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筋トレの前にストレッチングをしてはいけない理由とその対応策【2019最新版】


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 「運動する前の静的ストレッチングは、運動のパフォーマンスを低下させる」

 

 2006年、欧州スポーツ医学会が発表した公式声明(ステートメント)がスポーツ業界を震撼させました。

 

 ストレッチングには怪我を予防する科学的根拠(エビデンス)が示されています(McHugh MP, 2010)。そのため、運動する前には「しっかりとストレッチングをしよう」というのがこれまでの常識でした。

 

 しかし、怪我を予防するためのストレッチングが、じつは運動のパフォーマンスを低下させるということを欧州スポーツ医学会が公式に認めたのです。

 

 さらに、2010年にはアメリカスポーツ医学会も同様の公式声明を発表し、今では「運動の前にストレッチングはしてはいけない」というのが世界の常識となっています。

 

 これはスポーツだけでなく、筋トレでも同じです。

 

 筋トレの前にストレッチングをするとトレーニングのパフォーマンスを低下させることが示唆されています。パフォーマンスの低下は、トレーニング効果の減少を意味します。つまり、筋トレの前にストレッチングをするとトレーニングの効果を減少させる可能性があるのです。
筋トレの前にストレッチングをしてはいけない理由

 

 では、ストレッチングによる怪我の予防効果を無視してよいのかというと、そうではありません。できれば筋トレの効果を減少させずに、怪我も予防したいですよね。

 

 そこで議論されているのが「トレーニングのパフォーマンスを低下させないストレッチングの方法論」です。

 

 これまでには「30秒以内」のストレッチングであれば筋トレの効果を減少させずにケガ予防の効果が得られることが示唆されてきました(Kay AD, 2012)。

 

 そして、2019年に報告された最新レビューでは、筋トレの効果を減少させずに怪我を予防するための新たなストレッチングの方法論が提唱されています。

 

 今回は、この最新レビューをもとに、筋トレの効果を減少させないストレッチングの方法論についてご紹介しましょう。

 

*ストレッチングには静的、動的などありますが、この記事ではすべて静的ストレッチングの影響についてご紹介しています。

 

 

目次

◆ ストレッチングは筋トレのパフォーマンスを低下させる

◆ パフォーマンスを低下させないストレッチングの方法論

◆ パフォーマンスを低下させないもうひとつの方法論

◆ 怪我を予防しながら、パフォーマンスも高めよう!(まとめ)

◆ 参考文献

 

 

◆ ストレッチングは筋トレのパフォーマンスを低下させる

 

 筋トレによる筋肥大の効果は「トレーニングの総負荷量」で決まります。
 
 総負荷量とは、トレーニングの強度(重量)と回数、セット数をかけ合わせたものです。

 

 筋肥大の効果 = トレーニングの総負荷量 = 強度(重量)× 回数 × セット数

 

 そのため、高強度なトレーニングだけでなく、低強度トレーニングでも同じように総負荷量を高めれば同等の筋肥大の効果を得られることが示唆されています。

 

 例えば、20kgのバーベルを10回、3セット行うと総負荷量は600kgになります。これに対してもっと軽い10kgのバーベルを20回、3セット行っても総負荷量は600kgになります。この場合、総負荷量が同じになるので、筋肥大の効果も同等になるのです。

 

 これが筋肥大の効果は、トレーニングの総負荷量で決まるといわれる理由です。
筋トレによる筋肥大の効果は強度、回数、セット数を合わせた総負荷量によって決まる

 

 筋肥大の効果を最大化させるためには、この総負荷量をいかに高めるかがポイントになるのです。

 

 しかし、筋トレの前に静的ストレッチングをするとトレーニングの総負荷量が減少してしまうことが報告されています。

 

 2017年、カンピナス州立大学のJuniorらは、ストレッチングがトレーニングの総負荷量と筋肥大の効果に与える影響について検証しました。

 

 被験者は筋トレの前にストレッチングを行うグループと行わないグループに分けられ、週2回のトレーニングを10週間継続し、トレーニングの回数と総負荷量、筋肥大の効果を検証しました。

 

 その結果、ストレッチングを行ったグループは、運動回数、総負荷量ともに有意な減少を示しました。

画像1

Fig.1:Junior RM, 2017より筆者作成

 

 また、外側広筋の筋肥大を示す筋断面積は、トレーニングのみのグループは12.7%増加したのに対して、ストレッチングを行ったグループは7.2%の増加に留まりました。

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Fig.2:Junior RM, 2017より筆者作成

 

 このような研究結果はサンパウロ大学のBarrosoらも報告しており、筋トレ前のストレッチングは筋トレの効果を減少させることが示唆されているのです。

 

 さらに、2019年ではストレッチングによる筋電図学的な分析も行われています。

 

 テキサス工科大学のPalmerらは、20代の被験者を集めてハムストリングスに対する120秒間のストレッチングが筋力の発生速度(RTD)に与える影響について検証しました。

 

 その結果、ストレッチング前後の筋力の発生速度は有意に減少することがわかりました。

スクリーンショット 2019-12-26 15.56.42

Fig.3:Palmer TB, 2019より筆者作成

 

 筋力の発生速度は瞬発的な筋力の発生状況を示しており、この結果はトレーニングのパフォーマンスの減少を意味しています(Palmer TB, 2019)。

 

 また、この結果を支持するように、ニューファンドランドメモリアル大学のCaldwellらは、ハムストリングスに対するストレッチングによる筋力および瞬発的なジャンプパフォーマンスに与える影響を調査しました。

 

 その結果、ストレッチングされた側の最大筋力が減少するだけでなく、対側の筋力の減少も認めました。またジャンプパフォーマンスも低下することがわかりました(Caldwell SL, 2019)。

 

 これらの結果から、2019年の現在でも筋トレ前のストレッチングはトレーニングパフォーマンスを低下させることが依然として示されているのす。

 

 しかしながら、それでも筋トレの前にストレッチングすることによる怪我の予防効果や、心理的な気持ち良さなどのポジティブな効果も捨てがたいでしょう。

 

 そこで議論されているのがトレーニングのパフォーマンスを低下させないストレッチングの方法論であり、最近では「2つのポイント」が提唱されています。

 

→ここからはnoteでご覧ください!

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◆ 筋トレの科学シリーズ

シリーズ①:筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを理解しよう

シリーズ②:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

シリーズ③:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう

シリーズ④:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう

シリーズ⑤:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取を知っておこう

シリーズ⑥:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取の方法論 

シリーズ⑦:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)について知っておこう

シリーズ⑧:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)の実践論

シリーズ⑨:筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう 

シリーズ⑩:筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間について知っておこう

シリーズ⑪:筋トレの効果を最大にするトレーニングの頻度について知っておこう

シリーズ⑫:筋トレの効果を最大にするタンパク質の品質について知っておこう

シリーズ⑬:筋トレの効果を最大にするロイシンについて知っておこう

シリーズ⑭:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取方法まとめ

シリーズ⑮:筋トレの効果を最大にするベータアラニンについて知っておこう

シリーズ⑯:いつまでも若々しい筋肉を維持するためには筋トレだけじゃ不十分?

シリーズ⑰:筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう(2017年7月版) 

シリーズ⑱:筋トレとアルコール摂取の残酷な真実

シリーズ⑲:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう(2017年7月版)

シリーズ⑳:長生きの秘訣は筋トレにある

シリーズ㉑:筋トレの最適な負荷量を知っておこう(2017年8月版)

シリーズ㉒:筋トレが不安を解消するエビデンス

シリーズ㉓:筋肉量を維持しながらダイエットする方法論

シリーズ㉔:プロテインの摂取はトレーニング前と後のどちらが効果的?

シリーズ㉕:筋トレの前にストレッチングをしてはいけない理由

シリーズ㉖:筋トレの効果を最大にするウォームアップの方法を知っておこう

シリーズ㉗:筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間を知っておこう(2017年9月版)

シリーズ㉘:BCAAが筋肉痛を回復させるエビデンス

シリーズ㉙:筋トレの効果を最大にするタマゴの正しい食べ方

シリーズ㉚:筋トレが睡眠の質を高める〜世界初のエビデンスが明らかに

シリーズ㉛:筋肉の大きさから筋トレをデザインしよう

シリーズ㉜:HMBが筋トレの効果を高める理由~国際スポーツ栄養学会のガイドラインから最新のエビデンスまで

シリーズ㉝:筋トレの効果を高める最新の3つの考え方〜Schoenfeld氏のインタビューより

シリーズ㉞:筋トレによって脳が変わる〜最新のメカニズムが明らかに

シリーズ㉟:ホエイプロテインは食欲を抑える〜最新のエビデンスを知っておこう

シリーズ㊱:筋トレが病気による死亡率を減少させる幸福な真実

シリーズ㊲:プロテインは腎臓にダメージを与える?〜現代の科学が示すひとつの答え

シリーズ㊳:筋トレとアルコールの残酷な真実(続編)

シリーズ㊴:筋トレの効果を最大にする「関節を動かす範囲」について知っておこう

シリーズ㊵:筋トレが続かない理由〜ハーバード大学が明らかにした答えとは?

シリーズ㊶:筋トレと遺伝の本当の真実〜筋トレの効果は遺伝で決まる?

シリーズ㊷:エビデンスにもとづく筋肥大を最大化するための筋トレ・ガイドライン

シリーズ㊸:筋トレしてすぐの筋肥大は浮腫(むくみ)であるという残念な真実

シリーズ㊹:時間がないときにやるべき筋トレメニューとは〜その科学的根拠があきらかに

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