リハビリmemo

大学病院勤務・大学院リハビリテーション学所属の理学療法士・トレーナーによる「最新の研究をトレーニングにつなげるための記録」

筋肉量を維持しながらダイエットする方法論

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 理想のダイエットとは何でしょうか?

 

 アメリカ・チャールストン大学のDudgeonらはこう答えています。

 

 「筋肉量を維持しながら体重(脂肪)を減らす」

 

 割れた腹直筋、肥大した大胸筋、盛り上がる上腕二頭筋腸腰筋の浮き出たウエスト。多くのトレーニーがSNSに自分の身体をアップすることからも、ボディメイクのひとつの目的が身体美といっても過言はないでしょう。

 

 この身体美を得るためには、筋肉量を維持しながら体重(脂肪)を減らさなければなりません。

 

 しかし、筋肉量の維持と体重の減少はトレードオフの関係でもあります。カロリー制限やトレーニングによるダイエットの多くの場合で筋肉量が減少してしまうからです(Witard OC, 2014)。

 

 では、どのようにしたら理想のダイエットを達成できるのでしょうか?

 

 Dudgeonらはこう続けます。

 

 「そのためにはタンパク質の摂取が鍵である」

 

 今回は、筋肉量を維持しながらダイエットする方法論について、近年の報告をご紹介しながら考察していきましょう。

 

Table of contents

 

 

◆ 3度の食事が筋肉量を維持する

 

 私たちの筋肉は、筋タンパク質によってカタチ作られています。

 

 筋タンパク質はいつも合成と分解を繰り返しており、筋肉量を維持するためには筋タンパク質の合成と分解のバランスを保たなければなりません。

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 この筋タンパク質のバランスを保つために必要となるのが「タンパク質」です。

 

 タンパク質が消化されるとアミノ酸になり、アミノ酸を活用して筋タンパク質は合成されます。アミノ酸の中でも筋タンパク質の合成に必要なのは「必須アミノ酸」です。必須アミノ酸は体内で作ることができないので、食事やサプリメントで体外から摂取しなければなりません。

 

 空腹時、筋タンパク質のバランスは分解に傾きます。そのため、空腹が続くと筋肉量は減少してしまいます。ここで食事(タンパク質)を摂取することによって、バランスを合成に傾けることができます。これにより筋タンパク質のバランスが維持され、筋肉量が保たれるのです。

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Fig.1:Phillips SM, 2004より筆者作成

 

 私たちは3食の食事でタンパク質を摂取することにより筋タンパク質の合成・分解のバランスを保ち、筋肉量を維持しているのです

 

 これが「3度の食事が大切である」という理由(わけ)です。



◆ 筋肉量を減らさないポイントはタンパク質の摂取

 

 ここでダイエット時の筋タンパク質のバランスを考えてみましょう。

 

 カロリーを制限しようとするとタンパク質の摂取量も減りやすくなります。そのため空腹時と同じように筋タンパク質のバランスは分解に傾きます。これがダイエットで筋肉量が減少する理由です。

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 では、ダイエットによる筋肉量の減少を防ぐためにはどうしたら良いでしょうか?

 

 その答えを示したのがバーミンガム大学のHectorらです。

 

 Hectorらは肥満である被験者を対象に14日間のカロリー制限によるダイエットを行いました。被験者はタンパク質のサプリメント(ホエイまたはソイ)を摂取するグループと炭水化物のサプリメントを摂取するグループに分けられました。

 

 両グループは、タンパク質27-28g、炭水化物(タンパク質と同じカロリー量)のサプリメントをそれぞれ朝食と昼食の間、昼食と夕食の間の1日2回、摂取しました。

 

 14日間のダイエット後、両グループともに同等の体重減少を示しました。しかし、筋タンパク質のバランスには大きな違いが認められたのです。

 

 タンパク質のサプリメントを摂取したグループは、14日間のダイエットを行った後も筋タンパク質のバランスは合成に傾いていましたが、炭水化物のサプリメントを摂取したグループは分解に傾いていました。

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Fig.2:Hector AJ, 2015より筆者作成

 

 また、タンパク質のサプリメントを摂取したグループでは、ホエイを摂取した被験者はソイを摂取した被験者よりも高い筋タンパク質の合成率を示していました。

 

 この結果から、Hectorらはカロリー制限によるダイエットを行っても、1日2回程度のタンパク質の摂取により筋肉量を維持できること、特にホエイタンパク質がダイエット時の筋肉量の維持に最適であることを示唆しています(Hector AJ, 2015)。

 

 Hectorらの報告は、カロリー制限を行っても、不足したタンパク質を補うことによって筋肉量を維持できる可能性を示してます。しかし、もっと過激なダイエットであるカロリー制限+レジスタンストレーニングを行った場合でもタンパク質を補うことで筋肉量を維持できるのしょうか?



◆ ダイエット中のトレーニングは筋肉量を減少させる

 

 カロリー制限によってタンパク質の摂取量が減ってもレジスタンストレーニングをすれば筋肉量を維持できる。

 

 これは大きな誤解です。

 

 トレーニング後、筋タンパク質のバランスは合成ではなく、分解に傾きます。ここで食事(タンパク質)を摂取することによって、はじめて合成に大きく傾くのです。

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Fig.3:Phillips SM, 2004より筆者作成

 

 そのため、カロリー制限中にトレーニングを行っても筋肉量を維持する効果は期待できないのです。

 

 では、タンパク質を補うことでダイエット中にトレーニングを行っても筋肉量を維持できるのでしょうか?

 

 2017年7月、チャールストン大学のDudgeonらはこの問についての検証結果を報告しています。

 

 習慣的にトレーニングを行っている20代の被験者を対象に、8週間のカロリー制限+トレーニングプログラムを実施しました。

 

 被験者はタンパク質を摂取するグループと炭水化物を摂取するグループに分けられました。トレーニングは週4日行われ、両グループはトレーニング前後にホエイタンパク質28g(合計56g)のサプリメント、タンパク質と同じカロリー量の炭水化物のサプリメントをそれぞれ摂取しました。

 

 8週間のプログラムを終えた結果、タンパク質を摂取したグループは炭水化物を摂取したグループと比較して、有意に体重が減少し、筋肉量が維持されていたのです。

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Fig.4:Dudgeon WD, 2017より筆者作成

 

 この結果は、カロリー制限にトレーニングを組み入れたハードなダイエットにおいても、タンパク質を補うことによって、筋肉量を維持できることが示唆しています。

 

 Dudgeonらは、筋肉量が維持された理由として、トレーニング前後のタンパク質摂取が、トレーニングによる筋タンパク質の分解作用を軽減し、トレーニング後の合成作用の増大に寄与したと推測しています(Dudgeon WD, 2017)。

 

 

 カロリー制限によるダイエットは多くの場合で筋肉量の減少を伴います。さらにトレーニングを行っても筋肉量の減少を抑えることはできません。しかし、Hector、Dudgeonらの検証により、筋肉量を維持する方法論が明らかになりつつあるのです。

 

 カロリー制限だけであれば食事と食事の間に1日2回ほどホエイプロテインを摂取するのが良いでしょう。また、カロリー制限にトレーニングも合わせて行う場合は、トレーニング前後のホエイプロテイン摂取を加えることで筋肉量を維持できる可能性があります。

 

 しかしながら、カロリー制限中のタンパク質の最適な摂取量、摂取タイミングなどは今後のさらなる検証が必要です。本ブログでも引き続き、理想的なダイエットの方法論についての知見をピックアップしていこうと思います。 

 

 

◆ 読んでおきたい記事

シリーズ①:筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを理解しよう

シリーズ②:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

シリーズ③:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう

シリーズ④:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう

シリーズ⑤:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取を知っておこう

シリーズ⑥:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取の方法論 

シリーズ⑦:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)について知っておこう

シリーズ⑧:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)の実践論

シリーズ⑨:筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう 

シリーズ⑩:筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間について知っておこう

シリーズ⑪:筋トレの効果を最大にするトレーニングの頻度について知っておこう

シリーズ⑫:筋トレの効果を最大にするタンパク質の品質について知っておこう

シリーズ⑬:筋トレの効果を最大にするロイシンについて知っておこう

シリーズ⑭:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取方法まとめ

シリーズ⑮:筋トレの効果を最大にするベータアラニンについて知っておこう

シリーズ⑯:いつまでも若々しい筋肉を維持するためには筋トレだけじゃ不十分?

シリーズ⑰:筋トレの効果を最大にするセット数について知っておこう(2017年7月版) 

シリーズ⑱:筋トレとアルコール摂取の残酷な真実

シリーズ⑲:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう(2017年7月版)

シリーズ⑳:長生きの秘訣は筋トレにある

シリーズ㉑:筋トレの最適な負荷量を知っておこう(2017年8月版)

シリーズ㉒:筋トレが不安を解消するエビデンス

シリーズ㉓:筋肉量を維持しながらダイエットする方法論

シリーズ㉔:プロテインの摂取はトレーニング前と後のどちらが効果的?

シリーズ㉕:筋トレの前にストレッチングをしてはいけない理由

シリーズ㉖:筋トレの効果を最大にするウォームアップの方法を知っておこう

シリーズ㉗:筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間を知っておこう(2017年9月版)

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シリーズ㉛:筋肉の大きさから筋トレをデザインしよう

シリーズ㉜:HMBが筋トレの効果を高める理由~国際スポーツ栄養学会のガイドラインから最新のエビデンスまで

シリーズ㉝:筋トレの効果を高める最新の3つの考え方〜Schoenfeld氏のインタビューより

シリーズ㉞:筋トレによって脳が変わる〜最新のメカニズムが明らかに

シリーズ㉟:ホエイプロテインは食欲を抑える〜最新のエビデンスを知っておこう

 

References

Witard OC, et al. Increased net muscle protein balance in response to simultaneous and separate ingestion of carbohydrate and essential amino acids following resistance exercise. Appl Physiol Nutr Metab. 2014 Mar;39(3):329-39.

Phillips SM, et al. Protein requirements and supplementation in strength sports. Nutrition. 2004 Jul-Aug;20(7-8):689-95.

Hector AJ, et al. Whey protein supplementation preserves postprandial myofibrillar protein synthesis during short-term energy restriction in overweight and obese adults. J Nutr. 2015 Feb;145(2):246-52.

Dudgeon WD, et al. Effect of Whey Protein in Conjunction With a Caloric-Restricted Diet and Resistance Training. J Strength Cond Res. 2017 May;31(5):1353-1361.