リハビリmemo

大学病院勤務・大学院所属の理学療法士・トレーナーによる「最新の研究をトレーニングにつなげるための記録」

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう(2018年4月版)


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 筋トレの効果を最大にするためには、タンパク質の摂取が不可欠です。

 

 これは、筋トレだけでは筋肉のもとである筋タンパク質が合成されないからです。では、筋トレには意味がないのか?というと、そういうわけではありません。

 

 筋トレは筋タンパク質の合成感度を上昇させます。

 

 合成感度が上昇したところでタンパク質を摂取することによって、はじめて筋タンパク質が大きく合成されるのです。その結果、筋肥大が生じます。

 

 これが筋トレとタンパク質の摂取はセットで考えるべき理由です。

 

 そこで大事になるのがタンパク質の摂取方法です。

 

 筋トレによって筋タンパク質の合成感度は少なくとも24時間、上昇していることが示唆されています。

筋トレ後のタンパク質摂取は「24時間」を意識すべき理由

 

 スポーツ栄養学では、この期間に筋タンパク質の合成をもっとも高めるための最適なタンパク質の摂取量、タイミング、パターン、品質などが検証されてきました。

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう

筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう

筋トレの効果を最大にする食品やプロテインの選ぶポイントを知っておこう

 

 そして、2018年4月に筋トレ後の食事とプロテインの摂取パターンについての最新のシステマティックレビューが報告されました。今回は、このレビューをご紹介しながら、2017年4月のブログ「筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターンを知っておこう」をアップデートしていきます。

 

Table of contents

 

 

◆ 筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取パターン

 

 筋トレ後のプロテインの最適な摂取パターンについて報告したのがオーストラリア・RMIT大学のAretaらです。

 

 Aretaらはトレーニング経験のある20代の被験者を集めて、プロテインの摂取パターンが異なる3つのグループに分けました。

 

 グループ①はトレーニング後に40gのプロテインを摂取し、次に6時間後に同じ量のプロテインを摂取しました。

 

 グループ②はトレーニング後に20gのプロテインを摂取し、3時間おきに同じ量のプロテインを摂取しました。

 

 グループ③はトレーニング後に10gプロテインを摂取し、1.5時間おきに同じ量のプロテインを摂取しました。

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Fig.1:Areta JL, 2013より筆者作成

 

 3つのグループはトレーニング後12時間で同等のプロテインの摂取量(80g)を摂取し、その後の筋タンパク質の合成率が計測されました。

 

 その結果、20gのプロテインを3時間おきに摂取したグループの筋タンパク質の合成率がもっとも増加したのです。

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Fig.2:Areta JL, 2013より筆者作成

 

 Aretaらの実験で使用されたプロテインは、ホエイを使っており、ホエイはファスト・タンパク質と呼ばれるほど吸収速度の速いタンパク質です。ホエイを摂取すると3〜4時間ほど血中アミノ酸濃度が上昇します。そのため、3時間おきに適量(20g)のホエイを摂取することによって、たえず血中アミノ酸濃度を高めておくことができます。これが筋タンパク質の合成率をもっとも高めた理由であるとAretaらは考察しています(Areta JL, 2013)。

 

 しかし、3時間おきにプロテインのみを摂取するというのは、なかなか現実的には難しいものです。

 

 そこでテキサス・メディカル・ブランチ大学のMamerowらは、3食の食事でしっかりとタンパク質を摂取することを推奨しています。

 

 トレーニング経験のない30代の被験者が集められ、3食のタンパク質の摂取量が異なる2つのグループに分けられました。

 

 ひとつはタンパク質の摂取量が朝食、昼食、夕食ともにが均等であるグループ、もうひとつは朝食、昼食は少なく、夕食に多い偏ったグループです。双方のグループの3食のタンパク質摂取量の合計は同等になるように設定されています。

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Fig.3:Mamerow MM, 2014より筆者作成

 

 3食の食事を摂取した後、筋タンパク質の合成率を計測してみると、偏った量を摂取したグループに比べて、3食ともに均等な量のタンパク質を摂取したグループでは、より筋タンパク質の合成率が高まったのです。

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Fig.4;Mamerow MM, 2014より筆者作成

 

 24時間で同じ量のタンパク質を摂取しても、偏った摂取パターンよりも、3食ともに均等に摂取するパターンがもっとも筋タンパク質を合成させることが示唆されました。この結果も、3食の食事でしっかりとタンパク質を摂取することによって、たえず血中アミノ酸濃度を高めたことで筋タンパク質の合成が促進されたと推察されています(Mamerow MM, 2014)。

 

 このように筋トレの効果を最大化するタンパク質の摂取パターンが示されていますが、3時間おきにプロテインだけを摂取するのは現実的でなく、実際には食事と食事の間にプロテインを摂取しているケースが多いと思います。また、3食の食事でしっかりタンパク質を摂取するのもなかなか大変です。食事とプロテインを一緒に摂取して、足りないタンパク質を補っているケースも多いでしょう。

 

 では、「食事と一緒にプロテインを摂取する」、「食事と食事の間にプロテインを摂取する」というような食事とプロテインの摂取パターンにおいて、もっとも筋トレの効果を最大化させるのはどちらなのでしょうか?



◆ 食事+プロテインは筋肥大とともに脂肪量を減少させやすい

 

 この問いに答えたのがパデュー大学のHudsonらです。

 

 2018年4月、Hudsonらは、これまでに報告された筋トレ後の食事とプロテインの摂取パターンに関する研究結果をまとめたシステマティックレビューを報告しました。

*システマティックレビューとは、ランダム化比較試験(RCT)のような質の高い研究のデータをもとに、バイアスを限りなく除き、分析を行ったエビデンスレベルの高い報告。

 

 レビューは、食事とプロテインを一緒に摂取するパターンと、食事と食事の間にプロテインを摂取するパターンによる筋肉量、脂肪量への効果について検証された34の報告をもとにして行われました。

  

 その結果、興味深い知見が示されました。

 

 まず筋肉量では、食事とプロテインを一緒に摂取しても、食事と食事の間にプロテインを摂取しても同等の筋肥大の効果が示されました。プロテインは食事と一緒に摂取しても、食事と食事の間に摂取しても筋肥大の効果に差はなかったのです。

 

 しかし、ふたつのパターンにおいて異なっていたのが「脂肪量」です。

 

 脂肪量は、ふたつのパターンともに減少傾向にありましたが、食事とプロテインを一緒に摂取した場合により減少しやすいことが示されました。

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Fig.5:Hudson JL, 2018より筆者作成

 

 Hudsonらは、この理由を「カロリーコントロール」によるものだと言います。

 

 食事とプロテインを一緒に摂取する場合、プロテインのカロリー量を考慮して、食事のカロリー量を減らすことができます。しかし、食事と食事の間にプロテインを摂取した場合では、カロリー量のコントロールが難しくなり、カロリーオーバーになりやすいため、脂肪量の減少効果が少ないのだろうと推察しています。

 

 これらの結果から、食事とプロテインの摂取パターンに関わらず、筋肉量はトレーニングの効果に応答して肥大すること、食事とプロテインを一緒に摂取したほうが脂肪量が減少しやすいことが示唆されているのです(Hudson JL, 2018)。

 

 しかしながら、今回のレビューの対象年齢は10代〜70代と幅広く、摂取されたプロテインの種類もホエイ、カゼイン、ソイとさまざまです。また食事の内容や摂取カロリーも限定されていません。そのため今後はより具体的な条件のもとでレビューが行われるべきであるとHudsonらは述べています。

 

 個人的には、ホエイ+食事の摂取パターンがより効果的であると考えています。食事の前にホエイを摂取すると食欲を抑えられるというメタアナリシスが報告されています(Mollahosseini M, 2017)。そのため、ホエイ+食事の摂取パターンでは、十分なタンパク質を摂取できるとともに、摂取カロリーを抑えることができ、筋肉量の増大と脂肪量の減少につながると推察されます。

ホエイプロテインは食欲を抑える〜最新のエビデンスを知っておこう

 

 今回のシステマティックレビューの結果を参考にすると、トレーニング後の3食の食事にプロテインを合わせて摂取することが、筋肥大の効果を最大化するとともに、脂肪量の減少に寄与する可能性が期待できます。夕方に筋トレをしたら、その日の夕食、翌日の朝食、昼食の3食はプロテインと合わせて摂取してみても良いかもしれませんね。

 

 

www.awin1.com

 

  

◆ 読んでおきたい記事

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シリーズ②:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取量を知っておこう

シリーズ③:筋トレの効果を最大にするタンパク質の摂取タイミングを知っておこう

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シリーズ⑥:筋トレの効果を最大にする就寝前のプロテイン摂取の方法論 

シリーズ⑦:筋トレの効果を最大にする運動強度(負荷)について知っておこう

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◆ 参考論文

Areta JL, et al. Timing and distribution of protein ingestion during prolonged recovery from resistance exercise alters myofibrillar protein synthesis. J Physiol. 2013 May 1;591(9):2319-31.

Mamerow MM, et al. Dietary protein distribution positively influences 24-h muscle protein synthesis in healthy adults. J Nutr. 2014 Jun;144(6):876-80.

Hudson JL, et al. Effects of protein supplements consumed with meals, versus between meals, on resistance training-induced body composition changes in adults: a systematic review. Nutr Rev. 2018 Apr 25.

Mollahosseini M, et al. Effect of whey protein supplementation on long and short term appetite: A meta-analysis of randomized controlled trials. Clin Nutr ESPEN. 2017 Aug;20:34-40.