リハビリmemo

大学病院勤務・大学院所属の理学療法士・トレーナーによる「最新の研究をトレーニングにつなげるための記録」

筋トレによる筋肥大の効果は強度、回数、セット数を合わせた総負荷量によって決まる


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 筋トレによって筋肉を大きくする(筋肥大させる)ためには…

 

 「トレーニング強度はどのくらいが良いのでしょうか?」

 

 「回数はどのくらいが良いのでしょうか?」

 

 この問に現代のスポーツ医学はこう答えています。

 

 「トレーニングによる総負荷量(Training volume)を高めよう」

 

 筋肥大の効果は、トレーニングの強度(重量)、回数、セット数を合わせた「総負荷量」によって決まることが示唆されています。

 

 筋肥大の効果 = 総負荷量 = 強度 × 回数 × セット数

 

 しかし、総負荷量が本当に筋肥大の効果を反映した指標になるのか?という疑義の声が上がっていました。

 

 今回は、総負荷量が筋肥大の効果をしめす指標になることを検証した最新のレビューをご紹介しましょう。

 

 

Table of contents

 



◆ 筋肥大は強度ではなく総負荷量によって決まる

 

 2009年、アメリカスポーツ医学会は、筋トレによる筋肥大の効果を高めるためには、最大筋力(1RM)の70%以上の高強度で、初心者は8〜12回、経験者は1〜12回の回数を行うことを推奨する公式声明を発表しました(ACSM, 2009)。

 

 この声明が「筋肉を大きくしたければ、高強度でトレーニングをしよう!」と言われるひとつの根拠です。

 

 しかし、同じころ、アミノ酸のトレーサーを用いた新しい技術が研究に応用され、筋肉のもとである筋タンパク質の合成率を測定できるようになりました。すると、低強度トレーニングでも高強度と同等の筋肥大の効果が得られることがわかってきたのです。

 

 2010年、マックマスター大学のBurdらは、トレーニング経験者を集め、最大筋力の70%の高強度でレッグエクステンションを1セットだけ行うグループと、3セット行うグループに分け、それぞれ疲労困憊になるまで行いました。

 

 Burdらは、それぞれのグループの回数と総負荷量(強度×回数)、トレーニング後の筋タンパク質の合成率を計測しました。

 

 その結果、レッグ・エクステンションを1セットのみ行ったグループの平均の総負荷量は942kgでしたが、3セットを行ったグループでは2,184kgでした。

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Fig.1:Burd NA, 2010aより筆者作成

 

 そして、トレーニング後の筋タンパク質の合成率も3セットを行ったグループが有意な増加を示したのです(Burd NA, 2010a)。

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Fig.2:Burd NA, 2010aより筆者作成

 

 さらに、今度は、異なる強度が筋タンパク質の合成率に与える影響について検証しました。被験者を最大筋力の90%の高強度でレッグ・エクステンションを行うグループと、最大筋力の30%の低強度で行うグループに分け、それぞれ疲労困憊になるまでトレーニングを行いました。

 

 その結果、低強度のグループは高強度のグループよりも総負荷量が高くなり、筋タンパク質の合成率も増加したのです(Burd NA, 2010b)。

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Fig.3:Burd NA, 2010bより筆者作成

 

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Fig.4:Burd NA, 2010bより筆者作成

 

 これらの結果から、Burdらは、筋肥大の効果を高めるためには、総負荷量を高めることが重要であること、また、低強度トレーニングであっても、総負荷量を高めることによって高強度トレーニングと同等の筋肥大の効果が期待できることを示唆したのです。

 

 しかし、これは筋肉のもとである筋タンパク質の短期的な合成率にもとづく結果です。

 

 では、総負荷量を高めることは、長期的な筋肥大の効果においても有効なのでしょうか?

 

 2012年、マクマスター大学のMitchellらは、トレーニング未経験者を集め、レッグエクステンションを最大強度の30%で行う低強度グループと、80%で行う高強度グループに分けました。両グループともに疲労困憊になるまでレッグエクステンションを行い、これを1日3セット、週3回、10週間、継続しました。

 

 その結果、両グループの大腿四頭筋の筋肉量は増加しましたが、グループ間に筋肉量の差は認められませんでした(Mitchell CJ, 2012)。

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Fig.5:Mitchell CJ, 2012より筆者作成

 

 また、2016年、Motonらはトレーニング経験者を対象に、高強度×低回数のグループと低強度×高回数のグループによる12週間の多関節トレーニングを行った結果、両グループともに筋線維の肥大を認めましたが、グループ間に有意な差は認められませんでした(Morton RW, 2016)。

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Fig.6:Morton RW, 2016より筆者作成

 

 このような結果から、低強度トレーニングでも回数を多くし、総負荷量を高めることによって高強度と同等の長期的な筋肥大の効果が得られることが示唆されたのです。

 

 そして2017年、ニューヨーク州立大学のSchoenfeldらが報告した最新のメタアナリシスによって、これらの結果は裏付けられています。低強度トレーニングでも疲労困憊まで追い込み、総負荷量を高めることにより、高強度と同じように筋肥大を生じさせることがエビデンスとして示されたのです(Schoenfeld BJ, 2017)。

*メタアナリシスとは、これまでの研究結果を統計的手法により全体としてどのような傾向があるかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究デザイン。

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Fig.7:Schoenfeld BJ, 2017より筆者作成

 

 これらの知見を背景に、現在では、筋肥大の効果において強度はそれほど重要ではなく、強度と回数にセット数を合わせた総負荷量を高めるようにトレーニングをデザインすることが推奨されています。

 

 しかし、これに対して疑義の声が上がっていました。

 

 「総負荷量は、ほんとうにトレーニングの負荷量をあらわす指標として有用なのか?」



◆ 総負荷量は筋肥大の効果をあらわす指標になる

 

 物理学的にトレーニングによる負荷量をあらわすのは「総仕事量(Total work)」になります。総仕事量(J)は、力(N)と距離(m)によって計算されます。

 

 総仕事量 = 力 × 距離

 

 総仕事量は、トレーニングによる負荷量を示す最良の指標になりますが、トレーニングの現場でこれを計測するのは難しいです。

 

 では、強度と回数にセット数を合わせた総負荷量(Training volume)は、総仕事量にかわる指標として有効なのでしょうか?

 

 この問について検証したのがバスク大学のBaz-Valleらです。

 

 2018年7月、Baz-Valleらは、総負荷量が筋肥大の効果の指標としての有効性について検証したシステマティックレビューを報告しました。

*システマティックレビューとは、文献をくまなく調査し、質の高い研究のデータをバイアスのようなデータの偏りを限りなく除き、分析を行うエビデンスレベルのもっとも高い研究デザイン。

 

 レビューは、18歳〜35歳の1年以上のトレーニング経験者(359名)を対象とし、6週間以上の継続的なトレーニングを行っており、トレーニングの強度、回数、総セット数による筋肥大の効果が検証された14のランダム化比較試験(RCT)を対象に行われました。

 

 解析の結果、強度と回数に総セット数を合わせた総負荷量は、筋肥大の効果をしめす有効な指標になることが示唆されました。特にトレーニング回数が1〜5回よりも6回以上の場合に、総負荷量による筋肥大の効果をより正確にしめす指標になることがわかったのです。

 

 この結果から、Baz-Valleらは、トレーニングによって効果的に筋肥大を生じさせたい場合は、総負荷量を指標にしてトレーニングをデザインすることが有用であると述べています。また、過度な総負荷量によるオーバートレーニングは、筋肥大の効果を減少させてしまう可能性が示唆されており、その場合はセット数を減らして総負荷量をコントロールすることを推奨しています。

 

 

 10年前まで、筋トレによる筋肥大の効果を高めるためには、高強度トレーニングが推奨されていました。しかし、現在では、筋肥大の効果は強度だけでなく、強度と回数にセット数を合わせた総負荷量が効果を決める指標として推奨されているのです。

 

 そして、この総負荷量をさらに高めるためのセット間の休憩時間や関節の動かす範囲、スピードなどが明らかにされつつあります。

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筋トレの効果を最大にする「関節を動かす範囲」について知っておこう

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 これらの科学的な知見をもとにして、総負荷量を高めるようにトレーニングをデザインし、実際にトレーニング効果を判定しながら、自分に最適なトレーニング内容を構築してみても良いかもしれませんね。

 

 

www.awin1.com

 

 

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References

American College of Sports Medicine. American College of Sports Medicine position stand. Progression models in resistance training for healthy adults. Med Sci Sports Exerc. 2009 Mar;41(3):687-708.

Burd NA, et al. Resistance exercise volume affects myofibrillar protein synthesis and anabolic signalling molecule phosphorylation in young men. J Physiol. 2010a Aug 15;588(Pt 16):3119-30.

Burd NA, et al. Low-load high volume resistance exercise stimulates muscle protein synthesis more than high-load low volume resistance exercise in young men. PLoS One. 2010b Aug 9;5(8):e12033.

Mitchell CJ, et al. Resistance exercise load does not determine training-mediated hypertrophic gains in young men. J Appl Physiol (1985). 2012 Jul;113(1):71-7.

Morton RW, et al. Neither load nor systemic hormones determine resistance training-mediated hypertrophy or strength gains in resistance-trained young men. J Appl Physiol (1985). 2016 Jul 1;121(1):129-38.

Schoenfeld BJ, et al. Strength and Hypertrophy Adaptations Between Low- vs. High-Load Resistance Training: A Systematic Review and Meta-analysis. J Strength Cond Res. 2017 Dec;31(12):3508-3523.

Baz-Valle E, et al. Total Number of Sets as a Training Volume Quantification Method for Muscle Hypertrophy: A Systematic Review. J Strength Cond Res. 2018 Jul 30.