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筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間を知っておこう(2017年9月版)


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 あなたの最適なセット間の休憩時間はどのくらいでしょうか?

 

 この問のこたえとなるシステマティックレビューが2017年9月、雑誌Sports Medicineに掲載されました。

*システマティックレビュー:質の高い研究データのみを集めて分析する、エビデンスレベルがもっとも高い報告。

 

 これまで、レジスタンストレーニング(筋トレ)の効果的なセット間の休憩時間は3分以上であるとされてきました。

筋トレの効果を最大にするセット間の休憩時間を知っておこう

 

 メルボルン大学のGrgicらは、今回のレビューで新たな知見を明らかにしたのです。

 

 「セット間の休憩時間は、性別やトレーニングの経験、運動強度によって異なる」

 

 今回は、Grgicらの最新のレビューをご紹介しながら、セット間の休憩時間の重要性から最適な休憩時間の設定について考察していきましょう。

 

Table of contents

 

 

◆ なぜセット間の休憩時間が大事なのか?

 

 私たちが歩いたり、走ったりできるのも、すべては筋肉の収縮によりもたらされています。そのエネルギー源が「ATP(アデノシン三リン酸)」です。

 

 運動を継続するためには、絶えることなくATPを分解して、エネルギーを作り出す必要があります。しかし、筋肉にはATPが少量しかないため、使用したATPを瞬時に補充しなければなりません。

 

 そこでATPを補充する3つの仕組みである「クレアチンリン酸系、解糖系、有酸素系」が重要となります。

 

 100mを全力で走る場合、筋肉にあるクレアチンリン酸を分解してATPを補充します。これをクレアチンリン酸系といい、高強度で短時間の運動が対象になります。

 

 これが400m走になると、筋肉にある糖を分解してATPを補充します。これが解糖系であり、1分程度の高〜中強度の運動ではたらきます。

 

 クレアリンリン酸系や解糖系は酸素を使わずにATPを補充するため、無酵素代謝ともいわれています。

 

 これに対してジョギングなどの軽い運動では、筋肉のミトコンドリアが酸素を使用してATPを作り出します。これが有酸素系による補充であり、低強度で長時間の運動である有酸素運動が対象になります。

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 このように筋肉へのATPの補充は、運動強度や運動時間に応じてその仕組みを使い分けているのです。

 

 では、レジスタンストレーニングにおけるATPの補充は、どの仕組みを用いているのでしょうか?

 

 ニュージャージー大学のRatamessらは、トレーニング歴のある被験者を対象に、ペンチプレスを行ったときのエネルギー消費量について調査しました。

 

 被験者はベンチプレスを最大筋力の80%で疲労困憊になるまで行い、これを5セット繰り返しました。セット間の休憩時間は30秒とし、5セット終了までのエネルギー消費量を計測しました。

 

 その結果、トレーニング時のエネルギー消費は無酸素性代謝レベルまで増加することがわかりました。

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Fig.1:Ratamess NA, 2007より筆者作成

 

 この結果から、高強度のトレーニングでは、主に無酸素性代謝であるクレアチンリン酸系と解糖系によってATPの補充が行われていることが示唆されたのです。

 

 次にRatamessらは、休憩時間を30秒から3分に増やして、同様の計測を実施しました。

 

 その結果、トレーニング時のエネルギー消費が無酸素代謝レベル以下に減少することがわかったのです。

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Fig.2:Ratamess NA, 2007より筆者作成

 

 高強度のトレーニングを行ったあとは、呼吸が荒くなります。これは有酸素系によってクレアチンリン酸系にATPを補充し、解糖系へは乳酸の再利用を促すためです。Ratamessらは、休憩時間の延長が有酸素系による無酸素性代謝の回復を高め、トレーニング時のエネルギー消費を減少させたと推測しています。

 

 さらにRatamessらは、長短の休憩時間によるトレーニングの総負荷量を比較した結果、3分の休憩時間では30秒に比べて、総負荷量が大きく増加したことを示しました。

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Fig.3:Ratamess NA, 2007より筆者作成

 

 これらの結果から、休憩時間を長くすることは、高強度トレーニングに必要な無酸素性代謝によるATPの補充を促進し、トレーニングの総負荷量を増大させることが示唆されたのです(Ratamess NA, 2007)。

 

 Ratamessらの報告はその後も再検証され、同じ結果が得られています。このような背景から、2009年、アメリカスポーツ医学会(ACSM)は「レジスタンストレーニングの休憩時間は3分以上が望ましい」という公式声明を発表しています(American College of Sports Medicine. 2009)。

 

 しかし、今回のレビューを報告したGrgicらは、これに疑義を投げかけたのです。



◆ 最適なセット間の休憩時間には個別性がある

 

 ACSMの公式声明もあり、これまでセット間の休憩時間は3分以上が良いと画一的に考えられてきました。

 

 しかし、メルボルン大学のGrgicらは、セット間の休憩時間に関する23もの研究報告を分析した結果、性別やトレーニング経験、運動強度によって最適な休憩時間が異なることを明らかにしたのです。

 

 これまで性差がセット間の休憩時間の影響をあたえることは考慮されていませんでした。しかし、男女間には筋肉量の違いや筋代謝、血流などの回復機構が異なることが以前より報告されていたのです(Hunter SK, 2014)。そこでGrgicらは、性差による休憩時間の影響を分析した結果、女性は男性よりも筋肉の代謝の回復が早いことを明らかにしました。

 

 女性は男性よりも休憩時間が短くても筋肉の代謝を早く回復できる可能性が示唆されたのです。

 

 次に、トレーニング歴の有無による最適な休憩時間を分析しました。トレーニング経験者は、やはり高強度のトレーニングを行うことが多く、その場合には休憩時間が長い(2分以上)ほうが総負荷量の増大につながり、トレーニング効果が高まることが示されました。

 

 これに対して、トレーニング初心者は、低強度トレーニングを選択することが多く、休憩時間は短時間(1-2分間)でも十分に高いトレーニング効果が得られることが示されました。

 

 トレーニング歴あるいは実施する運動強度により、最適な休憩時間が異なることが明らかになったのです。

 

 トレーニングのセット間の休憩時間は、筋肉の疲労回復における重要な時間です。これまで3分以上の長い休憩時間が無酸素性代謝による補充機能を回復させ、総負荷量を増大させることから推奨されてきました。しかし、Grgicらのレビューによって、最適な休憩時間には個別性があることが明らかになったのです。

 

・女性は男性よりも筋代謝の回復が早い

・トレーニング初心者は1〜2分といった短時間でも筋代謝の回復が可能である

・トレーニング経験者では2分以上の長時間の休憩時間が推奨される

・高強度トレーニングを行う場合は2分以上の長い休憩時間が推奨され、低強度トレーニングであれば1〜2分の短時間の休憩時間でも十分に筋肥大の効果が得られる

 

 Grgicらは、これらの因子から自分のニーズや目標に応じて、個別の休憩時間を設定するべきであると結論づけています。

 

 

 レジスタンストレーニングが無酸素性代謝によるATPの補充を多く受けているのであれば、セット間の休憩時間を長くすることでトレーニングの総負荷量を増やせることは容易に想像できると思います。

 

 しかし、限られた時間の中でトレーニングを行うリアルな場面では、そこまで休憩時間を増やせないのも事実です。

 

 Grgicらの報告を参考にすると、女性やトレーニング初心者は休憩時間を短くしても十分な効果を享受できるでしょう。またトレーニング経験者であっても休憩時間を短縮したい場合は、運動強度を減らし、運動回数を高めることで総負荷量を維持することが可能と思われます。

 

 あなたの最適なセット間の休憩時間はどのくらいでしょうか?

 

 

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◆ 参考論文

Ratamess NA, et al. The effect of rest interval length on metabolic responses to the bench press exercise. Eur J Appl Physiol. 2007 May;100(1):1-17.

American College of Sports Medicine. American College of Sports Medicine position stand. Progression models in resistance training for healthy adults. Med Sci Sports Exerc. 2009 Mar;41(3):687-708.

Grgic J, et al. Effects of Rest Interval Duration in Resistance Training on Measures of Muscular Strength: A Systematic Review. Sports Med. 2017 Sep 20.

Hunter SK. Sex differences in human fatigability: mechanisms and insight to physiological responses. Acta Physiol (Oxf). 2014 Apr;210(4):768-89.