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ダイエットするなら「砂糖入り飲料の中毒性」を断ち切ろう!【最新エビデンス】


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 ダイエットしたいのなら「清涼飲料や炭酸飲料などの砂糖入り飲料を飲んではいけない」というのは、誰もが納得することだと思うのですが、これが結構、難易度が高いんですよね。

 

 タバコのニコチン、お酒のアルコールにも中毒性があります。そのため、習慣的にタバコを吸っている人を急に禁煙させたり、お酒を飲んでいる人を急に禁酒をさせることはとても難しいでしょう。

 

 これと同じように、習慣的に砂糖入り飲料を飲む人に「ダイエットのために今日から飲んではいけません」と言っても、なかなかやめられないものなのです。

 

 なぜなら、砂糖には「中毒性」があるから。 

 

 では、どうしたら砂糖入り飲料の中毒性を断ち切ることができるのでしょうか?

 

 今回は、砂糖入り飲料で太る科学的根拠(エビデンス)を確認しながら、砂糖入り飲料をやめるための方法論について最新の研究報告をご紹介しましょう。

  

 

Table of contents

 

◆ 砂糖入り飲料は確実に太るエビデンス

 

 砂糖入り飲料を飲むと太るというのはイメージできると思いますが、これは科学的にもエビデンスのレベルがもっとも高い研究手法によって明らかにされています。

 

 ハーバード公衆衛生大学院のMalikらは、2006年に砂糖入り飲料を飲むことによる体重への影響を調査した30の研究結果をもとにしたシステマティックレビューを報告しました。

*システマティックレビューとは、これまでに報告された研究結果をくまなく調査し、ランダム化比較試験(RCT)のような質の高い研究データを、バイアスを可能な限りなく除いて分析したエビデンスレベルがもっとも高い研究手法。

 

 その結果、砂糖入り飲料の摂取量が増えると、子供でも大人でも時間の経過とともに体重の増加と肥満のリスクが高くなることが示されました。

 

 また1年間で子供の砂糖入り飲料の摂取量を減らすと、減らさない子供と比べて体重が大幅に減少することがわかりました。さらに大人の25週間のランダム化比較試験(RCT)では、砂糖入り飲料の摂取量を減らすことは体重の減少に寄与し、とくに肥満である被験者の体重の減少と強い関連が示されました(Malik VS, 2006)。

 

 さらにMalikらは、2013年に砂糖入り飲料を飲むことが体重に与える影響についてのメタアナリシスを報告しました。

*メタアナリシスとは、これまでに報告された同じテーマの研究結果を集めて、全体としてどのような傾向をがあるのかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究手法のことをいいます。

 

 Malikらは、これまでに報告された32の研究結果、約20万3千名を対象に解析を行った結果、砂糖入り飲料の摂取を1日にコップ1杯増やすと、1年間で子供のBMI(体格指数)が増加し、逆に飲むことをやめるとBMIの減少が認められました。

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Fig.1:Malik VS, 2013より筆者作成

 

 また、大人においても砂糖入り飲料の摂取を1日にコップ1杯増やすと体重の増加との関連が示され、介入研究をまとめた解析結果においても砂糖入り飲料の摂取量の増加が体重の増加に寄与することが認められました(Malik VS, 2013)。

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Fig.2:Malik VS, 2013より筆者作成

 

 これらの結果は、子供でも大人でも砂糖入り飲料の摂取量を増やせば体重が増加し、摂取量を減らせば体重が減少するという科学的根拠(エビデンス)を示しています。

 

 このように経験的だけでなく、科学的にも砂糖入り飲料を飲むと太るエビデンスが明らかになっているのです。それだけでなく、砂糖入り飲料を飲むのをやめれば体重が減ることも示されています。

 

 そこで科学的に推奨されているのが「砂糖入り飲料をやめて水を飲もう」ということです。

 

 

◆ 砂糖入り飲料をやめて水を飲むとやせるエビデンス

 

 砂糖入り飲料を「水」に置き換えて飲むことは、とても効果的なダイエット方法になります。

 

 2013年、ハーバード公衆衛生大学院のPanらは、砂糖入り飲料から他の飲みものに置き換えることよる体重への影響を調査した3つの大規模研究をまとめて解析しました。

 

 12万4千名を対象として、砂糖入り飲料から他の飲み物(水、コーヒー、紅茶、人工甘味料入り飲料、低脂肪牛乳)に置き換えたことによる4年間の体重への影響が解析されました。解析では年齢や体格指数(BMI)、その他のライフスタイル行動(食事、喫煙習慣、運動、アルコール、睡眠時間、テレビ視聴など)が調整されています。

 

 その結果、砂糖入り飲料を1日1杯、他の飲みものに置き換えて摂取すると、すべての飲みものにおいて体重の減少が認められました。そのなかでも、もっとも体重の減少が示されたのが水とコーヒーであり、ついで人工甘味料入り飲料、紅茶、低脂肪牛乳となりました。

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Fig.3:Pan A, 2013より筆者作成

 

 これらの結果から、Panらは砂糖入り飲料をこれらの砂糖が入っていない飲みものに置き換えて摂取することは中程度のダイエット効果をもたらすことができると結論づけています。その中でも、とくに水に置き換えて摂取することは、もっとも体重を減らせるとともにコストのかからない現実的な方法として推奨しています(Pan A, 2013)。

 

 しかし、そう簡単にやめられないのが砂糖入り飲料です。

 

 なぜなら、砂糖入り飲料には「中毒性」があるからです。



◆ 砂糖入り飲料による中毒性のメカニズム

 

 砂糖は2つの糖類が組み合わさってできています。それがブドウ糖である「グルコース」と果糖である「フルクトース」です。

 

 砂糖 = グルコース + フルクトース

 

 砂糖入り飲料による中毒性は、果糖であるフルクトースによって生じます。

 

 フルクトースはグルコースの2倍の甘みをもつ糖類であり(Grembecka M, 2015)、砂糖入り飲料が甘くて美味しいのもフルクトースの甘みが関与しています。

 

 さらに近年では、工業化によって加工された「高果糖コーンシロップ(日本では果糖ブドウ糖液糖)」が低価格で大量に生産され、これが砂糖入り飲料に多く含まれることで以前よりもフルクトースの摂取量が増えているのです。

 

 フルクトースが多い砂糖入り飲料を飲むと「甘くて美味しい」という味覚が脳内でβエンドルフィンという快感物質の分泌を高めます。すると、この情報が中脳の腹側被蓋野に送られ、ドーパミン作動性ニューロンが興奮し、側坐核という部分にドーパミンを放出します。これにより「甘くて美味しい」という快感(報酬)を得た行動(砂糖入り飲料を飲む)が強化されます(DiNicolantonio J, 2018)。

 

 このような快感(報酬)を得た行動を強化する機能を「報酬系」といいます。この報酬系によって「砂糖入り飲料を飲む→甘くて美味しいという快感を得る→もっと飲みたい」というループが強化されることで中毒性が生じてしまうのです。

 

 ダイエットのために急に砂糖入り飲料をやめて、代わりに水を飲むようにしても、脳はこう誘惑してくるでしょう。

 

 「甘くて美味しいジュースを飲もうよ」

 

 すると、僕たちはコンビニの棚に並んでいる飲料から、ついつい砂糖入り飲料を手にとってしまうのです。

 

 では、どうすれば砂糖入り飲料による中毒性をなくして、水などの砂糖が入っていない飲料を飲むことを習慣化できるのでしょうか

 

 そこで提案されている方法が「人工甘味料入り飲料」へのシフトです。

 

 

◆ まずは、人工甘味料入り飲料にシフトしよう!

 

 Panらの報告でも、砂糖入り飲料を人工甘味料入り飲料に置き換えることによる減量効果が示されていましたが、近年のランダム化比較試験(RCT)でもその有効性が報告されています。

 

 ボストン小児病院のEbbelingらは、砂糖入り飲料を習慣的に飲んでいる203人の成人(男性121人、女性82人)を被験者としてランダムに3つのグループに分けらました。グループは砂糖入り飲料のみを飲むグループ、人工甘味料入り飲料のみを飲むグループ、砂糖が入っていない水を飲むグループとされています。12ヶ月の間、これらの飲料が無料で自宅に届けられ、前後の体重、脂肪量、中毒性としての甘みへの欲求が調査されました。

 

 その結果、砂糖入り飲料を摂取したグループは体重と脂肪量の増加が認められましたが、人工甘味料入り飲料、水を摂取したグループでは体重と脂肪量の減少が認められました。とくに内臓脂肪型肥満の被験者にこの傾向が強く示されました。

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Fig.4:Ebbeling CB, 2020より筆者作成

 

 また、甘みへの欲求は砂糖入り飲料では増加し、水では減少しましたが、人工甘味料入り飲料では、わずかな増加を示しました。

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Fig.5:Ebbeling CB, 2020より筆者作成

 

 この結果から、Ebbelingらは習慣的に砂糖入り飲料を飲んでいる場合、急に水などの砂糖が入っていない飲料に置き換えるのではなく、一旦、人工甘味料入の飲料にシフトしても体重を減少させることができると推察しています。

 

 ここで注意したいことは、砂糖入り飲料から人工甘味料入り飲料にシフトしても中毒性としての甘みへの欲求は消えないということです。中毒性を完全になくすためには、最終的に水などの砂糖が入っていない飲料に置き換える必要があります。

 

 この見解は、アメリカ心臓協会(AHA)も支持しており、これまでに報告された人工甘味料入り飲料による体重への影響についての研究結果をレビューした結果、習慣的に砂糖入り飲料を摂取している場合は、低カロリーな人工甘味料入り飲料を介して、その後に水に移行するという段階的な置き換えを推奨しているのです(Johnson RK, 2018)。

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 数百万年前の旧石器時代は食糧事情の厳しい時代であり、甘みのある糖はエネルギー源であるグルコースを含む希少な栄養素でした。自然淘汰により甘い糖を好むものが半飢餓の時代を生き残り、その子孫である僕たちの脳にも甘みを欲するプログラムがインストールされています。

 

 しかし、現代では糖を大量に含む砂糖入り飲料をコンビニでも自動販売機でも手に入れることができ、好きなだけ摂取することができます。この時代背景のミスマッチが肥満をつくりあげているとされています。

 

 習慣的に砂糖入り飲料を飲んでいる場合、ダイエットのために急にやめて水に置き換えようとしても、糖が大好きな脳は無意識にあなたを誘惑してきます。その誘惑に負けないためには、一度、人工甘味料入り飲料にシフトして、その後に水などの砂糖が入っていない飲料に置き換えることで脳の中毒性を緩和しながら、ダイエット効果を高めることができるでしょう。

 

 さいごに、やせる食事プレートに「やせる飲み物」を追加しておきます。

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◇ ダイエットの最新エビデンスをまとめた新刊です!

 

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◆ 参考文献

Malik VS, et al. Intake of sugar-sweetened beverages and weight gain: a systematic review. Am J Clin Nutr. 2006 Aug;84(2):274-88. 

Malik VS, et al. Sugar-sweetened beverages and weight gain in children and adults: a systematic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2013 Oct;98(4):1084-102.

Pan A, et al. Changes in water and beverage intake and long-term weight changes: results from three prospective cohort studies. Int J Obes (Lond). 2013 Oct;37(10):1378-85.

Grembecka M, et al. Natural sweeteners in a human diet. Rocz Panstw Zakl Hig. 2015;66(3):195-202.

DiNicolantonio J, et al. Sugar addiction: is it real? A narrative review. Br J Sports Med. 2018 Jul;52(14):910-913.

Ebbeling CB, et al. Effects of Sugar-Sweetened, Artificially Sweetened, and Unsweetened Beverages on Cardiometabolic Risk Factors, Body Composition, and Sweet Taste Preference: A Randomized Controlled Trial. J Am Heart Assoc. 2020 Aug 4;9(15):e015668.

Johnson RK, et al. Low-Calorie Sweetened Beverages and Cardiometabolic Health: A Science Advisory From the American Heart Association. Circulation. 2018 Aug 28;138(9):e126-e140.

 

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