リハビリmemo

大学病院勤務・大学院リハビリテーション学所属の理学療法士・トレーナーによる「研究と臨床をつなげるための記録」

長生きの秘訣は筋トレにある

加齢とともに、私たちの筋肉は減少し、脂肪は増加していきます。 40歳から80歳までに筋肉は男性で10.8%、女性で6.4%減少し、それに対して内臓脂肪は男性で42.9%、女性で65.3%も増えることが報告されています(Yamada M, 2014)。 Fig.1:Yamada M, 2014より…

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう(2017年7月版)

2017年7月の雑誌BJSM(British Journal of Sports Medicine)に「トレーニング後のタンパク質の摂取量」についての最新のレビューとメタ解析の結果が報告されたのでキャッチアップしておきましょう。 今回のレビューで示されたメッセージは「トレーニング後…

慢性の腰痛では大殿筋が筋萎縮する(論文紹介)

平成28年の国民生活基礎調査における有訴者率(病気やケガなどで自覚症状のある人の割合)で男性1位、女性2位となった現代の健康問題は何でしょうか? それは「腰痛」です。 図:平成28年の国民生活基礎調査より筆者作成 腰痛を発症させる動作のひとつに持ち…

筋トレとアルコール摂取の残酷な真実

2014年2月、私たちにとって、あまりにも残酷な事実が公表されました。 「トレーニング後のアルコール摂取は筋肥大の効果を減少させる」 トレーニング後のアルコール摂取は格別な幸福を与えてくれます。厳しく、辛い自分との戦いを終えたあとに、最大の安らぎ…

肩関節の外旋筋力の評価によって腱板断裂の所見が予測できる(論文紹介)

徒手筋力評価によって、腱板断裂の所見(断裂サイズや腱の脂肪浸潤)を予測することは出来るのでしょうか? 今回は、カナダ・サニーブルックス健康科学センターのRazmjouらの肩の外旋筋力と腱板断裂の所見との関係性を調査した報告をご紹介します。 腱板断…

脳卒中後のStiff-knee gaitには中間広筋が関与している(論文紹介)

脳卒中後のStiff-knee gait(SKG)は「歩行の遊脚期にみられる麻痺側下肢の膝屈曲の減少または遅延」と定義されています(Perry J, 1992)。SKGでは歩行の遊脚期にみられる膝関節の屈曲が減少するため、足部のクリアランスの低下を招き、転倒リスクを増加さ…

筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう(2017年7月版)

2017年7月にスポーツ医学雑誌として有名なSports medicineから「レジスタンストレーニングのセット数」についての最新のレビューが報告されましたので、本ブログでもキャッチアップしておきます。 Table of contents ◆ これまでのセット数の研究に対する疑問…

いつまでも若々しい筋肉を維持するためには筋トレだけじゃ不十分?

加齢による筋肉の衰えからは誰しも逃れることはできません。 多くのメディアやブログでは、加齢に負けず若々しい身体でいるために「筋トレ」を推奨しています。しかし、現代の運動生理学は次のようにいいます。 「筋トレだけでは不十分である」 2014年、筑波…

ランニングエコノミーがランニングパフォーマンスを高める理由を知っておこう

フルマラソンの世界記録10傑を見てみると、10人ともにアフリカの選手であることがわかります。なぜアフリカの選手はこれほどまでにランニングパフォーマンスが高いのでしょうか? この問に対して、ランニングに関する多くの変数をもとに分析したラフバラー大…

ランニングのメカニズムとランニングエコノミーについて知っておこう

1921年に世界でフルマラソンの標準距離「42.195km」が示されてから約100年が過ぎようとしています。これまで「ヒトは42.195kmをどのくらいの時間で走ることができるのか?」というテーマが運動生理学者たちの知的好奇心を煽ってきました。 1998年にはLiuとSc…

筋トレの効果を最大にするベータアラニンについて知っておこう

スポーツ運動生理学の発展により、トレーニングの効果は総負荷量やセット数、セット間の休憩時間などの変数によって決まることが明らかになっています。 トレーニング = 総負荷量 × セット数 × セット間の休憩時間 × トレーニング頻度 etc 『筋力トレーニン…

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取方法まとめ(ISSN 2017より)

国際スポーツ栄養学会(ISSN)による「タンパク質の摂取とエクササイズ」というレビューが今年の6月に改訂されましたので、さっそくキャッチアップしておきましょう。 ISSNによる最初のレビューは2007年だったのですが、このレビューは20万件を超えるアクセ…

脳卒中のリスクを減少させるタンパク質摂取の最適戦略とは?

「タンパク質の摂取は脳卒中になるリスクを減少させる」 2014年、南京大学のZhangらは、これまでに報告された7つの研究(254,489名を対象)からタンパク質の摂取と脳卒中の発症リスクについてのメタアナリシスを報告しています。 その結果は、動物性タンパ…

筋トレの効果を最大にするロイシンについて知っておこう

市販されているプロテイン・サプリメントは数多くあり、そのもととなるタンパク質の種類には、乳タンパク質のホエイやカゼイン、大豆タンパク質のソイなどがあります。そのため「どのタンパク質がもっともトレーニングの効果を高めるのか?」という声をよく…

筋トレの効果を最大にするタンパク質の品質について知っておこう

筋肉のもとである筋タンパク質は、トレーニングとタンパク質の摂取によって、その合成作用を増加させ、筋肉を肥大させます。 筋タンパク質の合成作用 = トレーニング × タンパク質の摂取 トレーニングの成果を最大にするためには、摂取するタンパク質の摂取…

変形性膝関節症のウォーキングの注意点を知っておこう

「なるべくウォーキングをしましょう」 変形性膝関節症や変形性股関節症の保存療法において、多くの医療者はウォーキングを推奨しています。 歩行の機会が少なくなると関節症の悪化や筋力の低下、心肺および血管機能の低下が進み、生活の質(QOL)が損なわれ…

筋トレの効果を最大にするトレーニングの頻度について知っておこう

「筋タンパク質の合成作用を最大化させる」 現代のスポーツ運動生理学は、筋力トレーニングの目的についてこのように述べています。効果的なトレーニングとは、筋肉のもとである筋タンパク質の合成作用を効率的に高めるトレーニングのことを言います。現在で…

筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間について知っておこう

近年のスポーツ運動生理学、スポーツ栄養学の発展にともない、筋力トレーニングに対する考え方の大きなパラダイムシフトが起きています。 これらの学問では、トレーニングの効果を最大にするためには「筋タンパク質の合成作用を高めるトレーニング内容、タン…

筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう

2009年、アメリカスポーツ医学会(American College of Sports Medicine:ACSM)から「レジスタンストレーニングのガイドライン」が発表され、現代のトレーニング方法の基準となっています。(American College of Sports Medicine. 2009)。 しかし、近年、…

変形性股関節症・変形性膝関節症の保存療法によるリスクを知っておこう

「手術をすべきか、しないべきか」 多くの患者さんが迷うところだと思います。 この判断をするためには、手術による利点とリスク、手術をしないことによる利点とリスクを正しく理解することが大切です。 変形性股関節症や変形性膝関節症の主な手術は、人工股…

筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)の実践論

現代のスポーツ運動生理学は、トレーニングによって効果的に筋肉を肥大させるためには「自分を追い込み、総負荷量を増やせ」と言います。 これまで筋肉を肥大させるためには、高強度のトレーニングを行うことが推奨されてきました。これは高い運動強度によっ…

筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)について知っておこう

トレーニングによって筋肥大を起こさせるためには、筋肉を構成する筋タンパク質の合成作用が分解作用を上回らなければなりません。 筋肥大=筋タンパク質の合成作用 > 分解作用 筋タンパク質の合成作用は、トレーニング内容とタンパク質の摂取状況というふ…

筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取の方法論

2016年、オランダ・マーストリヒト大学のTrommelenらは、雑誌Nutrientsで就寝前のタンパク質摂取がトレーニング効果を高める根拠や、その方法論について体系化させたレビュー(まとめ)を報告しています(Trommelen J, 2016)。現代のスポーツ栄養学では、就…

筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取を知っておこう

私たちの筋肉が増えたり、減ったりするのは、筋肉のもとである筋タンパク質の合成作用と分解作用のバランスによって決まります。筋肉を増やすためには、筋タンパク質の合成作用が分解作用を上回らなければなりません。 『筋肉を増やすための栄養摂取のメカニ…

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう

筋肉は筋タンパク質によって作られています。筋タンパク質は24時間、いつも合成と分解を繰り返していますが、私たちの筋肉の量が保たれているのは筋タンパク質の合成と分解のバランスが釣り合っているからです。 『筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを…

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう

前回はタンパク質の摂取量についてスポーツ栄養学の知見から考察してきました。 『筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう』 今回はタンパク質を摂取する「タイミング」に目を向けてみましょう。タンパク質はいつでも摂取すれば良いとい…

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

筋肉を構成する筋タンパク質は、食事により摂取されたタンパク質(アミノ酸)の量に依存して作られます(合成されます)。この筋タンパク質を合成する量が分解する量を上回ることによって筋肉が増えます。 『筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを理解し…

筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを理解しよう

「科学により裏付けされたタンパク質の摂取方法(量や質、タイミング)を実践することで、日頃のトレーニングの効果を最大限に引き出すことが可能になる」 現代のスポーツ栄養学では、効率的に筋肉を増やす方法についてこのように述べています。近年、アミノ…

脳卒中後の効果的な立ち上がり動作トレーニングとは?

脳卒中後の転倒事例の37%が立ち上がり動作時に生じていることが報告されています(Nyberg L, 1995)。脳卒中により麻痺した下肢の支持性が低下し、体重をかけることが難しくなり、立ち上がり動作時に非麻痺側へ体幹が逸脱してしまうため、転倒が起きやすくな…

人工股関節置換術・人工膝関節置換術の再置換率を知っておこう

手術をするか、しないかの決断は、手術による利益とリスクのバランスによって判断されます。利益が大きくリスクが少なければ手術を選択しやすいですが、あまりにリスクが大きい場合には、手術を躊躇するでしょう。そのため、患者さんは手術の利益とリスクを…

2017年4月 最新のリハビリ論文まとめ

今回は、2017年の3月までに報告されたリハビリに関する論文をいくつかピックアップしています。Natureの2017年3月号では「Nature Index 2017 Japan」というテーマで日本の科学研究の失速が話題になっていますが、最近のリハビリ関連の研究では多くの日本人が…

ヒトは投げるために肩を進化させてきた 後編

私たちは投げるために肩を進化させてきました。この根拠について進化形態学では、鎖骨の延長化と肩甲骨の関節窩の垂直化、そして上腕骨の形態的変化から説明しています。 『ヒトは投げるために肩を進化させてきた 中編』 ハーバード大学のRoachらは、ヒトは…

ヒトは投げるために肩を進化させてきた 中編

ハーバード大学の進化生物学者であるRoachらは、進化形態学や生体力学の側面からこう論じています。 「ヒトは投げるために肩を進化させてきた」 チンパンジーなどの類人猿に比べて、ヒトだけがものを速く、強く、正確に投げることができます。これは、ヒトだ…

ヒトは投げるために肩を進化させてきた 前編

WBCもいよいよ佳境に入ってきましたね。それにしても、ヒトの投げる能力には驚くばかりです。野球選手は18.44m離れたピッチャーマウンドから幅43.2cmのホームベース上に速く、正確に投げれるわけですから。 チンパンジーなどの類人猿は、ときどき物を投げま…

変形性股関節症の悪化を予測する新しい指標を知っておこう

現代の生体力学研究は「股関節に生じる接触応力」が変形性股関節症を悪化させる要因であることを明らかにしています。股関節の局所に接触応力が高まることによって、股関節の滑膜に炎症が生じ、軟骨変性や骨棘が形成され、変形が増悪していきます。この接触…

坂道歩行が足関節底屈筋の痙縮を改善させる?

脳卒中後の足関節底屈筋の痙縮は、歩行時の足部のクリアランスを低下させ、歩行能力の低下に寄与します(Fung J, 1994)。また、脳卒中だけでなく、脊髄損傷後の底屈筋の痙縮と歩行能力の低下の関係も示されており(Manella KJ, 2011)、リハビリテーション…

肩甲骨のキネマティクスと姿勢との関係を知っておこう

二足歩行を獲得したヒトと、四足移動を行う他の類人猿との違いのひとつに「腰椎の前弯」があります。ヒトには腰椎の前弯がありますが、ゴリラやオラウータンなどの類人猿には腰椎の前弯がありません。進化形態学では、この腰椎の前弯の有無が直立姿勢や二足…

脳卒中の急性期でも365日リハビリしよう

「脳卒中後のリハビリは、できるだけ早くから行ったほうが良いのでしょうか?」 この問いに、現代のリハビリテーション医学はこう答えています。 「24時間以内の超早期リハビリに明確な効果はありません」 『脳卒中の超早期リハビリ論争 AVERTⅢの全容と批判…

肩甲骨の運動パターンから肩甲骨周囲筋の筋活動を評価しよう

肩甲骨の運動異常(Scapular dyskinesis)の要因のひとつに肩甲骨周囲筋の異常な筋活動があり、これまでに数多くの肩甲骨周囲筋の筋電図研究が行われてきました。しかし、南カルフォルニア大学のMichenerらは、これらの研究成果をたったひとことで一蹴したの…

肩甲骨の運動異常(Scapular dyskinesis)を評価しよう 後編

肩疾患の60%以上に肩甲骨の運動異常(Scapular dyskinesis)が認められることが報告されており、リハビリテーションにおけるScapular dyskiensisの評価、治療の重要性が認識されつつあります。 『新しい概念「Scapular dyskinesis」を知っておこう』 2002年…

肩甲骨の運動異常(Scapular dyskinesis)を評価しよう 中編

肩甲骨の位置や運動の異常を示すScapular dyskinesisは、肩峰下スペースの狭小化を招き、腱板損傷などの腱板病変を生じさせる発症因子とされています。 『新しい概念「Scapular dyskinesis」を知っておこう』 では、リハビリテーションにおいて、Scapular dy…

肩甲骨の運動異常(Scapular dyskinesis)を評価しよう 前編

肩甲骨は上肢の挙上や外転運動にともなって、上方回旋、後傾、外旋といった3軸の動きが生じます。このような肩甲骨の運動により、上腕骨頭と肩峰下のスペースは一定に保たれ、そのスペースにある腱板への圧縮応力が軽減されます。しかし、肩甲骨の位置や運動…

肩甲骨周囲筋の筋電図研究の不都合な真実

腱板断裂などの腱板病変は、肩峰下スペースの狭小化にともなう肩峰下インピンジメントにより発症します。現在では、肩峰下スペースの狭小化を生じさせる解剖学的、生体力学的要因が明らかになり、特に生体力学的要因である肩甲骨のキネマティクスの異常は、…

脳卒中後の歩行能力を予測する有効な評価方法とは?

脳卒中後の歩行能力に対して、どのような評価方法を用いるのがもっとも有効なのでしょうか? この疑問の答えとして、とても興味深い報告が雑誌Stokeの2017年1月号に掲載されていたので、ご紹介しながら考えてみたいと思います。 脳卒中後の歩行能力の低下は…

新しい概念「Scapular dyskinesis」を知っておこう

2013年、British Journal of Sports Medicine主催の第二回国際カンファレンスがアメリカのレキシントンで開催されました。 カンファレンスの参加者名簿には、レキシントンスポーツ医学センターのKibler氏やミネソタ大学のLudewig氏、アルカディア大学のMcClu…

肩甲骨のキネマティクスと小胸筋の関係を知っておこう

腱板断裂などの腱板病変は「肩峰下インピンジメント」により起因し、肩峰下インピンジメントは「肩峰下スペースの狭小化」により誘発されます。 バージニア大学のSeitzらは100以上の論文をレビューし、肩峰下スペースの狭小化は「肩甲骨と上腕骨のキネマティ…

睡眠薬のメカニズムと転倒リスクについて知っておこう

先日、当院の医療安全委員会で、転倒事例のケースカンファレンスを行ったのですが、そこで睡眠薬のゾルピデム(マイスリー)と転倒リスクについての話題が挙がりました。 ゾルピデムの商品名は「マイスリー」で、その名前は医療関係者でなくとも聞いたことが…

肩甲骨の運動とその役割を正しく理解しよう

アメリカ・バージニア大学のSeitzらは、腱板病変(断裂・損傷)の発症アルゴリズムを提唱し、腱板病変に対するリハビリテーションの重要性を示しています。腱板病変は肩峰下インピンジメントにより発症・増悪します。肩峰下インピンジメントは肩峰下スペース…

腱板断裂(損傷)の発症アルゴリズムからリハビリテーションを考えよう

リハビリテーションをデザインするためには、対象の仕組みを知らなければなりません。 今回は、バージニア大学のSeitzらが提唱する腱板病変(断裂・損傷)の発症アルゴリズムからリハビリテーションについて考えてみましょう。このアルゴリズムは2011年に発…

腱板断裂(損傷)の新しいリスク指標を知ろう!

周りの人を見渡してみましょう。誰ひとりとして同じ顔、体型の人はいないはずです。ヒトの骨格は人それぞれで異なっています。近年、このような骨形態の異なりから、運動機能や病気を予測する病態形態学(Pathological morphology)が注目されています。 骨…