読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

リハビリmemo

大学病院勤務、大学院リハビリテーション学所属の理学療法士による、研究と臨床をつなげるための記録

ヒトは投げるために肩を進化させてきた 中編

ハーバード大学の進化生物学者であるRoachらは、進化形態学や生体力学の側面からこう論じています。 「ヒトは投げるために肩を進化させてきた」 チンパンジーなどの類人猿に比べて、ヒトだけがものを速く、強く、正確に投げることができます。これは、ヒト…

ヒトは投げるために肩を進化させてきた 前編

WBCもいよいよ佳境に入ってきましたね。それにしても、ヒトの投げる能力には驚くばかりです。野球選手は18.44m離れたピッチャーマウンドから幅43.2cmのホームベース上に速く、正確に投げれるわけですから。 チンパンジーなどの類人猿は、ときどき物を投げま…

変形性股関節症の悪化を予測する新しい指標を知っておこう

現代の生体力学研究は「股関節に生じる接触応力」が変形性股関節症を悪化させる要因であることを明らかにしています。股関節の局所に接触応力が高まることによって、股関節の滑膜に炎症が生じ、軟骨変性や骨棘が形成され、変形が増悪していきます。この接触…

坂道歩行が足関節底屈筋の痙縮を改善させる?

脳卒中後の足関節底屈筋の痙縮は、歩行時の足部のクリアランスを低下させ、歩行能力の低下に寄与します(Fung J, 1994)。また、脳卒中だけでなく、脊髄損傷後の底屈筋の痙縮と歩行能力の低下の関係も示されており(Manella KJ, 2011)、リハビリテーション…

肩甲骨のキネマティクスと姿勢との関係を知っておこう

二足歩行を獲得したヒトと、四足移動を行う他の類人猿との違いのひとつに「腰椎の前弯」があります。ヒトには腰椎の前弯がありますが、ゴリラやオラウータンなどの類人猿には腰椎の前弯がありません。進化形態学では、この腰椎の前弯の有無が直立姿勢や二足…

脳卒中の急性期でも365日リハビリしよう

「脳卒中後のリハビリは、できるだけ早くから行ったほうが良いのでしょうか?」 この問いに、現代のリハビリテーション医学はこう答えています。 「24時間以内の超早期リハビリに明確な効果はありません」 『脳卒中の超早期リハビリ論争 AVERTⅢの全容と批判…

肩甲骨の運動パターンから肩甲骨周囲筋の筋活動を評価しよう

肩甲骨の運動異常(Scapular dyskinesis)の要因のひとつに肩甲骨周囲筋の異常な筋活動があり、これまでに数多くの肩甲骨周囲筋の筋電図研究が行われてきました。しかし、南カルフォルニア大学のMichenerらは、これらの研究成果をたったひとことで一蹴した…

肩甲骨の運動異常(Scapular dyskinesis)を評価しよう 後編

肩疾患の60%以上に肩甲骨の運動異常(Scapular dyskinesis)が認められることが報告されており、リハビリテーションにおけるScapular dyskiensisの評価、治療の重要性が認識されつつあります。 『新しい概念「Scapular dyskinesis」を知っておこう』 2002年…

肩甲骨の運動異常(Scapular dyskinesis)を評価しよう 中編

肩甲骨の位置や運動の異常を示すScapular dyskinesisは、肩峰下スペースの狭小化を招き、腱板損傷などの腱板病変を生じさせる発症因子とされています。 『新しい概念「Scapular dyskinesis」を知っておこう』 では、リハビリテーションにおいて、Scapular d…

肩甲骨の運動異常(Scapular dyskinesis)を評価しよう 前編

肩甲骨は上肢の挙上や外転運動にともなって、上方回旋、後傾、外旋といった3軸の動きが生じます。このような肩甲骨の運動により、上腕骨頭と肩峰下のスペースは一定に保たれ、そのスペースにある腱板への圧縮応力が軽減されます。しかし、肩甲骨の位置や運動…

肩甲骨周囲筋の筋電図研究の不都合な真実

腱板断裂などの腱板病変は、肩峰下スペースの狭小化にともなう肩峰下インピンジメントにより発症します。現在では、肩峰下スペースの狭小化を生じさせる解剖学的、生体力学的要因が明らかになり、特に生体力学的要因である肩甲骨のキネマティクスの異常は、…

脳卒中後の歩行能力を予測する有効な評価方法とは?

脳卒中後の歩行能力に対して、どのような評価方法を用いるのがもっとも有効なのでしょうか? この疑問の答えとして、とても興味深い報告が雑誌Stokeの2017年1月号に掲載されていたので、ご紹介しながら考えてみたいと思います。 脳卒中後の歩行能力の低下は…

新しい概念「Scapular dyskinesis」を知っておこう

2013年、British Journal of Sports Medicine主催の第二回国際カンファレンスがアメリカのレキシントンで開催されました。 カンファレンスの参加者名簿には、レキシントンスポーツ医学センターのKibler氏やミネソタ大学のLudewig氏、アルカディア大学のMcClu…

肩甲骨のキネマティクスと小胸筋の関係を知っておこう

腱板断裂などの腱板病変は「肩峰下インピンジメント」により起因し、肩峰下インピンジメントは「肩峰下スペースの狭小化」により誘発されます。 バージニア大学のSeitzらは100以上の論文をレビューし、肩峰下スペースの狭小化は「肩甲骨と上腕骨のキネマティ…

睡眠薬のメカニズムと転倒リスクについて知っておこう

先日、当院の医療安全委員会で、転倒事例のケースカンファレンスを行ったのですが、そこで睡眠薬のゾルピデム(マイスリー)と転倒リスクについての話題が挙がりました。 ゾルピデムの商品名は「マイスリー」で、その名前は医療関係者でなくとも聞いたことが…

肩甲骨の運動とその役割を正しく理解しよう

アメリカ・バージニア大学のSeitzらは、腱板病変(断裂・損傷)の発症アルゴリズムを提唱し、腱板病変に対するリハビリテーションの重要性を示しています。腱板病変は肩峰下インピンジメントにより発症・増悪します。肩峰下インピンジメントは肩峰下スペース…

腱板断裂(損傷)の発症アルゴリズムからリハビリテーションを考えよう

リハビリテーションをデザインするためには、対象の仕組みを知らなければなりません。 今回は、バージニア大学のSeitzらが提唱する腱板病変(断裂・損傷)の発症アルゴリズムからリハビリテーションについて考えてみましょう。このアルゴリズムは2011年に発…

腱板断裂(損傷)の新しいリスク指標を知ろう!

周りの人を見渡してみましょう。誰ひとりとして同じ顔、体型の人はいないはずです。ヒトの骨格は人それぞれで異なっています。近年、このような骨形態の異なりから、運動機能や病気を予測する病態形態学(Pathological morphology)が注目されています。 骨…

レントゲンでもわからない初期の変形性膝関節症を示す「ある痛み」とは?

早期治療には「早期発見」が大切です。 誰でも膝が痛いときは病院へ行かれると思います。病院では、変形性膝関節症が疑われる場合、まずレントゲンが撮られます。レントゲン所見で得られる膝関節の構造的な変化(骨の硬化像や骨棘)が診断に有用とされてい…

荷重感覚が歩行時の足部の運動を促通する

今日(10月30日)、宇宙飛行士の大西さんが国際宇宙ステーションでの滞在を終えて帰還されました。宇宙での滞在期間は116日にも及んだそうですが、今では長期滞在が当たり前なので、あまりニュースでも報じられなくなってしまいましたね… さて、今回は、宇…

変形性膝関節症に良い靴選びのガイドライン

変形性膝関節症と診断されたら、どのように対処するれば良いのでしょうか? 重症度にもよりますが、一般的には薬やリハビリテーションのような保存療法が勧められます。 しかし、近年の変形性膝関節症のガイドラインでは自己管理(Self-management)の重要…

そろそろ臨床実習を再考するべきでは?応用行動分析学による論考

先日、臨床実習について考える機会があったので、今回は、臨床実習の問題点と、応用行動分析学による臨床実習への提言をご紹介しようと思います。 ◆ 現在の臨床実習の問題点 まずは、一般的に言われている臨床実習の問題点を見てきましょう。 実習指導者にお…

変形性膝関節症の術後の痛みが転倒のリスク因子になる

今回は、雑誌Clinical biomechanicsの2016年9月号からオットー・フォン・ゲーリケ大学のHamacherらの報告をご紹介します。 Hamacherらは、2010年ごろより転倒に関する論文をすごい勢いで報告をしています。今回は「人工膝関節術後の疼痛が転倒のリスク因子に…

痙縮の発症メカニズムを理解しよう

テキサス大学のLiらは、脳卒中後の痙縮のメカニズムにおける新しい考え方”New insights into the pathophysiology of post-stroke spasticity”というレビューの中で「痙縮は上位運動ニューロンの損傷によって、脊髄の反射回路の興奮性に対する促通と抑制の制…

網様体脊髄路と前庭脊髄路から筋緊張の制御メカニズムを理解しよう

2015年、テキサス大学のLiらは、痙縮のメカニズムについての新しい知見をまとめたシステマティックレビュー”New insights into the pathophysiology of post-stroke spasticity”を発表しました。 通常、脊髄の反射回路の興奮性は、上位運動ニューロンにより…

腰椎椎間板ヘルニアになりやすい脊椎・骨盤のアライメントとは?

今回は、雑誌European Spine Journalの2014年5月号から「腰椎椎間板ヘルニアが生じやすい脊椎・骨盤アライメント」についての報告をご紹介します。 前回は、腱板断裂のリスクがわかるレントゲン所見の指標である「Critical Shoulder Angle(CSA)」を紹介し…

上位運動ニューロンのメカニズムから痙縮について考えよう

「痙縮とは、上位運動ニューロン病変により、間欠的または持続する不随意な筋活動をきたす感覚-運動制御の障害である」(Pandyan AD, 2005) イギリス・キール大学のPandyanらは、2005年に新しい痙縮の定義を唱え、現代の神経生理学ではこの定義に準拠して研…

腱板断裂術後の再断裂のリスクが15倍になる!? その指標とは?

今回は、雑誌Journal of Shoulder Elbow Surgeryの2016年9月号より、腱板断裂術後の再断裂を予測する指標についてご紹介します。簡易的な指標で、まだ日本ではあまり取り上げられていないので、研究や臨床で試してみるといいかもしれません。 ◆ 腱板断裂の新…

筋紡錘のメカニズムから考える痙縮へのアプローチ

1950年代から、筋紡錘のメカニズムにもとづき、痙縮の原因は「筋紡錘の感度の変化」であると考えられてきました。 『筋紡錘のメカニズムから脳卒中の痙縮について考えよう』 この考えは、1970年代に行われた除脳ネコなどの動物実験の結果からも後押しを受け…

筋紡錘のメカニズムから脳卒中の痙縮について考えよう

「脳卒中の痙縮に対する有効なリハビリテーションの知見はありますか?」という質問を受けましたので、今回から何回かに分けて、痙縮のリハビリテーションについて考察してみようと思います。 「彼を知り己を知れば百戦殆からず」とは孫子の言葉です。痙縮を…

慢性期の脳卒中に対するヒトの骨髄間葉系幹細胞の臨床効果(論文紹介)

8月14日、外傷性脳損傷に対するヒトの幹細胞を脳に直接注入して機能回復を試みる治験を東大病院が始めることが報道されました。 『<脳損傷回復薬>治験へ 幹細胞注入、米で成果』 最近では、再生医療が脳卒中や脊髄損傷治療のパラダイムシフトを起こし、リ…

H反射を理解して立位姿勢制御のしくみを知ろう

「H反射」この言葉を聞いて嫌になる気持ち、よくわかります。 しかしです、H反射を理解することで立位姿勢制御や歩行制御のメカニズムを知ることができ、臨床におけるクリニカルリーズニングの質を高められるとしたら、少しはこのエントリを読んでみようと…

変形性膝関節症に伴う歩行時の体幹傾斜が体幹筋に与える影響(論文紹介)

今回は、雑誌Gait & Posture7月号に掲載されたマクギル大学のRobbinsらの報告をご紹介します。 変形性膝関節症の患者さんは、歩行時の膝関節に生じる接触応力を軽減するために特徴的な代償歩行を示します。そのひとつに「体幹傾斜(trunk lean)」があります…

変形性膝関節症は体重を減らせばOK!という簡単な話ではありません

変形性膝関節症の発症や悪化の主な原因は、歩行時の膝関節に生じる接触応力とされています。 『変形性膝関節症のリハビリの新しい考え方』 接触応力には体重が大きく関係しているため、変形性膝関節症の発症や悪化の要因に肥満や体重過多が挙げられています…

脳卒中後の歩行速度、歩行耐久性を改善させるシンプルな方法

現代の生体力学(バイオメカニクス)研究では、脳卒中後の歩行速度、歩行耐久性を規定する決定因子を明らかにし、有効な歩行介入の方法論にまで検証を進めています。 今回は、生体力学が教える脳卒中後の歩行能力を改善させるシンプルな方法について、近年の…

脳卒中患者さんが長い距離を歩けるようになるためのポイント

友人との買い物、恋人とのデート、家族とのお出かけ、どれも楽しいですよね。私たちは他者との関わり合いの中から「幸せ」を感じます。なぜなら、ヒトは社会的な動物だからです。 『社会心理学が教える幸せの方程式』 他者との社会的活動を共有するためには…

脳卒中の超早期リハビリテーション論争 そして新たな展開へ

2015年に発表された脳卒中の超早期リハビリの大規模RCTであるAVERTⅢ(A very early rehabilitation trial Ⅲ)は超早期リハビリの有効性を棄却するものであった。この結果は、30年にわたる脳卒中の超早期リハビリ論争に一石を投じるものとなり、世界的にも大…

脳卒中の超早期リハビリテーション論争 AVERTⅢの全容と批判

これまで脳卒中の超早期リハビリテーション論争の歴史と推奨派、反対派の主張を見てきた。 『脳卒中の超早期リハビリテーション論争 まとめ①』 『脳卒中の超早期リハビリテーション論争 まとめ②』 今回は、2015年に発表された超早期リハビリの大規模RCTであ…

脳卒中の超早期リハビリテーション論争 まとめ②

脳卒中の超早期リハビリテーションに対する推奨派と反対派の議論は30年にもわたり行われ、巷では「脳卒中の超早期リハビリテーション論争」と呼ばれている。 『脳卒中の超早期リハビリテーション論争 まとめ①』 医学において批判(Critical)という用語は欠…

脳卒中の超早期リハビリテーション論争 まとめ①

今回から、脳卒中の超早期リハビリテーションの30年に及ぶ議論について紹介するとともに、近年、新たな展開を迎えた超早期リハビリテーションの最新の知見までをシリーズで紹介していきたい。まずは超早期リハビリの30年史を見ていこう。 1980年代半ば、スウ…

肩関節痛に対する適切な運動を導くためのアルゴリズム

「肩関節インピンジメント症候群」と聞いてどのような評価と治療を思い浮かべるでしょうか? 理学療法や作業療法は、医師の診断にもとづく診断名に応じて評価・治療を行います。しかし、このような現状に対して2013年、Ludewigらは診断名にもとづいたリハビ…

変形性膝関節症の予防⑥ 注意すべき日常生活動作とその理由

変形性膝関節症を悪化させる主な要因は、膝関節に生じる負荷(メカニカルストレス)であると言われています。 『変形性膝関節症を予防する基本戦略』 歩行や日常生活動作でメカニカルストレスが繰り返し生じることによって、膝関節の痛みや悪化を招きます。…

変形性膝関節症の予防⑤ 生体力学が教える注意すべき日常生活動作

現代の生体力学は、変形性膝関節症の予防や保存療法についてのポイントをひとことで説明しています。 「膝内転モーメントを減少させよう」 そして近年では、歩行時の膝内転モーメントを減少させるという基本戦略にもとづき、様々なリハビリテーションアプロ…

ステップ動作の予測的姿勢制御を理解しよう!

生体力学が言う安定した立位とは、身体重心(Center of mass:COM)が足圧中心(Center of pressure:COP)の真上に保たれている状態のことです。手のひらで棒を立ててバランスをとる場面を想像するとわかりやすですね。 立位で上肢を挙上させるとCOMを前方…

ヒトの大脳皮質と予測的姿勢制御 ①

1985年、アメリカの生理学者であるLibetらは、脳科学の視点から「自由意志」の存在を疑う研究論文”Unconscious cerebral initiative and the role of conscious will in voluntary action”を発表しました(Libet B. 1985)。この論文の内容は「リベットの実…

ヒトの大脳皮質と姿勢制御 ②

ヒトの立位姿勢は、脊髄、脳幹、小脳、基底核そして大脳皮質を含む階層的な神経システムによって制御されています。近年では、ニューロイメージング研究の発展にともない、大脳皮質でも特に補足運動野が立位バランスに関与していることが明らかになりつつあ…

ヒトの大脳皮質と姿勢制御 ①

効果的に姿勢や歩行障害を改善させるためには、そのしくみを理解しリハビリテーションをデザインすることが大切です。運動学や脳科学といった学問により明らかにされた「しくみ」は科学的に検証された知見であり、しくみにもとづくリハビリテーションは、科…

変形性股関節症の保存療法の基本戦略③

変形性股関節症の保存療法の効果的な介入とは、股関節症を悪化させる影響度の高いリスクファクターを明らかにし、優先的に対応策を講じることです。 股関節に生じるメカニカルストレスの局所的な増加は、滑膜炎による軟骨変性や骨のリモデリングを発生させ…

変形性股関節症の保存療法の基本戦略②

変形性関節症の予防を生体力学の側面から研究しているボストン大学のFelsonは、変形性股関節症の悪化は、股関節に生じるメカニカルストレスのコントロールに失敗した結果であると言います(Felson DT, 2013)。 変形性股関節症を悪化させるリスク因子は、年…

変形性股関節症の保存療法の基本戦略①

変形性股関節症の保存療法をリスクマネージメントの観点から考えてみると、変形性股関節症を悪化させるリスク因子を明確化し、影響度の高い因子から防止策を講じることが効率的で効果的な保存療法につながります。 では、変形性股関節症を悪化させる影響度の…