リハビリmemo

理学療法士・トレーナーによる筋トレやダイエットについての最新の研究報告を紹介するブログ

筋トレの効果を最大にする週の頻度(週に何回?)の最新エビデンス


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 週に何回、筋トレすればトレーニングの効果を最大化できるのでしょうか?

 

 この問にアメリカ・スポーツ医学会(ACSM)は2009年に報告した公式声明でこう述べています。

 

 「週2〜3回の頻度が推奨される」

 

 しかし、この頻度の推奨には科学的根拠がなく、推測から導き出された概念的なものであるという批判的見解がスポーツ科学界の世評となっていました。

 

 そして2018年、この批判にこたえるメタアナリシスが報告されたのです。

*メタアナリシスとは、これまでの研究結果を統計的手法により全体としてどのような傾向があるかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究デザイン。

 

 では、科学的根拠にもとづいたトレーニング効果を最大にする週の頻度とはどのくらいなのでしょうか?

 

 今回は、筋トレの効果を最大にする週の頻度についての最新エビデンスをご紹介しましょう。



Table of contents

 



◆ 筋肥大の効果を最大にする週の頻度とは?

 

 筋トレの効果は、筋肉を大きくする筋肥大と、筋力を強くする筋力強化のふたつに分けられます。なぜ、ふたつに分けるかというと、そのメカニズムが異なるからです。

 

 筋肥大は筋タンパク質の合成により生じます。そして筋力増強は筋肥大に神経活動の適応が合わさって生じます。

筋力増強と筋肥大の効果を最大にするトレーニング強度の最新エビデンス

 

 筋肥大 = 筋タンパク質の合成

 筋力増強 = 筋肥大 + 神経活動の適応

 

 メカニズムが異なると、それぞれの効果を最大化させるアプローチも異なります。筋肥大の効果は、トレーニングの強度と回数、セット数をかけ合わせた「総負荷量」によって決まります。そのため、筋肥大の効果を最大にしたい場合は、疲労困憊まで総負荷量を高めることが最適戦略となります。

筋トレによる筋肥大の効果は強度、回数、セット数を合わせた総負荷量によって決まる

筋肥大のメカニズムから筋トレをデザインしよう

 

 これに対して、筋力を増強するアプローチでは、神経活動を適応させる要素が必要になります。高強度の重量を正しいフォームで挙げらるように神経活動を適応させる(学習させる)ためには、高強度トレーニングで疲労困憊まで行わないようにトレーニングをデザインすることが推奨されています。

筋トレで疲労困憊まで追い込んではいけない理由(筋力増強編)

 

 では、最適なトレーニングの週の頻度も筋肥大、筋力増強によって異なるのしょうか?

 

 まずは、筋肥大を目的とした場合を見ていきましょう。

 

 筋肥大の効果はトレーニング強度に回数、セット数をかけ合わせた総負荷量を高めることによって決まります。そして、週の頻度もやはり総負荷量を高めるようにデザインすることが筋肥大の効果が最大化させるのです。

 

 2016年にニューヨーク州立大学のSchoenfeldらは、世界ではじめて筋肥大の効果と週の頻度についてのメタアナリシスを報告しました。

 

 筋肥大の効果と週の頻度(週に1〜3日)を検討した7つの研究報告を解析した結果、週に1日のトレーニングでは効果がなく、週に2日で筋肥大の効果を認め、3日においても同様の効果が認められました。

 

 この結果から、週の頻度が1日よりも2または3日のほうが筋肥大の効果が高いことが示唆されました。週の頻度を多くし、週単位での総負荷量を増やすことによって筋肥大の効果が高まることがわかったのです(Schoenfeld BJ, 2016)。

 

 Schoenfeldらの報告をもとに、筋肥大の効果は週単位の総負荷量によって決まることを示したのがオクラホマ州立大学のColquhounらです。

 

 2018年、Colquhounらはトレーニング経験のある被験者を集め、トレーニングを週3回と週6回の頻度で行うグループに分けました。ふたつのグループはともに、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトを行い、3種目ともに週単位の総負荷量が同じになるように強度(重量)と回数、セット数が設定されました。

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Fig.1:Colquhoun RJ, 2018より筆者作成

 

 このようなトレーニングを6週間行い、トレーニング前後の筋肉量(除脂肪量)が計測されました。

 

 その結果、週3回と週6回のグループの筋肉量はともに増加を示しましたが、両グループ間に有意な差は認められなかったのです。

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Fig.2:Colquhoun RJ, 2018より筆者作成

 

 この研究結果からわかることは、筋肥大の効果は週単位の総負荷量で決まるとともに、週単位の総負荷量が同じであれば、週の頻度は3回でも6回でも効果に変わりはないということです。

 

 筋肥大の効果は、週の頻度を増やして、週単位の総負荷量を増やせば増やすほど高まる可能性があります。また週単位の総負荷量が同じであれば、週の頻度は3回でも6回でも変わりないのです。

 

 Colquhounらは、筋肥大の効果が週単位の総負荷量によって決まることは、トレーニングの頻度の管理を容易にするといいます。その日のトレーニング総負荷量は体調や疲労に影響されます。調子が悪かったり、疲労があるときには総負荷量は少なくなります。そこで、あらかじめ基準となる週単位の総負荷量を決めておき、調子の悪い週は1日あたりの総負荷量を少なくし、そのかわり頻度を多くすることによって、週単位の総負荷量を達成できるように週の頻度をデザインすることができるのです。

 

 筋肥大を目的としたときの週の頻度は、週単位の総負荷量から頻度を決めても良いかもしれませんね。

 

 それでは、筋力増強では、週の頻度をどのように考えれば良いのでしょうか?



◆ 筋力増強の効果を最大にする週の頻度とは?

 

 2018年、筋力増強の効果を最大にする週の頻度について、ふたつのメタアナリシスが報告されました。

 

 ビクトリア大学のGrgicらは、これまでに報告された22の研究報告をもとに、週の頻度と筋力増強効果の関連について解析しました。

 

 その結果、週の頻度を多くすることによって、有意に筋力増強の効果が高まることが示唆されました。筋力増強においても筋肥大と同じように、週の頻度を多くすることによって効果が増大することがわかったのです。

 

 さらに、トレーニング内容(単関節または多関節)、年齢、性別による効果を解析してみると、いくつかの特性を見ることができました。

 

 アームカールのような単関節トレーニングと、ベンチプレスなどの多関節トレーニングによる筋力増強の効果と週の頻度の関連をみてみると、単関節トレーニングは頻度による大きな差はなく、これに対して多関節トレーニングでは週の頻度の増加に応じて筋力増強の効果が高まることが示唆されました。

 

 これは多関節トレーニングが単関節トレーニングよりも神経活動の適応に総負荷量が関与することを意味しています。

 

 多関節トレーニングは、多くの筋肉が同じタイミングで協調的に収縮することによって筋力が発揮されます。そのため、神経活動による運動単位の動員や同期、発射頻度(レートコーディング)などの適応を高めるために多くのトレーニング回数が必要になるのです。

 

 これは学習を例にとるとわかりやすいです。バットの素振りといった運動スキルは素振りの回数によって神経活動がその運動に適応して上達します。多くの筋肉が関与する多関節トレーニングも同じように筋力を向上させるためには、回数を増やし、総負荷量を高めることによって学習(適応)させなければならないのです。

 

 また、高齢者よりも若年者では、週の頻度が多くなれば、それに応じて筋力増強の効果が高まることが示唆されました。さらに男性よりも女性のほうが週の頻度に応じて筋力増強の効果が高まることが示されています。

 

 このように、Grgicらのメタアナリシスにより、筋力増強の効果も筋肥大と同じように、週の頻度に応じて増加することが明らかになったのです。

 

 では、週単位の総負荷量が同じ場合でも、筋力増強の効果は週の頻度に応じて高まるのでしょうか?

 

 この問いに答えたのがスコットランド・UWSのRalstonらです。

 

 Ralstonらは、週単位の総負荷量が同じ場合における、週の頻度による筋力増強の効果を検証した12の研究報告をもとに解析しました。解析は週の頻度をみっつに分けておこなわれました。

 

・低頻度:週に1回

・中頻度:週に2回

・高頻度:週に3回以上

 

 その結果、週単位の総負荷量が同じ場合、週の頻度による筋力増強の効果に差がないことがわかったのです。

 

 解析では、週単位の総負荷量が同じであれば、週1回(低頻度)でも週3回以上(高頻度)でも筋力増強の効果に有意な差は認められませんでした。

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Fig. 3:Ralston GW, 2018より筆者作成

 

 この結果から、Ralstonらは、筋肥大と同様に筋力増強におていも週単位の総負荷量が効果の指標になると述べています。

  

 この結果も筋力増強の効果が神経活動の適応にもとづくメカニズムから説明できます。

 

 筋力増強の効果は、高強度トレーニングを正しいフォームで繰り返し行い、神経活動を適応させることによって生じます。神経活動の適応は学習効果のことであり、トレーニングの回数を多くすることによって学習効果が促進され、筋力増強の効果が高まります。そのため、週単位のトレーニング総負荷量(強度は高強度一択なので回数とセット数をかけ合わせたもの)が筋力増強の効果の指標になるのです。

 

 これは筋肥大と同じように筋力増強においても、週単位の総負荷量から週の頻度をデザインできることを示しています。週単位の総負荷量を決めておき、その週の体調や疲労に応じて頻度を調整することができるのです。

 

 GrgicらとRalstonらのメタアナリシスにより、週の頻度を多くすれば筋力増強の効果が高くなること、週単位の総負荷量が筋力増強の効果の指標になることが明らかになったのです。

 

 

 2009年にACSMがトレーニングの最適な週の頻度は2〜3回であると報告してから約10年が経過しようとしています。現在では、筋肥大、筋力増強ともに週の頻度が増えれば効果も高まること、週単位の総負荷量から週の頻度を調整できることが示唆されているのです。

 

 週の頻度に応じて効果が高まると言っても、毎日、トレーニングを行うことは現実的ではありません。疲労の回復を考えれば週に2〜3回の頻度が一般的になるでしょう。しかし、コンディションが悪いときにはトレーニングの負荷量を高めることができません。そのときは、週単位の総負荷量を指標にして、週の頻度やその日の負荷量を調整してみるのも良いかもしれませんね。



◇ 筋肥大の効果

・週の頻度が多いほうが効果が高くなる。

・週単位の総負荷量(強度と回数、セット数をかけ合わせたもの)が効果の指標になる。

 

◇ 筋力増強の効果

・週の頻度が多いほうが効果が高くなる。

・週単位の総負荷量(回数とセット数をかけ合わせたもの)が効果の指標になる。

 

 

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◆ 参考論文

Schoenfeld BJ, et al. Effects of Resistance Training Frequency on Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2016 Nov;46(11):1689-1697.

Colquhoun RJ, et al. Training Volume, Not Frequency, Indicative of Maximal Strength Adaptations to Resistance Training. J Strength Cond Res. 2018 Jan 5.

Grgic J, et al. Effect of Resistance Training Frequency on Gains in Muscular Strength: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2018 May;48(5):1207-1220.

Ralston GW, et al. Weekly Training Frequency Effects on Strength Gain: A Meta-Analysis. Sports Med Open. 2018 Aug 3;4(1):36.