リハビリmemo

大学病院勤務・大学院所属の理学療法士・トレーナーによる「最新の研究をトレーニングにつなげるための記録」

高タンパク質は腎臓にダメージを与えない〜最新エビデンスが明らかに


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 「高タンパク質の摂取は、腎臓にダメージを与えるのか?」

 

 1948年、ミネソタ大学のThomas Addisが「腎臓への過負荷は腎臓に長期的なダメージを与える」という報告をして以来、このテーマは半世紀にわたって議論されてきました。

 

 腎臓は、からだの老廃物を濾過してくれる大切な臓器です。血液のなかの老廃物は腎臓の糸球体で濾過されます。      

 

 動物実験では、タンパク質を過剰に摂取させると、糸球体で濾過される量が増えることによって腎臓の機能が低下することが示唆されています。また、腎臓病の患者を対象に高タンパク質の食事を摂取させた研究では、腎臓病が悪化することが報告されています(Cirillo M, 2014)。

 

 このような動物実験などの結果をもとに、多くの識者は書籍やメディアで高タンパク質の摂取が腎臓にダメージを与えると警鐘を鳴らしています。しかし、これらの記事は動物実験などをもとにしたものであり、健常者を対象にした研究結果にもとづいたものではありませんでした。そこに科学的根拠(エビデンス)はなかったのです。

 

 このような状況に対して、著名な運動生理学者であるマックマスター大学のPhillips氏はこう述べています。

 

 「高タンパク質の摂取が腎臓にダメージを与えるというのは『神話』である」

 

 近年になり、健常者を対象にした高タンパク質の摂取による腎臓への影響を検証した研究結果が少しづつ積み重ねられ、ようやくエビデンスが示されはじめているのです。

 

 今回は、2018年11月に報告された最新の研究結果をご紹介しましょう。はたして、神話は崩れるのでしょうか。



Table of contents

 

 

◆ 高タンパク質が腎臓にダメージを与えない2つのエビデンス

 

 筋肉のもととなる筋タンパク質は24時間、いつも分解と合成を繰り返しています。この分解される量と合成される量が釣り合っていることによって、僕たちの筋肉量は維持されています。

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 筋トレによって筋肉量を増やすためには、筋タンパク質の合成量が分解量を上回らなければなりません。しかし、トレーニングを行っただけでは筋タンパク質の合成は高まりません。トレーニングを行い、そこでタンパク質を摂取することによって筋タンパク質が多量に合成され、筋肥大が生じるのです。

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 これが筋トレにはタンパク質の摂取が重要だといわれる理由です。

 

 では、どのくらいのタンパク質を摂取すれば良いのかというと、2017年に報告されたマックマスター大学のMortonらのメタアナリシスでは「1日で体重1kgあたり1.62g(最大で2.2g)」がもっとも筋タンパク質の合成を高める最適な摂取量であることが示唆されています(Morton RW, 2017)。1日あたり1.62g/kgの摂取量とは、体重70kgで113gほどということになります。

*メタアナリシスとは、これまでの研究結果を統計的手法により全体としてどのような傾向があるかを解析するエビデンスレベルがもっとも高い研究デザイン。

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう(2017年7月版)

 

 なぜ1日あたりの摂取量なのかというと、トレーニングにより筋タンパク質の合成感度が上昇する時間が24時間だからです。そのため、トレーニング直後だけでなく、筋タンパク質の合成感度が高まっているトレーニング後の24時間で最適なタンパク質の摂取量を摂取することが筋肥大の最大化につながるのです。

筋トレ後のタンパク質の摂取は「24時間」を意識するべき理由

 

 そこで心配になるのが、1日あたり1.62g(最大で2.2g)の摂取量が腎臓にダメージを与えるのではないか?ということです。

 

 この問いの答えとなるエビデンスが近年になり、ようやく報告されはじめたのです。

 

 2017年、コペンハーゲン大学のKamperらは、これまでに報告されたタンパク質の摂取による腎臓へのダメージを検証した研究結果をまとめたレビューを報告しています。そこで明らかになったのが、腎臓へのダメージはタンパク質の摂取量ではなく「食物源」によって影響を受けるということでした。

 

 その食物源とは「赤身肉や加工肉」であり、赤身肉を過剰に摂取すると腎臓にダメージを与える可能性が示されたのです。そして、白身肉やナッツ、大豆、乳製品の摂取による腎臓へのダメージは認められませんでした。

プロテインは腎臓にダメージを与える?〜現代の科学が示すひとつの答え

 

 また、これまでの研究報告から、ハーバード大学が出版するハーバードヘルスパブリッシングでは、タンパク質の摂取量の上限について「1日あたり2.0g/kg以下にとどめることが推奨される」と勧告しています。

 

 さらに、VECのVan Elswykらは世界ではじめてタンパク質の摂取量の安全性についてのシステマティックレビューを報告しました。

*システマティックレビューとは、文献をくまなく調査し、質の高い研究のデータをバイアスのようなデータの偏りを限りなく除き、分析を行うエビデンスレベルのもっとも高い研究デザイン。

 

 Van Elswykらは、これまでに報告されたタンパク質の摂取による腎臓への影響を調査した26の観察研究などをもとに、摂取量の上限値を検証し、こう結論づけています。

 

 「現在のところの安全なタンパク質の摂取量は1日あたり2.0g/kgまでである」

 

 Van Elswykらのシステマティックレビューにより、1日あたり2.0g/kgまでであれば腎臓へのダメージがないことが示唆されました。しかしながら、このレビューは高タンパク質を摂取してから6ヶ月間までの調査結果となっており、6ヶ月以上の安全性についてはさらなる検証を必要としていました。

 

 これらの報告により、赤身肉の過剰な摂取を控え、1日あたりのタンパク質の摂取量が2.0g/kg以内であれば腎臓へのダメージがないことがエビデンスとして示されたのです。そのため、タンパク質の最適な摂取量とされる1日あたり1.62g/kg(最大で2.2g/kg)であれば、腎臓へのダメージはないとされています。

プロテインは腎臓にダメージを与える?〜ハーバード大学の見解と最新エビデンス

 

 そして2018年11月、さらにタンパク質の摂取が腎臓にダメージを与えないことを示す新たなエビデンスが報告されたのです。



◆ 高タンパク質が腎臓にダメージを与えない最新エビデンス

 

 カナダ・ウォータールー大学のDevriesらは、タンパク質の摂取量と腎臓の機能について検証された28件の研究結果(14件のランダム化比較試験、14件のクロスオーバー試験)をもとに腎臓に問題のない1,356名(平均年齢49±15歳)を対象にしたメタアナリシスを報告しました。

 

 高タンパク質の摂取量(1日あたり1.81±0.60g/kg)と通常の摂取量(1日あたり0.93±0.51g/kg)による腎臓の機能の指標である糸球体濾過量(GFR)への影響を解析した結果、Devriesらは、こう述べています。

 

 「高タンパク質の摂取は、腎臓の機能にダメージを与えない」

 

 メタアナリシスの結果、高い摂取量と通常の摂取量よる糸球体濾過量の変化量には有意な差は認められませんでした。

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Fig.1:Devries MC, 2018より筆者作成

 

 また、タンパク質の摂取量と糸球体濾過量の変化量には有意な相関関係は示されませんでした(r=0.184, p=0.33)。

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Fig.2:Devries MC, 2018より筆者作成

 

 さらに、サブグループ解析の結果では、被験者の年齢、タンパク質の摂取期間および摂取量は糸球体濾過量の変化量に寄与しないことも示されました。それだけではなく、2型糖尿病は腎臓病のリスク因子になりますが、2型糖尿病を罹患していても高タンパク質の摂取が糸球体濾過量の変化量に寄与しないことが示されたのです。

 

 これらの結果から、Devriesらは、高タンパク質の摂取量が腎臓の機能に悪影響を与えないエビデンスが示されたとともに、腎臓病の発症リスクを高める糖尿病に罹患していても腎臓の機能に悪影響を与えないことから、高タンパク質の摂取の安全性を強調しています。

 

 また、高タンパク質の摂取の安全性に年齢は関係ないというサブグループ解析の結果から、若年者だけでなく、加齢による筋肉量の減少(サルコペニア)が生じやすい高齢者においても安全に高タンパク質の摂取を推奨することができると述べています。しかしながら、データの異質性が高いこと、クロスオーバー試験の報告が解析対象に多く含まれていることなどから、今後のさらなる検証が必要であるとしています。

 

 

 高タンパク質の摂取による腎臓への影響についての半世紀にわたる研究や議論の結果、これまでに2つのエビデンスが示されていました。腎臓へのダメージは、タンパク質の「食物源」によって異なり、とくに「赤身肉や加工肉」の過剰な摂取が原因である可能性が示唆されています。また、システマティックレビューでは、1日あたり2.0g/kgまでの高タンパク質の摂取量であれば腎臓へのダメージがないことが確認されています。

 

 ここにDevriesらのメタアナリシスは、タンパク質の摂取量や年齢、摂取期間にかかわらず、高タンパク質の摂取は腎臓の機能低下に関与しないというエビデンスを追加したのです。

 

 このような背景から、マックマスター大学のPhillips氏はこう述べています。

 

 「神話は崩壊した・・・高タンパク質の摂取は腎機能に影響しないことがエビデンスとして示されているのだ」

Myth busted: Researchers show that a high-protein diet does not affect kidney function-McMaster University

 

*高血圧や糖尿病など腎臓病の発症リスクである病気がある場合、または軽度の腎機能の低下が指摘されている場合は、高タンパク質の摂取について主治医にご相談することをお奨めします。また、ご紹介した研究報告は、高タンパク質の摂取による腎機能への影響についてであり、腎結石の発症リスクへの影響については結論がでていない状況です。

 

 

www.awin1.com

 

 

◆ 読んでおきたい記事

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シリーズ②:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

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シリーズ⑦:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)について知っておこう

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シリーズ89:筋トレするなら知っておきたいサプリメントの最新エビデンスまとめ

シリーズ90:筋トレをするとモテる本当の理由

シリーズ91:高タンパク質は腎臓にダメージを与えない〜最新エビデンスが明らかに

 

◆ 参考論文

Morton RW, et al. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med. 2018 Mar;52(6):376-384.

Kamper AL, et al. Long-Term Effects of High-Protein Diets on Renal Function. Annu Rev Nutr. 2017 Aug 21;37:347-369.

Van Elswyk ME, et al. A Systematic Review of Renal Health in Healthy Individuals Associated with Protein Intake above the US Recommended Daily Allowance in Randomized Controlled Trials and Observational Studies. Adv Nutr. 2018 Jul 1;9(4):404-418.

Devries MC, et al. Changes in Kidney Function Do Not Differ between Healthy Adults Consuming Higher- Compared with Lower- or Normal-Protein Diets: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Nutr. 2018 Nov 1;148(11):1760-1775.