減量した場合と比べて、3〜6%の減量をした場合は、4年後の5%以上の体重減少を達成する確率が3.85倍となり、8年後は2.3倍高くなることが示されています。

 

 これは、ダイエット初期の体重減少が、4年後および8年後の体重減少を予測することを示唆しています(Unick JL, 2015)。

 

 2021年には、このような研究報告をもとに、長期的なダイエットの成功因子を分析したデリー大学のChopraらのシステマティックレビューにおいても、もっとも成功を高める要因のひとつが「ダイエット初期の減量」であることが明らかにされているのです(Chopra S, 2021)。

 

 ダイエット初期に体重をしっかり減量できることは、「自分はダイエットできる!」という自信を生み出し、「もっとスリムな身体になりたい!」というダイエットへの動機づけを与えてくれます。

 

 そして、このダイエット初期の体重減少を助けてくれるのが「タンパク質」なのです。

 

 2005年に報告されたワシントン大学の研究では、高タンパク質がダイエット開始から3ヶ月における体重減少への寄与を検証しています。

 

 肥満傾向である被験者は、2300kcalに制限された通常のタンパク質食(総エネルギー摂取量の15%)を2週間摂取し、つぎの2週間で同じエネルギー摂取量の高タンパク質食(総エネルギー摂取量の30%)を摂取しました。

 

 栄養素の組成割合は下記のとおりです。

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 その後、さらに12週間でエネルギー摂取量を規定しない自由条件下で高タンパク質食を摂取しました。

 

 その結果、制限されたエネルギー摂取量の条件下(0〜4週)では、通常のタンパク質食よりも高タンパク質食で満腹感が高くなりましたが、体重は変化しませんでした。自由食の条件下(5〜12週)では、1日あたりのエネルギー摂取量が約400kcal減少し、結果的に3ヶ月で体重が約5kg減少したことが示されました(Weigle D, 2005)。

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Fig.1:Weigle D, 2005より筆者作成 

 

 この結果は、タンパク質の摂取量を増やすと満腹感が増加し、これによりエネルギー摂取量を減らせることによって短期間で体重を減少させることを示唆しています。

 

 また、このような高タンパク質食と通常のタンパク質食を比較した研究報告をまとめて解析したメタアナリシスを南オーストラリア大学のWycherleyらが報告しています。

*メタアナリシスとはこれまでの研究結果を統計的手法により全体としてどのような傾向があるかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究デザイン。

 

 メタアナリシスは24のランダム化比較試験、被験者1063名が対象となりました。エネルギー摂取量は1575±270kcalに制限され、ダイエット期間は平均12.1週間でした。

 

 タンパク質の摂取量は、高タンパク質食グループが1日あたり1.25g/kgであり、通常のタンパク質食グループが0.72g/kgでした。平均的な栄養素組成は下記のようになっています。

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 その結果、高タンパク質食は、通常のタンパク質食と比べて体重、脂肪量、トリグリセリドの減少が認められ、さらに除脂肪量(筋肉量)、安静時エネルギー代謝の増加が認められました。

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Fig.2:Wycherley T, 2012より筆者作成

 

 これらの結果から、タンパク質の摂取量を増やすことは、ダイエットを始めてから平均3ヶ月という短期間における体重や脂肪量の減少に寄与することが示唆されているのです(Wycherley T, 2012)。

 

 このように、タンパク質の摂取量を増やすことは、ダイエットの長期的な成功の秘訣である「ダイエット初期の体重減少」を助けてくれる可能性が報告されているのです。



◆ タンパク質は「リバウンドの防止」を助けてくれる

 

 タンパク質がダイエット効果を高めるのはダイエットの初期だけではありません。

 

 ダイエットで避けられないのがリバウンドのリスクです。ダイエットしてからリバウンドする割合は、80%とも報告されています(Wing R, 2005)。

 

 では、タンパク質の摂取は、リバウンドの防止にも有効なのでしょうか?

 

 この疑問に対して、コペンハーゲン大学のLarsenらが行ったのが多国籍の大規模研究であるDIOGENESプロジェクトです。

 

 この大規模研究は、5カ国から被験者を集め、8週間の減量で体重の約8%を減らすことができた被験者773名を対象に、タンパク質の摂取量が6ヶ月間の体重維持に与える影響について検証しました。

 

 被験者はタンパク質の摂取量、グリセミック指数(Glycemic Index:GI)の異なる4つの食事グループに分けられ、6ヶ月後の体重の変化が計測されました。食事量に制限はありませんでした。グリセミック指数とは、食品の炭水化物50gを摂取した場合における血糖値の上昇しやすさを示す指標です。

 

 4つのグループは下記のように分けられました(別にコントロールグループあり)。

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 その結果、体重の回復がもっとも低いのが高タンパク質+低GIグループであり、体重の回復がもっとも高かったのは低タンパク質+高GIグループであることが示されました。両グループの回復差は約1kgでした。

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Fig.3:Larsen TM, 2010より筆者作成

 

 この結果から、ダイエット後のリバウンドの予防には高タンパク質と低GIの食事がもっとも有効であることが示唆されたのです。しかしながら、このリバウンドの予防効果がタンパク質によるものなのか、低いGIの炭水化物によるものなのかを判別することができませんでした。

 

 この問題を解決するために、DIOGENESプロジェクトのフォローアップ研究を行ったのがマーストリヒト大学のAllerらです。

 

 フォローアップ研究では、DIOGENESプロジェクトをさらに6か月延長して、ダイエットから12ヶ月後の体重の回復を計測しました。その結果、もっとも体重の回復が少なかったグループは「高タンパク質+高GIグループ」だったのです。また、高タンパク質を摂取した被験者は、低タンパク質を摂取した被験者よりも約2kg少ない体重の回復と関連していました。

 

 この結果から、ダイエットから12ヶ月間という長期のリバウンド防止には、炭水化物のGIの高低にかかわらず「高タンパク質を摂取する」ことの重要性が示唆されたのです。

 

 さらに、32のランダム化比較試験(3492名の被験者)をもとにして、ダイエット後の12ヶ月間における体重回復に対するタンパク質の摂取量の影響について解析したメタアナリシスの結果では、高タンパク質の摂取は、通常のタンパク質の摂取よりも体重、脂肪量、トリグリセリドの回復を防ぐ小さい効果量が示されています。

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Fig.4:Clifton P, 2014より筆者作成

 

 これらの結果は、ダイエットにより減少させた体重を1年間、維持することに対する高タンパク質の摂取の有効性を示唆しています。しかしながら、1年以上の体重の維持に対するタンパク質の効果については今後のさらなる検証が必要とされています。

 

 このように、現代の栄養学は、タンパク質の摂取量を増やすことがダイエット初期の体重減少の促進や、ダイエット後のリバウンドを防ぐ可能性を示唆しているのです。

 

 では、そのために必要となるタンパク質の摂取量はどのくらいなのでしょうか?



◆ ダイエット効果を高める「タンパク質の摂取量」とは?

 

 2020年、コペンハーゲン大学のMagkosらは、これまでに報告されたダイエットにおけるタンパク質の有効性についてまとめたレビューを報告しています。

 

 Magkosらは、近年に報告された8つのランダム化比較試験の結果から、ダイエットの効果を高めて、リバウンドを防ぐためにはタンパク質量を「1日あたりの総エネルギー摂取量の20〜35%」または「体重1kgあたり1.2〜1.9g」が効果的な摂取量になると示唆しています。

 

 例えば、体重が70kgであれば、ダイエット効果を高めるために必要なタンパク質の摂取量は1日あたり84〜133gとなります。

 

 米国医学研究所が提唱しているタンパク質の推奨栄養所要量(RDA)は「体重1kgあたり0.8g」ですが、ダイエット効果を高めるためには、これを超える「体重1kgあたり1.2〜1.9g」を目安に食事のメニューを考えると良いでしょう。

 

 タンパク質は肉や魚、豆類などに多く含まれています。

 

 肉は、太りやすい肉である赤い肉や加工肉を控えて、やせる肉である鶏肉(皮なし)を選びましょう。魚はタンパク質とともにやせる脂質を多く含んでいます。豆類もタンパク質が多いとともに食物繊維が多く、豆特有の細胞壁によって腸でのエネルギー吸収を減らしてくれます。

ダイエットするなら「赤い肉」よりも「白い肉」を食べよう!

ダイエットするなら「健康に良い、やせる脂質」を食べよう!

ダイエットするなら「やせる野菜と果物」を食べよう!

 

 おやつにはヨーグルトなどの乳製品を摂るようにしましょう。ドライ・プルーンなどの食物繊維の多い果物と一緒に食べるのも効果的です。

乳製品がダイエット効果を高める最新エビデンスを知っておこう!

ダイエットするなら「やせる野菜と果物」を食べよう!

 

 また、食事の前などにホエイなどの乳タンパク質のプロテインを飲むと食欲が減り、ダイエット効果を高めてくれます。

ホエイプロテインは食欲を抑える〜最新のエビデンスを知っておこう

 

 タンパク質といっても何でも良いわけではありません。健康的に良質なタンパク質を含む食品を選んで摂取することが効率的なダイエットにつながります。これまでに紹介した「やせる食事プレート」の他の食品とともに、タンパク質を上手に摂取してダイエット効果を高めていきましょう。

 

【やせる食事プレート】

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www.awin1.com

 

 

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◆ ダイエットの科学シリーズ

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シリーズ12:筋肉を減らさない科学的に正しいダイエット方法を知っておこう!【食事編】

シリーズ13:筋肉を減らさずにダイエットするならタンパク質の摂取量を増やそう!

シリーズ14:ダイエットで食欲を抑えたいならタンパク質を摂取しよう!

シリーズ15:タンパク質が食欲を減らすメカニズムを知っておこう!

シリーズ16:寝不足がダイエットの邪魔をする!〜睡眠不足が食欲を高める最新エビデンス

シリーズ17:ダイエットは超加工食品を避けることからはじめよう!

シリーズ18:ダイエットするなら「太る炭水化物」と「やせる炭水化物」を見極めよう!

シリーズ19:ダイエットするなら「白米よりも玄米」を食べよう!

シリーズ20:ダイエットするなら「やせる野菜と果物」を食べよう!

シリーズ21ダイエットするなら「健康に良い、やせる脂質」を食べよう!

シリーズ22:ダイエットするなら「おやつにナッツ」を食べよう!

シリーズ23:ダイエットするなら「ジュース(砂糖入り飲料)の中毒性」を断ち切ろう!

シリーズ24:ダイエットするなら「やせる飲みもの」を飲もう!

シリーズ25:タンパク質は食べるだけでエネルギーを消費できる!〜食事誘発性熱産生を知っておこう

シリーズ26:ダイエットするなら「赤い肉」よりも「白い肉」を食べよう!

シリーズ27:ダイエット中の食べすぎを防ぎたいなら、食事の前に「冷たい水」を飲もう!

シリーズ28:タンパク質はダイエットによる骨の減少を抑えてくれる!

シリーズ29:乳製品がダイエット効果を高める最新エビデンスを知っておこう!

シリーズ30:タンパク質がダイエット効果を高める最新エビデンスを知っておこう!

 

 

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◆ 参考文献

Roberts S, et al. One Strike against Low-Carbohydrate Diets. Cell Metab. 2015 Sep 1;22(3):357-8.

Unick JL, et al. Weight change in the first 2 months of a lifestyle intervention predicts weight changes 8 years later. Obesity (Silver Spring). 2015 Jul;23(7):1353-6.

Chopra S, et al. Predictors of successful weight loss outcomes amongst individuals with obesity undergoing lifestyle interventions: A systematic review. Obes Rev. 2021 Mar;22(3):e13148.

Weigle D, et al. A high-protein diet induces sustained reductions in appetite, ad libitum caloric intake, and body weight despite compensatory changes in diurnal plasma leptin and ghrelin concentrations. Am J Clin Nutr. 2005 Jul;82(1):41-8. 

Wycherley T, et al. Effects of energy-restricted high-protein, low-fat compared with standard-protein, low-fat diets: a meta-analysis of randomized controlled trials. Am J Clin Nutr. 2012 Dec;96(6):1281-98.

Wing R, et al. Long-term weight loss maintenance. Am J Clin Nutr. 2005 Jul;82(1 Suppl):222S-225S.

Larsen TM, et al. Diets with high or low protein content and glycemic index for weight-loss maintenance. N Engl J Med. 2010 Nov 25;363(22):2102-13.

Aller E, et al. Weight loss maintenance in overweight subjects on ad libitum diets with high or low protein content and glycemic index: the DIOGENES trial 12-month results. Int J Obes (Lond). 2014 Dec;38(12):1511-7.

Clifton P, et al. Long term weight maintenance after advice to consume low carbohydrate, higher protein diets--a systematic review and meta analysis. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2014 Mar;24(3):224-35.

Magkos F, et al. The role of dietary protein in obesity. Rev Endocr Metab Disord. 2020 Sep;21(3):329-340.

Magkos F, et al. Protein-Rich Diets for Weight Loss Maintenance. Curr Obes Rep. 2020 Sep;9(3):213-218.