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リハビリmemo

大学病院勤務・大学院リハビリテーション学所属の理学療法士による「研究と臨床をつなげるための記録」

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう

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 前回はタンパク質の摂取量についてスポーツ栄養学の知見から考察してきました。

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

 

 今回はタンパク質を摂取する「タイミング」に目を向けてみましょう。タンパク質はいつでも摂取すれば良いというわけではありません。じつは筋肉を構成する筋タンパク質がもっとも合成されやすいゴールデンタイムがあるのです。

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◆ タンパク質の摂取はトレーニングの前か後か?

 

 プロテインはトレーニングの前に飲むべきなのでしょうか?それとも後に飲むべきでしょうか?

 

 この疑問について、ネットメディアやブログでさまざまな意見が論じられていますが、明確な答えは示されてません。まずは、この疑問に対する答えとなる近年のスポーツ栄養学の知見を見ていきましょう。

 

 この疑問を最初に検証したのがバーミンガム大学のTiptonらです。Tiptonらはウエイトトレーニング歴のある男性17名をトレーニングの1時間前にプロテインを摂取するグループ(8名)とトレーニングの1時間後に摂取するグループ(9名)の2つに分けました。2つのグループはそれぞれのタイミングでプロテインを摂取し、トレーニング後の筋タンパク質の合成バランスが計測されました。

 

 その結果、トレーニング後から2時間までの筋タンパク質の合成バランスでは、トレーニング前にプロテインを摂取したグループに大きな変化はなく、トレーニング後に摂取したグループに有意な増加が認められたのです(Tipton KD, 2007)。

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Fig.1:Tipton KD, 2007より引用改変

 

 Tiptonらの報告によって、トレーニング前よりトレーニング後にタンパク質を摂取するほうが筋タンパク質を合成しやすいことが示唆されました。

 

 そして、その後もTiptonらの知見を支持する報告が続きます。

 

 テキサス州医科大学のFujitaらは、トレーニング歴のある被検者22名をトレーニングの前にタンパク質を摂取するグループ(11名)とタンパク質をまったく摂取しないグループ(11名)に分け、トレーニング後の筋タンパク質の合成率を検証しました。

 

 その結果は意外なものでした。トレーニング前にプロテインを摂取したグループの筋タンパク質の合成率は、トレーニング前から上昇しましたが、トレーニング後1時間が経過するとタンパク質を摂取していないグループの合成率が上回り、2時間の時点で両グループに有意な差は認められませんでした。

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Fig.2:Fujita S, 2009より引用改変

 

 Fujitaらはこの結果から、トレーニング前のタンパク質摂取はトレーニング後の筋タンパク質の合成を妨げる可能性を示唆しており、トレーニング前よりもトレーニング後のタンパク質摂取を推奨しています(Fujita S, 2009)。

 

 2012年には同様の結果をオーストラリア・スポーツ研究所のBurkeらが報告しています(Burke LM, 2012)。これらの知見から、現代のスポーツ栄養学では「筋タンパク質の合成を高めるのはトレーニング後のタンパク質摂取である」というコンセンサスが得られているのです。

 

 では、トレーニング後のタンパク質摂取のもっとも効果的な時間帯はいつなのでしょうか?



◆ トレーニング後から1時間以内がタンパク質摂取のゴールデンタイム

 

 トレーニングによって筋タンパク質の合成感度が高まります。この合成感度の上昇は、少なくともトレーニング後24時間は続くことが明らかになっています(Burd NA, 2011)。

 

 さらに合成感度の経時的な変化を見てみると、トレーニング後3時間>24時間>48時間の順で大きくなることが報告されています(Phillips SM, 1997)。トレーニング後のなるべく早い時間帯にタンパク質を摂取することによって、筋タンパク質の合成が促進されるのです。

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Fig.3:Phillips SM, 1997より引用改変

 

 トレーニング後3時間の時点において筋タンパク質の合成感度が高いことがわかりました。次に、トレーニング直後から3時間までの間の合成感度の変化をさらに細かく見てみましょう。

 

 オンタリオ大学のLemonらは、トレーニング後のタンパク質摂取のタイミングについてまとめたレビューを報告しています。レビューの中で、もっとも筋タンパク質の合成を高める時間帯はトレーニング後1〜2時間であることを示しています(Lemon PW, 2002)。

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Fig.4:Lemon PW, 2002より引用改変

 

 近年の研究報告では、カナダ・マクマスター大学のBurdらがトレーニング後の筋タンパク質合成の経時的変化について報告しています。Burdらは、トレーニング歴のある15名の被検者を対象に、レジスタンストレーニング後の血中アミノ酸濃度の経時的変化を30分、1時間、1時間30分、2時間30分で計測しました。

 

 その結果、血中アミノ酸濃度はトレーニング後30分から1時間でピークを迎え、2時間30分を経過するとトレーニング前の値に戻ることがわかり、Lemonらのレビューと同様の結果が示されたのです。

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Fig.5:Burd NA, 2011より引用改変

 

 これらの報告によって、現在では「トレーニング後から1時間以内」がもっとも筋タンパク質の合成感度が高い時間帯であることが明らかになっています。スポーツ栄養学では、この時間帯を「筋タンパク質合成の窓(anabolic window)」と呼んでおり、筋タンパク質合成のゴールデンタイムとされているのです。

 

 トレーニングの効果を最大化させるためには、筋タンパク質の合成感度がもっとも高まる「トレーニング後1時間以内」を目安とした食事やプロテインによるタンパク質の摂取が推奨されています。

 

 そしてトレーニングによる筋タンパク質の合成感度の増加は少なくとも24時間は続きます。そのため、トレーニング効果を高めるためにはトレーニング後24時間におけるタンパク質の摂取パターンを考えなければなりません。

 

 次回は、トレーニング後24時間のタンパク質の摂取パターンについてスポーツ栄養学の知見をもとに考察していきましょう。



筋力トレーニングの科学

シリーズ①:筋肉を増やすための栄養摂取のメカニズムを理解しよう

シリーズ②:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

シリーズ③:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう

シリーズ④:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう

シリーズ⑤:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取を知っておこう

シリーズ⑥:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取の方法論

シリーズ⑦:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)について知っておこう

シリーズ⑧:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)の実践論

 

References

Tipton KD, et al. Stimulation of net muscle protein synthesis by whey protein ingestion before and after exercise. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2007 Jan;292(1):E71-6.

Fujita S, et al. Essential amino acid and carbohydrate ingestion before resistance exercise does not enhance postexercise muscle protein synthesis. J Appl Physiol (1985). 2009 May;106(5):1730-9.

Burke LM, et al. Preexercise aminoacidemia and muscle protein synthesis after resistance exercise. Med Sci Sports Exerc. 2012 Oct;44(10):1968-77.

Burd NA, et al. Enhanced amino acid sensitivity of myofibrillar protein synthesis persists for up to 24 h after resistance exercise in young men. J Nutr. 2011 Apr 1;141(4):568-73

Phillips SM, et al. Mixed muscle protein synthesis and breakdown after resistance exercise in humans. Am J Physiol. 1997 Jul;273(1 Pt 1):E99-107.

Lemon PW, et al. The role of protein and amino acid supplements in the athlete's diet: does type or timing of ingestion matter? Curr Sports Med Rep. 2002 Aug;1(4):214-21.