リハビリmemo

大学病院勤務・大学院リハビリテーション学所属の理学療法士・トレーナーによる「最新の研究をトレーニングにつなげるための記録」

筋トレの効果を高める最新の3つの考え方〜Schoenfeld氏のインタビューより

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 アメリカのフィットネスメディアであるBarBendは、今年の10月、ひとりのフィットネス研究者のインタビューを掲載しました。

 

 ニューヨーク州立大学のBrad Schoenfeld(ブラッド・シェーンフェルド)氏は、トレーニングに関する100以上の論文を発表し、多くの書籍も執筆している世界的にも有名なフィットネス研究者です。とくに筋肥大を目的としたトレーニング研究では、この分野の第一人者とも目されています。

 

 今回は、BarBendに掲載されたSchoenfeld氏のインタビューをもとに、筋トレの効果を高める最新の考え方をご紹介しましょう。

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Table of contents

 

◆ セット数の考え方

 

 現代のスポーツ医学では、トレーニングによる筋肥大は運動強度と運動回数を合わせた「総負荷量」によって決まとされています。そのため、総負荷量を増大させる最適な運動強度や運動回数、セット数などの研究が進められています。

 

 BarBendの記者による最初の質問は「筋肥大のための最適なセット数をどのように考えればよいか」というものでした。この問いにSchoenfeld氏はこう答えています。

 

 「1週間で10セット以上が望ましいでしょう」

 

 2017年7月、雑誌Sports Medicineにトレーニングのセット数に関する最新のメタアナリシスが報告されました。この報告によって示されたのが「トレーニング経験者は1週間に10セット以上行うことが筋肥大の効果を高める」という結論だったのです(Ralston GW, 2017)。

筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう(2017年7月版)

 

 このようなエビデンスをともに、Schoenfeld氏は方法論についての個人的見解を述べています。

 

 「個人的には、総負荷量をオーバーリーチングのポイントまで高め、その後に元にもどすことによってリカバリーを可能にする方法を推奨しています」

 

 「例えば、最初の月は週10セット、次の月は15セット、そしてオーバーリーチングのための20セットを行い、最初のセット数に戻し、これを繰り返すという方法です」

 

 このような方法を個人によりカスタマイズすることが望ましいといいます。

 

 次に、記者は「セット数は筋肉のサイズに応じて変えるべきか」と聞き、Schoenfeld氏はこう答えています。

 

 「筋肉のサイズは一般的に大きく誤解されています」

 

 「実は、上腕三頭筋は大胸筋より大きいのです」

 

 筋肉の大きさによって筋力を予測することができます。大きな筋肉は大きな筋力を発揮できるのです。近年では、筋肉の体積である筋体積により高い精度をもって筋力を予測できることが報告されています。

 

 2017年10月、Schoenfeld氏の研究グループのRibeiroらは、過去の筋体積の研究報告をレビューし、上肢(肩から上腕)と下肢(骨盤から大腿)の筋体積の異なりを示しました。その結果、上肢では一般的にサイズが大きい筋肉とされていた大胸筋や広背筋よりも三角筋上腕三頭筋が大きいことがわかったのです。さらに大腿四頭筋は特に筋体積が大きいことも明らかになりました(Ribeiro AS, 2017)。

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Fig.1:Ribeiro AS, 2017より筆者作成

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Fig.2:Ribeiro AS, 2017より筆者作成

 

 Schoenfeld氏はこのような筋肉のサイズの異なりを示しながら、こう続けます。

 

 「複合的なトレーニングでは、サイズの大きい筋肉には負荷が不十分になる可能性があります」

 

 「例えば、ラットプルダウンは上腕三頭筋以外の筋肉も多く関与しており、サイズの大きい上腕三頭筋には負荷が不十分になるかもしれないのです」

 

 Ribeiroらのレビューでは、このような見解に対して上腕三頭筋アイソレーション(単関節)トレーニングの追加を推奨しています。

筋肉の大きさから筋トレをデザインしよう



◆ 運動回数の考え方

 

 セット数の質問を終えると、次にBarBendの記者は「筋肥大に最適な運動回数」について質問を続けます。

 

 筋肥大の効果は総負荷量(運動強度×運動回数)に依拠します。このような根拠からSchoenfeld氏は「総負荷量が同じであれば運動回数の違いによる筋肥大への効果に差はないだろう」と言い、こう続けます。

 

 「筋肥大を最大化させるためには、高強度と低強度それぞれのトレーニングを行うことが利点になると考えられます」

 

 これは、筋肉のサイズの原理にもとづく考え方です。低強度の負荷では主にタイプⅠ線維(遅筋線維)が収縮し、高強度の負荷では主にタイプⅡ線維(速筋線維)が収縮します。そのため、両方の負荷をトレーニングしたほうが筋肥大につながりやすいと推測しているのです。

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Fig.3:サイズの原理

 

 

◆ 運動強度の考え方

 

 さいごにBarBendの記者は「筋肥大に最適な運動強度」について質問しています。

 

 筋肥大を目的とした高強度トレーニングと低強度トレーニングの論争は現在でも続いています。このような背景について前置きをした上でSchoenfeld氏はこのように答えています。

 

 「神経筋システムに適応するためには、ある程度の高強度トレーニングに時間をかけて、疲労困憊になるまで取り組む必要があるでしょう」

 

 筋力は筋肉の量や質だけではなく、神経系の活動にも依存します。トレーニングにおける神経活動の変化は、1990年代の筋電図研究によって報告されており、神経活動を高めて適応させるためには高強度のトレーニングが必要になることが示唆されているのです(Sale DG, 1988)。

 

 「しかし、疲労困憊まで追い込まなくても筋肥大の効果があるという研究報告もあります」

 

 「そこでお勧めしたい方法がEric HelmsらのRIR(Reps in Reserve)というテクニックです」

 

 RIRは疲労困憊になる直前の運動回数(レップ数)をあらかじめ決めておくというテクニックです。例えば1RIRは最大レップ数より1回少ないレップ数でトレーニングすることを意味します。この指標によりオーバーワークにならない適度なレップ数を実現でき、結果的に総負荷量を高めることができると示唆されています(Helms ER, 2016)。

 

 そして方法論についてこのように述べています。

 

 「典型的な3セットの場合、1セット目は2RIR、2セット目は1RIRで行い、最後のセットは疲労困憊まで行うように設定すると良いでしょう」

 

 インタビューはここで終わります。



 トレーニングによる筋肥大の効果を高めるためには、総負荷量をどのように増やしていくかという戦略的な取り組みが必要になります。そのためには最適なセット数や運動回数、運動強度を設定しなければなりません。今回のSchoenfeld氏のインタビューは最新のエビデンスにもとづいた有用な内容になっていす。トレーニング内容を考える上で参考になるでしょう。



 ✻インタビューの原文:“Brad Schoenfeld’s 3 Evidence Based Guidelines of Hypertrophy Training

 ✻✻「」内のコメントは原文からの引用になります。引用の翻訳には意訳が含まれていますので、ぜひ原文と合わせてお読み下さい。

 


 Schoenfeld氏の書籍です。ご興味のある方はぜひ。

Science and Development of Muscle Hypertrophy

Science and Development of Muscle Hypertrophy

 
Strong & Sculpted: The Total-Body Training Program for Shaping Your Ultimate Physique

Strong & Sculpted: The Total-Body Training Program for Shaping Your Ultimate Physique

 

 

 

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References

Ralston GW, et al. The Effect of Weekly Set Volume on Strength Gain: A Meta-Analysis. Sports Med. 2017 Jul 28.

Ribeiro AS, Schoenfeld BJ, et al. Large and Small Muscles in Resistance Training: Is It Time for a Better Definition? Strength & Conditioning Journal: October 2017 Volume39 Issue5 p33–35

Sale DG, et al. Neural adaptation to resistance training. Med Sci Sports Exerc. 1988 Oct;20(5 Suppl):S135-45.

Helms ER, et al. Application of the Repetitions in Reserve-Based Rating of Perceived Exertion Scale for Resistance Training. Strength Cond J. 2016 Aug;38(4):42-49. Epub 2016 Aug 3.