リハビリmemo

理学療法士・トレーナーによる筋トレやダイエットについての最新の研究報告を紹介するブログ

ぽっこりお腹を減らしたいならダイエットで「運動」をするべき科学的根拠


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 ダイエットで体重を減らしても、その8割はリバウンドしてしまいます。なぜ、リバウンドしてしまうのかというと、進化の過程でヒトの脳には失った脂肪を取り戻すプログラムがインストールされているからです。

 

 脂肪が減ったことを脳が感知すると、食欲の増大によりエネルギー摂取量を増やして、エネルギー消費量を減らす生理学的反応を生じさて脂肪を蓄積させようとします。これがリバウンドのメカニズムです。

ダイエットを成功させたいなら「リバウンドのメカニズム」を知ってこう!

 

 このような脳の生理学的反応を抑える効果が期待されているのが「運動」です。

 

 運動することは、一時的でも継続的でも食欲を抑え、しっかりと満腹感を生じさせることでエネルギー摂取量の増加を抑えます。また筋肉量を増やし、運動自体による活動時エネルギー消費量の増加によって総エネルギー消費量を増やします。このような運動による効果が脳の生理学的反応を抑え、リバウンドを防いでくれるのです。

ダイエットでリバウンドを防ぐなら「運動」をするべき科学的根拠

 

 そして、ダイエットで運動することには、もうひとつの重要な意味があります。

 

 それが「内臓脂肪の減少」です。

 

 今回は、運動が内臓脂肪を効果的に減らすという科学的根拠(エビデンス)を示した研究報告をご紹介しましょう。



Table of contents

 


◆ 肥満には「健康な肥満」と「不健康な肥満」がある

 

 脂肪は、蓄積される部位によって内臓脂肪と皮下脂肪に分けられます。一般的には、脂肪全体の2割が内臓脂肪であり、8割が皮下脂肪とされます。中年男性に見られるようなぽっこりお腹の肥満は、内臓脂肪が蓄積しているタイプの肥満であり、これは「内臓脂肪型肥満(りんご型)」といいます。これに対して、太もも(大腿部)や臀部の皮下に脂肪が蓄積しているタイプの肥満を「皮下脂肪型肥満(洋ナシ型)」といいます。

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 どちらの肥満が健康に悪いのかというと「内臓脂肪型肥満」になります。なぜなら、内臓脂肪型肥満は、皮下脂肪型肥満よりも生活習慣病との関連が高く、糖尿病や高血圧、脂質異常症の危険因子とされているからです。ぽっこりお腹は不健康の象徴なのです。

 

 では、なぜ、内臓脂肪型肥満では生活習慣病のリスクが高くなるのでしょうか?

 

 その理由のひとつが「脂肪肝の発症」です。

 

 内臓脂肪は皮下脂肪よりも分解しやすい特徴があります。内臓脂肪が蓄積したぽっこりお腹になると、空腹時には内臓脂肪が分解され、血液中に多くの脂肪酸が放出されます。内臓脂肪は小腸から肝臓につながっている門脈と密接であり、放出された脂肪酸は門脈を通じて肝臓に送られます。すると、肝臓に脂肪が蓄積してしまい「脂肪肝」が生じてしまいます。脂肪肝脂質異常症を生じさせ、狭心症心筋梗塞など心疾患の合併率が高く、生活習慣病の温床となることが示唆されています(Després JP, 2006)。

 

 もうひとつの理由が「アディポサイトカインの分泌異常」です。

 

 脂肪はさまざまな生理機能をもつ物質を分泌しており、これをアディポサイトカインといいます。アディポサイトカインは全身のエネルギー代謝に大きな影響を与えており、糖尿病の原因であるインスリン抵抗性に関与するTNFα、レジスチン、高血圧に関与するアンギオテンシノーゲン、動脈効果に関与するPAI-1などは、主に内臓脂肪から分泌することが示唆されています(Higashida K,  2013)。

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 このように、内臓脂肪が多く蓄積すると、脂肪肝の発症リスクを高めるとともに、アディポサイトカインの分泌異常によって糖尿病や高血圧といった生活習慣病のリスクを高めてしまいます。同じ肥満でもぽっこりお腹の内臓脂肪型肥満は、皮下脂肪の多い皮下脂肪型肥満よりも「不健康な肥満」なのです。

 

 ダイエットで内臓脂肪を減らすことは、生活習慣病のリスクを減らすという重要な意味をもっており(Tchernof A, 2013)、たとえダイエットをして体重を減らしたとしても、内臓脂肪が十分に減らないようではダイエットの真の成功とは言えないのです。

 

 では、内臓脂肪を効果的に減らすにはどうしたら良いのでしょうか?



◆ 食事制限は体重を、運動は内臓脂肪を減らす

 

 ダイエットをするなら運動か食事制限か?という問いに、現代の健康科学はこう答えています。

 

 「体重を減らすなら食事制限が効果的である」

 

 食事制限によるエネルギー(カロリー)制限ダイエットは、運動トレーニングよりも体重の減少効果が高いというエビデンスが報告されています(Franz MJ, 2007)。

 

 たとえば、400kcalのエネルギー量を減らそうとすると、食事制限では400kcalのエネルギー制限(フライドポテトをサラダに置き換えるなど)を行えば良いですが、運動で400kcalを減らそうとするとジョギング(最大酸素摂取量50%の中強度の運動)を45分もしなければなりません。こような観点からも食事制限は運動よりも体重の減少効果が高いことがわかります。

ダイエットするなら運動よりも食事制限から始めるべき科学的根拠

 

 しかし、内臓脂肪を減らそうとすると、話は異なります。

  

 ラドバウド大学医療センターのVerheggenらは、これまでに報告された食事制限あるいは運動による体重や内臓脂肪への減少効果について検証した117件の研究報告(4,815名)をもとにしたメタアナリシスを行いました。

 

 18歳以上で体格指数(BMI)25以上の太り過ぎから肥満である被験者を対象として、運動トレーニングは、最低4週間、最低20分間、週に2回以上、低強度から高強度の有酸素運動が主に行われました。食事制限は、最低4週間、いつも摂取しているエネルギー摂取量の少なくとも10%(女性2,000kcal、男性2,500 kcal)のエネルギー(カロリー)制限食が摂取されました。

 

 その結果、体重の減少効果は、食事制限が運動よりも高いことが示されましたが、内臓脂肪の減少効果は、運動が食事制限よりも高い傾向であること示されました。

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Fig.1:Verheggen RJ, 2016より筆者作成

 

 また、体重の減少がない場合では、内臓脂肪の減少は運動により6.1%の減少と関連が認められましたが、食事制限では1.1%と実質的な変化は認められませんでした。

 

 さらにVerheggenらは、これらの結果から、運動または食事制限によって体重を5%減少させた場合、内臓脂肪の減少は運動で21.3%の減少であり、食事制限では13.4%の減少に留まることを示唆しています。

 

 これらの結果から、食事制限は体重の減少効果に大きく寄与し、運動は内臓脂肪への減少効果が高いことが示唆されているのです。

 

 運動が内臓脂肪を減らすメカニズムは明らかになっていませんが、潜在的な要因とされているのが「カテコラミン」というホルモンです。

 

 高強度の運動を行うと、自律神経の交感神経が活性化され、カテコラミンが増加します。カテコラミンはアドレナリン受容体を介して、脂肪分解を促進しエネルギー合成を高めます。このアドレナリン受容体は皮下脂肪よりも内臓脂肪に多く存在することから、運動により内臓脂肪が減少しやすいことが示唆されています(Rebuffé-Scrive M, 1989)。

 

 これらの知見から、ダイエットで体重を減らすだけでなく、しっかりと内臓脂肪も減らすためには、食事制限のみで頑張るよりも食事制限に運動を加えることが効果的になるのです。

 

 これがダイエットで運動をするべき「もうひとつの理由」です。

 

 ダイエット初期では食事制限のみでも効果的に減量効果が期待できます。しかし、体重が減っていくと脂肪を取り戻すような生理学的反応が生じ、リバウンドの要因となります。この生理学的反応を抑えるには、運動を取り入れることが有効になります。

 

 そして、生活習慣病の要因とされる内臓脂肪を減らすためにも食事制限に運動を取り入れるべきであり、これによって、ただ痩せるのではなく「痩せて健康的な身体になる」というダイエットの真の成功に近づくことができるでしょう。 

 

 

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◆ ダイエットの科学シリーズ

シリーズ1:「朝食を食べないと太る」というのは都市伝説?〜最新エビデンスを知っておこう

シリーズ2:ダイエットが続かないのは「寝不足」が原因?【最新エビデンス】

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シリーズ6:ダイエットするなら「太るメカニズム」を理解しよう!〜脂質編〜

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シリーズ11:ダイエットすると筋肉量や筋力が減ってしまう科学的根拠を知っておこう!

シリーズ12:筋肉を減らさない科学的に正しいダイエット方法を知っておこう!【食事編】

シリーズ13:筋肉を減らさずにダイエットするならタンパク質の摂取量を増やそう!

シリーズ14:ダイエットで食欲を抑えたいならタンパク質を摂取しよう!

シリーズ15:タンパク質が食欲を減らすメカニズムを知っておこう!

シリーズ16:寝不足がダイエットの邪魔をする!〜睡眠不足が食欲を高める最新エビデンス

シリーズ17:ダイエットは超加工食品を避けることからはじめよう!

シリーズ18:ダイエットするなら「太る炭水化物」と「やせる炭水化物」を見極めよう!

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シリーズ28:タンパク質はダイエットによる骨の減少を抑えてくれる!

シリーズ29:乳製品がダイエット効果を高める最新エビデンスを知っておこう!

シリーズ30:タンパク質がダイエット効果を高める最新エビデンスを知っておこう!

シリーズ31:週末に寝だめをしても睡眠不足による食欲の増加は防げない!

シリーズ32:ダイエットするなら運動よりも食事制限から始めるべき科学的根拠

シリーズ33:ダイエットを成功させたいなら「リバウンドのメカニズム」を知ってこう!

シリーズ34:ダイエットでリバウンドを防ぐなら「運動」をするべき科学的根拠

シリーズ35:ぽっこりお腹を減らしたいならダイエットで「運動」をするべき科学的根拠

 

 

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◆ 参考文献

Després JP, et al. Abdominal obesity and metabolic syndrome. Nature. 2006 Dec 14;444(7121):881-7.

Higashida K, et al. Effects of resveratrol and SIRT1 on PGC-1α activity and mitochondrial biogenesis: a reevaluation. PLoS Biol. 2013 Jul;11(7):e1001603.

Tchernof A, et al. Pathophysiology of human visceral obesity: an update. Physiol Rev. 2013 Jan;93(1):359-404.

Franz MJ, et al. Weight-loss outcomes: a systematic review and meta-analysis of weight-loss clinical trials with a minimum 1-year follow-up. J Am Diet Assoc. 2007 Oct;107(10):1755-67.

Verheggen RJ, et al. A systematic review and meta-analysis on the effects of exercise training versus hypocaloric diet: distinct effects on body weight and visceral adipose tissue. Obes Rev. 2016 Aug;17(8):664-90.

Rebuffé-Scrive M, et al. Metabolism of adipose tissue in intraabdominal depots of nonobese men and women. Metabolism. 1989 May;38(5):453-8.