リハビリmemo

理学療法士・トレーナーによる筋トレやダイエットについての最新の研究報告を紹介するブログ

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取方法まとめ(ISSN 2017より)


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 国際スポーツ栄養学会(ISSN)による「タンパク質の摂取とエクササイズ」というレビューが今年の6月に改訂されましたので、さっそくキャッチアップしておきましょう。

 

 ISSNによる最初のレビューは2007年だったのですが、このレビューは20万件を超えるアクセスがあり、とても重宝された報告でした。そして今回、10年ぶりの改訂が発表されたのです。

 

 ISSNのレビューは、これまでに報告されたすべての研究を網羅しており、客観的かつ批判的にまとめているため、知識の確認にはもってこいだと思います。

 

 それではテーマごとに見ていきましょう。

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Table of contents

 

 

◆ タンパク質の摂取タイミング

 

 「タンパク質の摂取はトレーニングの前か後か?」という議論は現在でも続いていますが、わずかにレーニング後のタンパク質摂取が有効であると結論づけています。その理由として、トレーニング後30分〜1時間がもっとも筋タンパク質の合成感度が高まるゴールデンタイムであるため、その時間での摂取が有効とのことです。

 

 しかし、トレーニングによる筋タンパク質の合成感度の増加は少なくとも24時間(72時間という報告もある)は継続することがわかっています。現在では、トレーニング前後の摂取のタイミングよりも24時間でタンパク質を摂取した「総摂取量」が筋肥大に寄与するとされています。

 

 参考記事

 『筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう



◆ タンパク質の摂取パターン

 

 最良の摂取パターンはトレーニング後「3〜4時間おき」の摂取であるとしています。これはAretaらによるトレーニング後12時間でどのような摂取パターンが筋タンパク質の合成作用を高めるのかという研究結果を参考にしています。

 

 12時間で少量(10g)を1.5時間おきに摂取するよりも、多量(40g)を6時間おきに摂取するよりも、適量(約20g)を3〜4時間おきに摂取するのがもっとも効果的に筋タンパク質の合成作用を高めることが明らかになっているのです。

 

 トレーニング後3〜4時間おきに、最適なタンパク質の摂取量をとることが推奨されています。

 

 参考記事

 『筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう



◆ タンパク質の摂取量

 

 では、最適なタンパク質の摂取量はどのくらいか?という問には、体重から換算された「1日あたりの摂取量」と「1食あたりの摂取量」にわけて示されています。

 

 1日あたりの摂取量は、以前では0.8g/kg/dayでしたが、その後1.2〜1.3g/kg/dayに見直され、現在では1.4〜2.0g/kg/dayが推奨されています。

 

 また、ISSNでは習慣的にトレーニングを行っているのであれば、> 3g/kg/dayでも良いとしています。

 

 1食あたりの摂取量は、若年(20歳代)では0.24g/kg高齢者では0.40g/kgとされています。加齢に応じて筋タンパク質の合成抵抗性(アナボリックレジスタンス)が生じるため、より多くのタンパク質摂取が推奨されています。

 

 参考記事

 『筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう



◆ 就寝前のタンパク質の摂取

 

 レビューでは就寝前のタンパク質摂取が行われていないことを「もったいない」と言います。そして近年では、この就寝前のタンパク質の摂取が就寝時の筋タンパク質の合成作用に有効であることが明らかになっているのです。

 

 摂取するタンパク質はカゼインが推奨されており、摂取量は通常よりも多めの40gとされています。就寝前のタンパク質摂取は太るのでは?と心配されますが、カゼインはホエイなどのタンパク質と比べて肥満防止の効果が示されています。

 

 また、就寝前のタンパク質摂取の効果は、トレーニングの時間帯によっても影響を受けます。午前中のトレーニングよりも夕方のトレーニンのほうがより効果的であるとのことです。

 

 12週間の就寝前のタンパク質摂取の縦断的研究によっても、筋肉のサイズ、筋力において有意に増加したことが報告されており、ISSNではこの10年におけるトピックスとしてこのテーマを扱っています。



 参考記事

 『筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取について知っておこう

 『筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取の方法論



◆ タンパク質の品質(Quality)

 

 高品質のタンパク質とは必須アミノ酸EAA)を豊富に含むものであり、6〜15gの用量が望まれます。また、筋タンパク質の合成作用を刺激するためにはロイシンがもっとも重要であり、1〜3gの用量が必要といいます。さらに、他の分岐鎖アミノ酸(BCAA)であるイソロイシン、バリンが包括的に作用するため、ロイシンのみの摂取では不十分であるとしています。

 

 結論的には、EAA10〜12g、ロイシン1〜3gを含むタンパク質が推奨されるとのことです。

 

 参考記事

 『筋トレの効果を最大にするロイシンについて知っておこう



 ここまでのまとめとして、ISSNではトレーニング後24時間において、高品質なタンパク質を最適な摂取量、摂取パターンで、就寝前の摂取も活用して最大限に高めることがトレーニング効果を最大にすると述べています。

 

 効果的なタンパク質の摂取 = (品質 × 摂取量 × 摂取パターン × 就寝前の摂取)/ トレーニング後24時間

 

 本ブログでも同じようなテーマで書いてきましたが、大きな異なりもなかったので良かったです。今後も新たな知見が報告されしだい、本ブログでも発信していきます。ISSNのレビューはこのあと「タンパク質の種類」についての記事が続いています。参考になる情報がありましたら、改めてご紹介していきます。

 

 

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◆ 読んでおきたい記事

シリーズ①:筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを理解しよう

シリーズ②:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

シリーズ③:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう

シリーズ④:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう

シリーズ⑤:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取を知っておこう

シリーズ⑥:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取の方法論 

シリーズ⑦:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)について知っておこう

シリーズ⑧:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)の実践論

シリーズ⑨:筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう 

シリーズ⑩:筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間について知っておこう

シリーズ⑪:筋トレの効果を最大にするトレーニングの頻度について知っておこう

シリーズ⑫:筋トレの効果を最大にするタンパク質の品質について知っておこう

シリーズ⑬:筋トレの効果を最大にするロイシンについて知っておこう

シリーズ⑭:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取方法まとめ

シリーズ⑮:筋トレの効果を最大にするベータアラニンについて知っておこう

シリーズ⑯:いつまでも若々しい筋肉を維持するためには筋トレだけじゃ不十分?

シリーズ⑰:筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう(2017年7月版) 

シリーズ⑱:筋トレとアルコール摂取の残酷な真実

シリーズ⑲:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう(2017年7月版)

シリーズ⑳:長生きの秘訣は筋トレにある

シリーズ㉑:筋トレの最適な負荷量を知っておこう(2017年8月版)

シリーズ㉒:筋トレが不安を解消するエビデンス

シリーズ㉓:筋肉量を維持しながらダイエットする方法論

シリーズ㉔:プロテインの摂取はトレーニング前と後のどちらが効果的?

シリーズ㉕:筋トレの前にストレッチングをしてはいけない理由

シリーズ㉖:筋トレの効果を最大にするウォームアップの方法を知っておこう

シリーズ㉗:筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間を知っておこう(2017年9月版)

シリーズ㉘:BCAAが筋肉痛を回復させるエビデンス

シリーズ㉙:筋トレの効果を最大にするタマゴの正しい食べ方

シリーズ㉚:筋トレが睡眠の質を高める〜世界初のエビデンスが明らかに

シリーズ㉛:筋肉の大きさから筋トレをデザインしよう

シリーズ㉜:HMBが筋トレの効果を高める理由~国際スポーツ栄養学会のガイドラインから最新のエビデンスまで

シリーズ㉝:筋トレの効果を高める最新の3つの考え方〜Schoenfeld氏のインタビューより

シリーズ㉞:筋トレによって脳が変わる〜最新のメカニズムが明らかに

シリーズ㉟:ホエイプロテインは食欲を抑える〜最新のエビデンスを知っておこう

シリーズ㊱:筋トレが病気による死亡率を減少させる幸福な真実

シリーズ㊲:プロテインは腎臓にダメージを与える?〜現代の科学が示すひとつの答え

シリーズ㊳:筋トレとアルコールの残酷な真実(続編)

シリーズ㊴:筋トレの効果を最大にする「関節を動かす範囲」について知っておこう

シリーズ㊵:筋トレが続かない理由〜ハーバード大学が明らかにした答えとは?

シリーズ㊶:筋トレと遺伝の本当の真実〜筋トレの効果は遺伝で決まる?

シリーズ㊷:エビデンスにもとづく筋肥大を最大化するための筋トレ・ガイドライン

シリーズ㊸:筋トレしてすぐの筋肥大は浮腫(むくみ)であるという残念な真実

シリーズ㊹:時間がないときにやるべき筋トレメニューとは〜その科学的根拠があきらかに

シリーズ㊺:筋トレの効果を最大にする新しいトレーニングプログラムの考え方を知っておこう

シリーズ㊻:筋トレは心臓も強くする〜最新のエビデンスが明らか筋トレ後のアルコール摂取が筋力の回復を妨げる?〜最新の研究結果を知っておこう

シリーズ㊼:プロテインは骨をもろくする?〜最新の研究結果を知っておこう

シリーズ㊽:コーヒーが筋トレのパフォーマンスを高める〜その科学的根拠を知っておこう

シリーズ㊾:睡眠不足は筋トレの効果を低下させる~その科学的根拠を知っておこう

シリーズ㊿:イメージトレーニングが筋トレの効果を高める〜その科学的根拠を知っておこう

シリーズ51:筋トレ後のアルコール摂取が筋力の回復を妨げる?〜最新の研究結果を知っておこう

シリーズ52:筋トレ後のタンパク質の摂取は「24時間」を意識するべき理由

シリーズ53:筋トレが高血圧を改善させる〜その科学的根拠を知っていこう

シリーズ54:ケガなどで筋トレできないときほどタンパク質を摂取するべきか?

シリーズ55:筋トレは脳卒中の発症リスクを高めるのか?〜筋トレによるリスクを知っておこう

シリーズ56:筋トレを続ける技術〜意志力をマネジメントしよう

シリーズ57:筋トレ後にプロテインを飲んですぐに仰向けに寝てはいけない理由

シリーズ58:筋トレは朝やるべきか、夕方やるべきか問題

シリーズ59:筋トレの効果を最大にする食品やプロテインの選ぶポイントを知っておこう

シリーズ60:ベンチプレスをするなら大胸筋損傷について知っておこう

シリーズ61:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう(2018年4月版)

シリーズ62:筋トレ後のタンパク質摂取に炭水化物(糖質)は必要ない?

シリーズ63:ホエイ・プロテインと筋トレ、ダイエット、健康についての最新のエビデンスまとめ

シリーズ64:筋トレの効果を最大にする「牛乳」の選び方を知っておこう

シリーズ65:そもそもプロテインの摂取は筋トレの効果を高めるのか?

シリーズ66:筋力を簡単にアップさせる方法~筋力と神経の関係を知っておこう

シリーズ67:筋力増強と筋肥大の効果を最大にするトレーニング強度の最新エビデンス

シリーズ68:筋トレは疲労困憊まで追い込むべきか?〜最新のエビデンスを知っていこう

シリーズ69:筋トレで疲労困憊まで追い込んではいけない理由(筋力増強編)

シリーズ70:筋トレで筋肥大の効果を最大にする「運動のスピード」を知っておこう

シリーズ71:筋トレで筋力増強の効果を最大にする「運動のスピード」を知っておこう

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シリーズ73:筋トレを続ける技術〜お金をもらえれば筋トレは継続できる?

シリーズ74:プロテインは腎臓にダメージを与える?〜ハーバード大学の見解と最新エビデンス

シリーズ75:筋トレによる筋肥大の効果は強度、回数、セット数を合わせた総負荷量によって決まる

シリーズ76:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取方法まとめ(2018年8月版)

シリーズ77:筋トレとHMBの最新エビデンス(2018年8月版) 

シリーズ78:筋トレによる筋肉痛にもっとも効果的なアフターケアの最新エビデンス

シリーズ79:筋肥大のメカニズムから筋トレをデザインしよう

シリーズ80:筋トレの効果を最大にする週の頻度(週に何回?)の最新エビデンス

シリーズ81:筋トレ後のクールダウンに効果なし?〜最新のレビュー結果を知っておこう

シリーズ82:筋トレの総負荷量と疲労の関係からトレーニングをデザインしよう

シリーズ83:筋トレのパフォーマンスを最大にするクレアチンの最新エビデンス

シリーズ84:筋トレのあとは風邪をひきやすくなる?〜最新エビデンスと対処法

シリーズ85:筋トレのパフォーマンスを最大にするカフェインの最新エビデンス

シリーズ86:筋トレとグルタミンの最新エビデンス

シリーズ87:筋トレとアルギニンの最新エビデンス

シリーズ88:筋トレとシトルリンの最新エビデンス

シリーズ89:筋トレするなら知っておきたいサプリメントの最新エビデンスまとめ

シリーズ90:筋トレをするとモテる本当の理由

シリーズ91:高タンパク質は腎臓にダメージを与えない〜最新エビデンスが明らかに

シリーズ92:筋トレするなら知っておきたい食事のキホン〜ハーバード流の食事プレート

シリーズ93:筋トレを続ける技術〜マシュマロ・テストを攻略しよう

シリーズ94:スクワットのフォームの基本を知っておこう【スクワットの科学】 

シリーズ95:スクワットのフォームによって筋肉の活動が異なる理由

シリーズ96:スクワットの効果を最大にするスタンス幅と足部の向きを知っておこう

シリーズ97:ベンチプレスのフォームの基本を知っておこう【ベンチプレスの科学】

シリーズ98:ヒトはベンチプレスをするために進化してきた【ベンチプレスの科学】

シリーズ99:デッドリフトのフォームの基本を知っておこう【デッドリフトの科学】

シリーズ100:デッドリフトのリフティングの基本を知っておこう【デッドリフトの科学】

シリーズ101:筋トレを続ける技術~脳をハックしよう!

シリーズ102:腕立て伏せの回数と握力から心臓病のリスクを知ろう!

シリーズ103:筋トレは朝やるべきか、夕方やるべきか?〜最新エビデンスを知っておこう

シリーズ104:筋トレによる筋肥大の効果は「週のトレーニング量」で決まる!【最新エビデンス】

 

 

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◆ 参考論文

Jäger R, et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr. 2017 Jun 20;14:20.