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ダイエット中の食べすぎを防ぎたいなら、食事の前に「冷たい水」を飲もう!【最新エビデンス】


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 ダイエットがつづかない要因として挙げられているのが「週末の食事量」です。

 

 平日は食事の量を制限してダイエットを頑張れるのですが、週末にはそのご褒美として食べる量が増えてしまう傾向があります。この週末の食事量(エネルギー摂取量)の増加がダイエットしていても体重が増えてしまったり、体重減少が止まってしまう要因とされています(Racette S, 2008)。

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Fig.1:Racette S, 2008より筆者作成

 

 つまり、ダイエットの成功は、週末の「食べすぎ」を防ぐことにあるのです。

 

 これをTwitterで紹介したところ、「そんなことはわかってる!」や「そのくらいのご褒美は許してよ!」といったコメントが多く寄せられました。確かに、週末ぐらいはダイエットのストレスから開放されたいですよね。

 

 また、週末だけでなく、食事会や飲み会に行くと、ダイエット中でもついつい食べすぎてしまいます。これも、楽しい宴のときぐらい、我慢せずに食べたいですよね。

 

 しかしながら、週末や食事会での「ついつい食べすぎてしまうこと」がダイエットがつづかない要因になる可能性があるのです。

 

 では、これを防ぐ方法はあるのでしょうか?

 

 この問に、現代の栄養学はひとつのアドバイスをしています。

 

 「食事の直前に冷たい水を500ml飲みなさい」

 

 今回は、食事の前に冷たい水を飲むと、その後の食事の量(エネルギー摂取量)を減らせるという最新の研究報告をご紹介しましょう。



Table of content



◆ 食事の「直前」に水を飲もう!

 

 「食事の前に水を飲めば、胃が膨らんで食べる量を抑えられるのではないか?」

 

 ダイエットをするときに、こう考えたことがありませんか。

 

 じつは、この疑問は研究によっても実証されているのです。

 

 バージニア工科大学のWalleghenらは、健康な29名の若年者(21〜35歳)および21名の高齢者(60〜80歳)を被験者として集めて、2つのグループに分けました。

 

 ひとつのグループは食事の30分前に水を飲み(男性500ml、女性375ml)、もうひとつのグループは水を飲まずに、その後の食事を自由に摂取しました。両グループともに食事の前後に空腹感と満腹感が調査され、食事量からエネルギー摂取量が計測されました。

 

 その結果、食事の前に水を飲んだ高齢者のグループは、水を飲まなかったグループよりも食事前の空腹感が減少し、食事後の満腹感が増加したとともに、エネルギー摂取量の減少が認められました。しかし、若年者にはこのような結果は認められませんでした。

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Fig.2:Walleghen E, 2007より筆者作成

 

 これらの結果から、食事の前に水を飲むとその後のエネルギー摂取量を減らせることが示され、この効果は若年者よりも高齢者で認められることが示唆されたのです。

 

 では、なぜエネルギー摂取量の減少効果は、若年者では認められず、高齢者のみに認められたのでしょうか。

 

 その要因が「水が胃から排出される時間」にあったのです。

 

 水を飲むと胃が膨張します。するとその膨張を感知する胃のストレッチ受容体が活性化し、食事の摂取量を減らすことが動物実験によって報告されています(Paintal A, 1954)。

 

 しかしながら、水が胃から排出されると、このストレッチ受容体の活性化が軽減してしまいます。そこで考えられたのが、水が胃から排出される時間が若年者と高齢者で異なるのではないか?ということです。

 

 この問について、セント・ルイス大学のClarkstonらは、若年者と高齢者を対象に、液体と固形物が胃から排出される時間を計測しました。その結果、若年者と比較して高齢者では、液体が約26%、固形物が30%遅れることがわかりました(Clarkston WK, 1997)。

 

 この研究結果をもとに、ある仮説が浮かび上がります。

 

 若年者は高齢者よりも水が胃から排出される時間が短いのであれば、「食事の30分前ではなく、食事の直前に飲めば、その後の食事の摂取量を減らせるのではないか?」というものです。

 

 そして、これを検証したのが、ラフバラー大学のCorneyらです。

 

 Corneyらは、健康な若年者(平均年齢27歳)を対象に、食事の直前に568mlの水を飲むグループと、水を飲まないグループによるその後の食事量への影響を調査したランダム化比較試験(RCT)を行いました。

 

 その結果、食事に直前に水を飲んだグループは、水を飲まなかったグループよりも食事前の空腹感が減り、食事後の満腹感が増加したとともに、エネルギー摂取量の減少が認められました。

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Fig.3:Corney RA, 2016より筆者作成

 

 この結果から、若年者でも「食事の直前」に水を飲むことで、その後の食事量を減らせることが示唆されたのです。

 

 しかし、まだ疑問をもつ研究者がいました。

 

 その疑問が「水の温度も胃からの排出時間に影響するではないか?」ということです。



◆ 食事の直前に「冷たい水」を飲もう!

 

 飲んだ水が胃から排出されるまでの時間を遅くすると、その後の食事量を減らせることがわかりました。そのためには「食事の直前」に水を飲むことがポイントになります。

 

 では、飲む水の温度も胃からの排出時間に影響するのでしょうか?

 

 この問に対して、島根大学のMishimaらは、温度の異なる液体と固形物を摂取したときの胃からの排出時間を計測した結果、温度の高いほうが胃からの排出が早くなり、温度が冷たいほうが排出が遅くなることを明らかにしました(Mishima Y, 2009)。

 

 そして、この研究報告をもとに食事の前に温度の異なる水を飲むと、その後の食事量にどのような影響を与えるのかを調査したのが早稲田大学のFujihiraらです。

 

 Fujihiraらは、被験者(平均年齢23.4歳)は食事の5分前に3つの異なる温度(2°C、37°C​​、60°C)の水を500ml摂取し、その後の食事の摂取量、胃の運動性を計測しました。

 

 その結果、2℃の水の摂取は37℃、60℃の水よりも食前の空腹感が低下し、食事のエネルギー摂取量がそれぞれ19%、26%減少することが示されました。また、2℃の水はもっとも胃の運動性が低下することがわかりました。

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Fig.4:Fujihira K, 2020より筆者作成

 

 この結果から、食事の前に冷たい水(2℃)を飲むことは、胃の運動性を低下させ、その後の食事のエネルギー摂取量をもっとも減らすことが示されたのです。

 

 これらの研究結果から、食事の前に水を飲んで、その後の食事量を減らすには、食事の「直前」に「冷たい水」を飲むことがもっとも効果的であることが示唆されているのです。

 

 では、このような方法は実際に体重を減らすことができるのでしょうか?



◆ 食事の前に水を飲むと痩せる科学的根拠

 

 バーミンガム大学のParrettiらは、12週間における食事の前に水を飲むことによる体重への影響を検証するランダム化比較試験(RCT)を行いました。

 

 被験者は84名の肥満の成人(平均年齢56.5歳)を対象として、食事の前に500mlの水を飲むグループと、食事の前に「お腹いっぱい」であるとイメージするグループに分けて、12週間による体重の変化を計測しました。

 

 その結果、両グループともに体重が減少しましたが、食事の前に水を飲むグループは、水を飲まないグループよりも有意な減少効果(平均-1.3kg)が認められました。また1日3回のすべての食事で水を飲んだ被験者は、最大で4.3kgの減少を示しました。

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Fig.5:Parretti HM, 2015より筆者作成

 

 ParrettiらのRCTの結果から、継続的に食事の前に水を飲むことは、体重の減少効果に寄与することが示唆されました。

 

 このように、食事の前に水を飲むことは、その後の食事量を減少させ、継続することで体重を減少させることが科学的根拠をもって示されているのです。

 

 

 食事の前に500ml以上の水を飲むと痩せると言われても、毎回の食事で実践するのはさすがに難しいと思います。それでも、ついつい食べすぎてしまう週末や食事会、飲み会などでは、この方法は使えるかもしれません。

 

 週末の食事では、ダイエットのご褒美として、ついつい食べすぎてしまいます。そのときは食事の前に水を飲むことで、食べすぎを抑えられる可能性があるでしょう。また食事会などでも応用可能と思います。そこでポイントになるのが、食事の「直前」に「冷たい水」を飲むということです。

 

 ダイエットを継続するためにも、食事量を減らすのではなく、食欲を減らすように「食事の直前に冷たい水を飲む」という予防法を上手に使うのも良いかもしれませんね。

 

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◆ 参考文献

Racette S, et al. Influence of weekend lifestyle patterns on body weight. Obesity (Silver Spring). 2008 Aug;16(8):1826-30. 

Walleghen E, et al. Pre-meal water consumption reduces meal energy intake in older but not younger subjects. Obesity (Silver Spring). 2007 Jan;15(1):93-9.

Paintal A, et al. A study of gastric stretch receptors; their role in the peripheral mechanism of satiation of hunger and thirst. J Physiol. 1954 Nov 29;126(2):255-70.

Clarkston WK, et al. Evidence for the anorexia of aging: gastrointestinal transit and hunger in healthy elderly vs. young adults. Am J Physiol. 1997 Jan;272(1 Pt 2):R243-8.

Corney RA, et al. Immediate pre-meal water ingestion decreases voluntary food intake in lean young males. Eur J Nutr. 2016 Mar;55(2):815-819.

Mishima Y, et al. Gastric emptying of liquid and solid meals at various temperatures: effect of meal temperature for gastric emptying. J Gastroenterol. 2009;44(5):412-8.

Fujihira K, et al. The effects of water temperature on gastric motility and energy intake in healthy young men. Eur J Nutr. 2020 Feb;59(1):103-109.

Parretti HM, et al. Efficacy of water preloading before main meals as a strategy for weight loss in primary care patients with obesity: RCT. Obesity (Silver Spring). 2015 Sep;23(9):1785-91.